セルフィーの普及がスマホの前後カメラの区別をなくす|山根康宏のワールドモバイルレポート

ASUSは2015年6月1日にフロントカメラを強化したスマートフォン『ZenFone Selfie』を発表した。フロントカメラの画質はなんと1300万画素で、もはやメインカメラとの画質差は無くなっている。自分の写真を撮ってソーシャルサービスにアップすることは今や誰もがやっていることであり、その流行はついにスマートフォンのカメラ性能も大きく変えるものになった。

前後1300万画素カメラのZenFone Selfie

ZenFone Selfyの商品名は、その名の通りセルフィー=自分撮りを大きく意識したものである。ZenFone Selfieの本体サイズは156.5×77.2×10.8mmで、ベースとなるモデルの『ZenFone 2』の152.5×77.2×10.9mmと横幅厚みはほぼ同等、一方高さが増している。これはフロント側のディスプレイ上部中央に1300万画素カメラを配置した結果だ。

フロント上部中央のカメラ。1300万画素のためサイズが大きい
フロント上部中央のカメラ。1300万画素のためサイズが大きい

そのカメラの起動は簡単だ。画面上にアルファベットのイニシャルを指先で書くことでアプリを起動できる「ZenMotion」に対応しており、指先でSelfyの頭文字である「S」の字を書くとフロントカメラが起動して自撮りができる。カメラアプリを起動しなくとも即座にセルフィーを楽しめるわけだ。

また男性には不要だろうが女性には必須ともいえるリアルタイムの美顔効果もフロントカメラを使って利用できる。肌の色や顔の細さ、目の大きさなどを0から10の段階で調整できるのだ。さらにはフロントカメラを使ってもHDR撮影ができるため、逆光でも綺麗な写真を撮ることができる。

電池カバー周辺部分がスタンドになるZenFone Selfie Swing
電池カバー周辺部分がスタンドになるZenFone Selfie Swing

そして面白いアクセサリーも提供される。背面の交換用電池カバーにスタンドが内蔵された「ZenFone Selfie Swing」だ。普段はスタンドを収納して置き、必要時にはカバーの周りのフレーム部分を引き出してスタンドとして利用できる。実はZenFone Selfieの各機能はこれまで他社のスマートフォンに実装されたものも多い。だがこのスタンドはASUSならではのオリジナルだ。普段机の上にスマートフォンを置いておく時にも便利であり、今後他社から類似の製品が出てくるかもしれない。

アジアではフロントカメラ強化スマホが続々

1300万画素デュアルカメラを搭載したスマートフォンはZenFone Selfieが初めてではない。中国の新興メーカーのMeituが2014年にリリースした『M2』が先駆けであり、ピンクなど女性を意識したボディーカラーで一躍話題となった。また他社からも同様にフロント1300万画素カメラを搭載したスマートフォンが何機種か登場しているし、Xiaolajiaoの『LA-7』はなんと前後2000万画素カメラを搭載している。

中国新興メーカーからは前後2000万画素スマホも登場
中国新興メーカーからは前後2000万画素スマホも登場

普段のスマートフォンの使い方を考えてみても、背面のメインカメラを使うのは食事風景や友人たちとの記念写真、あるいはメモといった用途が大半ではないだろうか。一方アジアでは女性たちが近況をソーシャルサービスで伝え合うためにフロントカメラを使ってセルフィーすることが流行っている。

スマートフォンのカメラは、デジタルカメラ同様に美しい風景を撮ることを目的とした高画質化が進んでいった。だがソーシャルサービスの普及はスマートフォンのカメラの使い方を変え、利用頻度の大半がフロントカメラ、という女性も少なくない。

いずれは男性にもセルフィーが普及する?
いずれは男性にもセルフィーが普及する?

セルフィーは若い女性に人気だが、いずれは男性にも普及が進むかもしれない。例えばアジアの学生たちは、自分のお気に入りの表情だけではなく、ふざけ合った面白い表情の顔写真を送りあって楽しんでいるケースも多い。ソーシャルサービスが日常生活に入り込んだ結果、セルフィーの送り合いはお互いが顔を合わせる「疑似・リアルなコミュニケーション」になっているのだろう。

カメラ回転式のOPPOのスマホ
カメラ回転式のOPPOのスマホ

一部のメーカーは回転式のカメラを搭載し、前後区別なく高画質な写真を撮影できる製品を投入している。だがいずれは背面のメインカメラよりもフロントカメラの画質が高く、メインユースはフロント側になる、といったスマートフォンも登場することだろう。コミュニケーション手段が変わればスマートフォンの機能も大きく変化していくのである。

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