スマホの電池切れの心配が無くなる、ディスプレイで充電できるWysips Crystalに期待|山根康宏のワールドモバイルレポート

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スマートフォンやスマートウォッチの電池切れは頭の痛い問題だ。スマートフォンの電池を長持ちさせるためのハウツーはネットで探せば多数見つかる。しかし本来便利に使うはずのスマートフォンに様々な制約を課してまで電池の利用時間を延ばすというのは本末転倒なこと。モバイルバッテリーを一緒に持ち歩くのが最も現実的な解決策となるが、充電忘れや持ち忘れしてしまうことも多い。

そこで注目されるのがディスプレイに太陽電池を組み込んだSunpartner社の「Wysips Crystal」だ。Wysips Crystalは一見するとただのガラスパネルだが、タッチパネルの下に組み込まれたコンポーネントが太陽光を受けて発電する。つまりスマートフォンの画面を太陽に向けるだけで充電できるのである。充電能力が向上すればいずれは電灯の下に置くだけでも充電できるようになるだろう。

スマートフォンのディスプレイに太陽電池を組み込んだSunpartnerのWysips Crystal
スマートフォンのディスプレイに太陽電池を組み込んだSunpartnerのWysips Crystal

一般的な太陽電池は家庭の屋根に取り付けられたパネルを見ればわかるように、表面はガラスだが不透明だ。これを小型化したとしても、スマートフォンのディスプレイ内に取り付けた場合、画面表示を見ることはできない。だがWysips Crystalは透明度90%という光の透過度を持っているため、タッチパネルの下に配置してもそのまま画面を表示することができるのだ。

Wysips Crystalを採用する製品としては京セラがスマートフォンを販売予定で、2016年2月に開催されたMWC2016でも試作モデルが展示された。またより小型のスマートウォッチへの展開も年内員予定されている。スマートウォッチは本体が小さいため内蔵電池の容量も少なく、ほぼ毎日の充電が必要だ。だが腕にはめて太陽に当てるだけで充電できるようになれば、ほぼ充電フリーで使い続けることができるようになるだろう。

Wysips Crystal採用の京セラのスマートフォン試作機。ディスプレイは5インチ
Wysips Crystal採用の京セラのスマートフォン試作機。ディスプレイは5インチ

但し太陽光発電はパネルの面積と出力が比例する。スマートウォッチへのWysips Crystalの搭載は、Apple Watchのような高性能な製品では発電能力が足りず、まずはアクティビティートラッカーなど簡易機能を持った製品に絞られるかもしれない。現状で1週間程度電池がもつアクティビティートラッカーなら、Wysips Crystalの採用で100%太陽発電に頼ることも夢ではないかもしれない。

現状のWysips Crystalの発電能力は「直射日光下で2時間の充電で5分間通話が可能」というレベル。これをまずは「3分の充電で1分の通話」まで引き上げることを同社は目標としている。つまり2時間充電なら40分の通話が可能となる。またより大型なディスプレイを使えば発電量はさらに高まる。7インチや10インチのタブレットにWysips Crystalを組み込めば、「1時間の充電でタブレットのブラウザを数分利用可能」というレベルの製品の実用化も夢ではないだろう。

「Wysips Crystalを搭載したスマートフォンを太陽光発電だけで使い続ける」というのはさすがにまだすぐには無理なようだ。しかしWysips Crystalはスマートフォンやタブレット、ウェアラブルデバイスだけに向いた製品では無い。屋外に設置されるデジタル広告などのサイネージ(広告板)への展開や、飛行機や車の窓ガラスへの応用も期待できる。たとえばバスの側面の窓にWysips Crystalを埋め込めば、車内の椅子それぞれにUSBの充電端子を設置できるようになるだろう。

スマートウォッチへの組み込み例。今後はタブレットやデジタルサイネージへの展開も期待される
スマートウォッチへの組み込み例。今後はタブレットやデジタルサイネージへの展開も期待される

Wysips Crystalを組み込んだ製品は自己発電が可能になるため、新たな製品のアイディア実現も可能になる。例えばスマートフォンと連携できる、家のドア横に取り付ける「デジタル表札」なんて製品を考えてみよう。住人が家を出るときはデジタル表札がそれを感知し、表札を赤く点灯させ宅配便の配達員に不在を通知したり、あるいは不審者が近づいてきたときは名前を消す、なんてことのできる表札だ。このような製品を実用化しようとしても、取り付ける際には電源の配線を行う必要があるし、乾電池駆動とすると本体サイズが大きくなるうえに電池切れや湿気による液漏れなども心配になる。だがWysips Crystalを内蔵した自己発電型デバイスなら、電源や電池を用意する必要は一切無くなるのだ。

今後あらゆるものがインターネットに接続される時代を迎えようとしているが、機器の数だけ電源も必要となる。天気や気温のセンサーのような製品ならば一般的な太陽電池を使えばよいが、デジタルサイネージなど画面表示を行う機器はスペースの関係もあり難しい。ディスプレイそのもので充電・給電が出来れば省スペース化も図ることができる。

透明度を下げれば発電効率は上がる。用途によっては低透過率のパネルでも十分だろう
透明度を下げれば発電効率は上がる。用途によっては低透過率のパネルでも十分だろう

さらにWysips Crystalは可視光線を使ったデータ転送技術の「Li-Fi」にも対応している。Sunpartnerには日本のドコモベンチャーズが出資したり、スマートフォンメーカーでは京セラだけではなくAlcatelとの共同事業を行うなど、IT関連企業が大きな関心を寄せている。数年すれば「スマートフォンの充電のために、ちょっと外に出て日光に当たってくる」なんて時代がくるかもしれない。まずは京セラから発売予定のスマートフォンの登場を楽しみにしたい。

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