有料動画サービスとタブレットをセットで売るTudouの新しい試み|山根康宏のワールドモバイルレポート

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スマートフォンやタブレットでも視聴できる動画配信サービスが花盛りだ。YouTubeに代表される動画共有サービスは電車内でのちょっとした空き時間の暇つぶしにも最適だし、今や海外ドラマもネットで見れる時代になっている。

世界各国でで5700万契約以上を誇るアメリカの「Netflix」がいよいよ日本にも上陸するとの発表があるなど、動画配信の世界も国境がなくなりつつある。その一方で、この分野で先行するHuluなども含め映画やドラマ配信を行う各社はサービスを月額制有料としている。ネット上には無料コンテンツがあふれているが、各社は良質あるいは独占コンテンツを提供することで有料会員を着実に伸ばしているのだ。

有料コンテンツは先進国以外では苦戦

だがその一方で、アジアの新興国などでは有料コンテンツサービスの普及はなかなか進んでいない。元々通信費が安くしかも所得も低い国では、たとえ映画が1本100円であっても高額に感じられる。また違法なコピーコンテンツも大量に流されており、コンテンツを有料で買う必要も少ないのが実情だ。それら違法コンテンツは画質が悪いだろうが、無料であればそれで十分と考える消費者も多い。

中国で動画配信サービスを行っている「Youku Tudou(優酷土豆)」もそんな悩みを抱えている1社だ。同社はもともとはYouku(優酷)、Tudou(土豆)と別々の会社で、中国では1位2位の座を争っていた。その両者が合併したことにより今では中国最大の動画配信サービス会社となっている。両者はハリウッド映画やNBAバスケットボールの試合などライセンスコンテンツの有料配信も行っている。しかし中国国内でも現実には大量の違法なコンテンツが氾濫しており、有料配信は苦戦している。

中国動画大手のYoukuとTudou。両者は合併しているがブランドは別で運営を行っている
中国動画大手のYoukuとTudou。両者は合併しているがブランドは別で運営を行っている

また広告収入のために配信動画には最初に広告を流しているが、有料会員になればそれをスキップすることもできる。だがそれとて1分弱我慢すればいいだけのことであり、お金を払ってまで広告なしを選ぶ消費者も少ない。ましてやTVと同じと考えれば、広告が入ることは当たり前のものでもあるだろう。

タブレットを買うと有料会員になれる

そこでTudouが考えたのがタブレットを割引販売し、その代り同社の月額有料会員に加入させるという、まるで携帯電話の契約のような試みだ。しかもタブレットのサイズは約15インチ。TV代わりに使える大きさでもあり、普段自宅でTVを見ている時間までもをTudouへ取り込もうとしている。

Tudouが発売する『Tudou Pad(土豆派)』は15.6インチという、タブレットとしてもかなり大型のディスプレイを搭載。解像度は1366×768ピクセル。本体サイズは375x237x16ミリ、1,48kgで、同じクラスのノートPCの画面部分だけのサイズとほぼ同等だ。大きいものの、カバンに入れれば持ち運びもできるだろう。

Tudouが発売するタブレットはTVユーザーも取り込む
Tudouが発売するタブレットはTVユーザーも取り込む

OSはもちろんAndroidで、Androidアプリも自由に利用できる。電源を入れればすぐにTudouの動画ポータルにつながるなど独自ユーザーインターフェースも搭載している。また他のAndroidスマートフォンやiPhoneの画面を投影できる、ワイヤレスディスプレイにも対応している。つまりTudou Padを外付けモニタとして使うこともできるわけだ。

そして特筆すべきはその販売方法である。Tudou Padの定価は999元(約1万9000円)。だがこれを799元(約1万5000円)に割り引くと同時に、1年間のTudouの有料会員に加入が必須となる。有料会員料金は480元(約9000円)で、これは40元/月(約750円)の12か月分相当で先払いとなる。つまりTudouのタブレットを買うには月750円の基本料金12ヶ月分を先払いする必要があるものの、タブレットの代金は4000円が割引されるのである。

タブレットと有料会員料金をセットで販売
タブレットと有料会員料金をセットで販売

この販売方法ならば、有料会員への加入をためらっていた消費者でも「1年だけでも使ってみよう」と思うことだろう。何よりも15インチクラスのタブレットはまだほとんど存在せず、このタブレットだけでも買いたいと思う消費者は多いのではないだろうか。また1年間、広告なしや有料映画の半額サービスなどを使い続ければ「翌年も更新しようか」と思うに違いない。

生活の中心端末のポジション取りへつながる

この販売方法が成功すれば、今後Tudouは様々なサイズのタブレットの販売も行うだろう。価格の安い7インチクラスの製品であれば「有料会員1年でタブレット無料」といった大胆な割引販売も可能だろう。まさしく携帯電話やスマートフォンと同じ販売方法だ。そして魅力的な有料コンテンツに利用者たちが魅力を感じていけば、いずれはTVの地上波を観ずにTudouばかりを見るようになっていくだろう。しかもお金を払ってでもTudouを見る、という数が増えていくかもしれない。

さらには自社のタブレットが普及していけば、将来は家電との連携を行うスマートホームの中核端末としても活用できるだろう。つまり動画配信サービスだけではなく、ヘルスケアなども含めた生活の中心に位置する「総合ライフサービス企業」ともいえる新たなビジネス展開も期待できるわけだ。

モノとモノがワイヤレスで次々につながる中で、それをひとまとめにコントロールできるタブレットやスマートフォンの座を奪おうと各端末メーカーが動いている。だが意外な伏兵とも言うべき、このTudouのようなコンテンツ企業がいずれはハードウェアもソフトウェアも中心の座を奪っていくかもしれない。

そのような将来の動きを含め、どれだけの中国の消費者がこのTudouタブレットに興味を示すのか。中国国内ではライバルの動画配信サービス会社だけではなく、タブレットメーカーも注目をしているのである。

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