2016年春の新製品も各社から一通り登場し、早くも秋冬モデルの噂話も聞こえはじめている。例年なら春にはスマートフォン新製品を発表しなかったAppleが、2016年は小型モデルを投入し今年の様相は去年までと大きく変わった。一方Samsungは春から発売を始めた新製品が好調な滑り出しだという。ではこの2社の今年の動向はどのようなものになるのだろうか?
Appleは我慢の1年、iPhone SEの買い替えはスムースか
先進国でのスマートフォン需要が一段落したことなどから2015年の世界のスマートフォン販売台数の伸びは前年よりも落ち込んだ。Gartnerの調査によると、2015年の全世界のスマートフォン販売台数は14億23900万台で、前年の12億4474万台から約14%の伸びに留まった。ちなみに1昨年前は前年比28%だったので、成長率としては半分に落ち込んでいる。
シェア1位のSamsungは台数を伸ばしているものの2位Appleには純増数で負けており、シェアも22.5%と前年の24.7%から下げている。一方Appleはシェア15.9%で、前年の15.4%より微増だった。Samsungは苦戦、Appleはひとまず安泰と見ることができるかもしれないが、年間で最も販売台数が伸びるクリスマス、ホリデーシーズンである10-12月、第4四半期の結果を見ると両者の動きは逆に見える。

2015年第4四半期のSamsungの販売台数は8344万台、Appleは7153万台だった。ここで1年前の2014年第4四半期を見ると、Appleは7483万台でトップとなりSamsungは7303万台と2位に転落していたのだ。しかしSamsungは1年間で事業を立て直し前年比で14%の伸び、一方Appleは逆に昨年から4%のマイナスとなった。毎年秋に新型iPhoneを発表し、クリスマスシーズンはどこの国でも販売数を増やすAppleが、2015年の同時期には逆に数を減らしてしまったのだ。
Samsungは製品ラインナップを大幅に統合すると共に、大画面スマートフォンの新製品を秋に2機種投入しそのどちらもが人気となった。これに対しAppleは1年前のiPhone 6と6 Plusが大幅なアップデート製品だったこともあり、マイナーチェンジとも言えるiPhone 6s、6s Plusが思ったほどの販売量には達しなかったようだ。6sと6s Plusの魅力も十分アピールしきれておらず、鳴り物入りで追加した3Dタッチ機能もそれを活かしたアプリやサービスがまだ少ない。
しかし2016年3月末に発売になったiPhone SEはAppleの今年の年間販売台数引き上げに大きく寄与するだろう。iPhone SEのターゲット層はiPhone 5sや4sを使い続けているユーザーであり、小型のiPhoneを求めているそれらのユーザーがこぞって買い替えに動くと考えられるからだ。今でもiPhone 5sの新品や中古のiPhone 4sは売れている。しかしiPhone 4/5系のユーザーは、今では動作速度の遅くなったそれらの製品をだましだまし使っているのが実情だろう。

すでにiPhone 4/5系の利用者は端末の分割払いも終わっており、今は基本料金だけを払い続けているケースがほとんどだ。iPhone SEは価格も下がっているため、通信事業者も低価格でのオファーを提供しやすい。この秋のiPhone 7/7 Plusの動向がどうなるかはわからないが、既存のiPhone 4/5系のユーザーがiPhone SEへの買い替えを徐々に行ってくれれば、Appleの年間販売台数が昨年を下回るようなことにはならないと予想される。
秋の新作がポイントとなるSamsung
9月に発表されるであろうiPhone 7は、その全容がまだ見えてこない。iPhone 6 / 6 Plusから2年後のフルモデルチェンジとなるが、今のiPhone 6s / 6s Plusがすでに完成された製品ともいえるだけに、どの部分を機能アップするのか気になるところだ。カメラ画質や画面解像度の点でiPhoneはAndroidの後塵を拝しているだけにそれらの機能を高めることは容易に予想が付く。だがSNSの普及やクラウドの利用が一般的になった今、消費者がスマートフォンに求めるものはハードウェアそのものでは無くなっている。美しい写真を撮るのはそれを画面で見るためではなく、SNSでシェアすることが目的なのだ。
「Apple関係者は世界景気の停滞などからiPhone 7について当初の出荷量を抑える」などといった報道がすでにみられている。次のiPhoneは買い替えや新規客を惹きつけるだけの魅力を搭載するのはあまり期待できないのかもしれない。そうであればマイナーチェンジでとどめ、2018年のiPhone 8でフルモデルチェンジする方がAppleとしても得策かもしれない。

Appleに対し復調傾向がみられるSamsungも、秋の新製品が大きな鍵を握っている。2016年2月に発表した新モデルは5.15インチと5.5インチの2サイズとなり、発売直後から各国で人気となっているという。しかし2015年までのSamsungは「春に5インチ、秋に大画面」という2つのフラッグシップモデル戦略を取ってきた。3月発売の2モデルのうち、5.5インチのGalaxy S7 edgeは、8月に発表予定のGalaxy Note 6のユーザーを先行して奪ってしまっている可能性もある。
ハードウェアの伸びしろがまだあるAppleに対し、Galaxy Noteはほぼ全てのことをやりつくした感がある。ペンもすでに搭載済みで、高解像度ディスプレイも採用済みだ。たとえばiPhone 7がApple pencilに対応したら大きな魅力であるし、新しいアプリも多数生まれるだろう。だが2017年に登場するだろうGalaxy S8にGalaxy Noteのペンが使えるようになったとしても、そのGalaxy S8の売れ行きが上がるとは思えない。

2015年の冬から2016年の春先を見ると、Samsungが復調しAppleはやや停滞気味で守りに入ったという印象を受ける。だがSamsungの真価が問われるのは今年秋発売のGalaxy Note 6の販売動向だ。iPhone 7にも負けぬ話題を取り、さらに売れ行きを伸ばせるようでなくては、今年のクリスマスシーズンはまた両者の力関係は逆転するかもしれない。