今度は台湾で行列マーケティングを行うXiaomi|山根康宏のワールドモバイルレポート

今度は台湾で行列マーケティングを行うXiaomi|山根康宏のワールドモバイルレポート

AppleのiPhoneやSamsungのGalaxy Sとほぼ同等の性能で価格は半額以下、という触れ込みで販売シェアを急増させていった中国の新興メーカー、Xiaomi(シャオミ、小米科技)。だが同社の勢いが急激に鈍化している。頼りの中国市場の成長ペースが止まったからだ。そのため同社は海外市場への展開にも力を入れている。その一つ、台湾での同社の最新の販売戦略を視察してきた。

年間1億到達は不可、海外に活路を求める

Xiaomiの2014年のスマートフォン販売総数は、同社によると9100万台だった。これはSamsung、Appleに次ぐ世界3位の数値だという。2011年に1モデルで端末事業に参入した同社はわずか5年で大手メーカーの仲間入りを果たしたのだ。ところが2015年に入ってから同社の販売台数に陰りが見え始めた。2015年3月に行われた同年第1四半期の決算発表会では、同社の共同創始者兼CEOの雷軍(レイ・ジュン)氏が年間の販売目標台数を前に掲げた1億台から「1億から800万」台と下方修正。2015年夏にはそれも達成が難しい見通しとなっている。

この販売数の伸び悩みは主力戦場の中国市場が飽和に向かっていることが最大の原因だ。今回は中国市場については触れないが、他の中国メーカーも国内消費の不振の影響を大きく受けている。中国市場のみに頼った販売戦略では将来の成長が望めないことは各社共通の認識であり、東南アジアやなど国外市場へ活路を求めるメーカーが相次いでいる。Xiaomiも2014年にはインドなどへ進出を開始した。

Samsung、Appleの次にまで上り詰めたXiaomi(小米)
Samsung、Appleの次にまで上り詰めたXiaomi(小米)

インドでは中国市場同様にオンラインでの販売に特化。最初に用意したモデル『Redmi 1S』(Hong Mi 1S、紅米1S)は4万台が4.2秒で完売するほどの人気だった。その後もオンライン限定販売で飢餓感を煽る、いわゆる「飢餓マーケティング」で販売数を伸ばしていった。しかしインドにはMicromaxなど強力な地場メーカーが数社存在する上に、Samsungがトップの座に君臨。同マーケティングだけでこれら上位メーカーを抜くことはできず、シェア5位以上に上がることはなかった。結局2015年には実店舗販売も開始している。

発表したばかりの新モデルをオンラインで先行販売する中国国内での販売方法も陰りが見られる。2015年8月にXiaomiは新型の低価格大画面モデル『Hong Mi Note2』(紅米Note2)を発表。Samsungが大画面スマートフォン2モデルを8月13日にニューヨークで発表すると決定してから、急遽同じ日に北京で発表会を開催した。しかし「XiaomiとSamsungの戦い」と報じるメディアはほぼ皆無だったのである。このHong Mi Note2の販売台数は1日で80万台、だがXiaomiのWEBページでその数字が高々と表示されていたのは数日程度だった。もはや中国国内ではXiaomiのこの販売手法は飽きられているのである。

Samsungの「ノート」と同日発表したHong Mi Note2
Samsungの「ノート」と同日発表したHong Mi Note2。だが国内市場での反応は以前ほど熱狂的ではなかった

Samsungの「ノート」と同日発表したHong Mi Note2。だが国内市場での反応は以前ほど熱狂的ではなかった

あえて行列させる台北小米之家

Xiaomiはインド以外にも東南アジアや中国語圏である香港、台湾、シンガポールなどにも進出をしている。このうち香港と台湾には「小米之家」と呼ぶショールーム兼販売店を1店舗ずつ展開している。すでに中国国内では主要都市に全国展開しており、端末やアクセサリの販売、そして1時間修理サービスも行っている。では海外店舗となる香港と台湾ではどのような販売形態がとられているのだろうか?2015年8月に台湾の「台北小米之家」を訪問してみた。

場所は地下鉄の駅を出てすぐ横と言う絶妙なロケーション。すぐに目につくのは店外に貼られている行列整理のロープだ。実は台北小米之家では端末やアクセサリを販売しているものの、購入するためには1日3回配布される端末購入整理券を受け取らなくてはならないのである。筆者は15:30の回を狙い15時すぎに店舗に訪れたが、すでに20名程度が列に並んでおり、15:30には50名以上が列をなしていた。

台北のXiaomiの販売店「台北小米之家」
台北のXiaomiの販売店「台北小米之家」。店舗の横で一日三回、行列させる

行列を待っている間、道を行く人々や駅の出口から出てきた人々が「あの行列は何?」「あれはシャオミ?」のように話しながら通り過ぎていく。中には何かわからず「これ、何の行列?」と聞いてくる人も。なるほどこうして毎日3回並ばせることにより、Xiaomiとは並ぶほど人気のあるメーカーなのだと口コミで広がっていくわけだ。また並んでいる人の中にも「バッテリーを5個頼まれた」「自分は端末」のように友人や業者に頼まれた人もいる。なおXiaomiはオンライン販売も行っておりネットで全商品を買うことができるのだが、現物を見てから買いたい人や急ぐ場合はここに並んだほうが速いのである。

さて時間になると15名ずつが店内に案内された。店の入り口では今度は買いたいものを聞かれ、それをメモされる。店内を自由に回って好きなものを買えるのではなく、あらかじめ何を買うかを決めておく必要があるわけだ。なお「ちょっと店内を見たい」といえば先に見ることも可能だが、そうすると今度は受け取りの時間が後に回されてしまうこともある。

端末やウェアラブル製品はテーブルに実機が置かれ自由に操作できる。アクセサリ類は壁面にずらりと展示。
端末やウェアラブル製品はテーブルに実機が置かれ自由に操作できる。アクセサリ類は壁面にずらりと展示。だがその場ですぐに購入できない

また店内に陳列されている商品の数は豊富で、バッテリーやUSBケーブルのみならず、同社のマスコット人形のストラップやぬいぐるみも販売されている。しかしこれらはその場では買えず、行列して整理券をもらわなくてはならないのだ。中にはちゃっかりと整理券をもらって店の入り口に並んでいる人に「バッテリーをお願いできない?」と頼んでいる人もいたが、どうやら店で販売している商品の中でもモバイルバッテリーがダントツな人気だ。

レジ前に行列
レジ前に行列が出来ているものの、これは整理券をもらった客のみ。売れ行きは好調だ

駅の出口の横という最高のロケーションに店を構えていれば、ふらっと店に立ち寄った客が何かを購入していくかもしれない。その一方で店に来るだけで何も買わない客も多いことだろう。一方、行列を行わせることで興味の無い客をも引き込むことが可能だろうし、「せっかく並んだのだから、あれも買っておこう」というついで買いを期待することもできる。シャオミのこの行列マーケティングは、まだブランド力がおぼつかない台湾では一定の効果を生み出しているようだ。

とはいえXiaomiは台湾で今、強敵の前に戦々恐々の状態である。ASUSのZenFoneシリーズは地元台湾でも猛攻をかけており、低価格スマートフォンのみならずモバイルバッテリーやカバーなどアクセサリ類も充実させている。もはや低価格だけでは武器にならず、カラフルなモバイルバッテリーカバーもASUSが類似した製品を出すなど特色も出しにくくなっている。行列マーケティングはXiaomiが台湾で生き残るために唯一残された道なのかもしれない。

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