世界のスマートフォン市場の話題を独り占めした時期もあった中国の新興メーカーXiaomi(シャオミ)。
最近では新製品が出るたびにニュースが流れるものの、以前のように景気のいい販売数の話は全く聞かれなくなった。今やXiaomiと同じ「高機能・低価格」なスマートフォンは他のメーカーからも多数の製品が登場しているうえに、SamsungやSony、LGなどのハイエンドモデルはXiaomiよりも高性能・高品質なモデルになっている。
Xiaomiの製品を積極的に選ぶ必要は、もはや無くなってしまったのだ。
しかし中国のニュースサイトを見てみると、なぜかXiaomiの新製品ニュースが毎週のように報道されている。スマートフォンは年に数機種しか発売していないXiaomiだが、実は周辺機器やアクセサリを毎月のようにリリースしているのである。
しかもそれらの製品は消費者が思わず欲しくなるようなものが多い。
Xiaomiは今でも自社のオンラインストアでの売り上げの比重が高く、消費者を常に呼び込む必要がある。そのためか、時代のトレンドに乗った話題性のあるアクセサリを次々と送り出しているのだ。

Xiaomiの販売するアクセサリ類は、当初は自社キャラクターの「米兎」のぬいぐるみやら、スマートフォン用のスタンドやケーブルなど、どちらかと言えば「スマートフォンを買ったついでに、一緒に買おう」と思えるようなものばかりだった。
その後は高品質なモバイルバッテリーを発売しヒット商品となる。中国では質の粗悪なモバイルバッテリーが多く、安心して購入できる商品は数えるほどしか無かったのだ。Xiaomiはスマートフォンでの知名度を生かしただけではなく、アルミボディーでスタイリッシュなデザイン、そして高容量低価格な製品を次から次へと販売し、モバイルバッテリーのトップブランドとなった。
その後はHuaweiなど中国メーカーだけではなく、ASUSなどもXiaomiのバッテリーと類似した製品を出すほどになっている。
中国でも今や誰もが使っているモバイルバッテリーも、Xiaomiの製品が出てきたからこそ安心して購入する消費者が増えたと言っても過言では無いかもしれない。モバイルバッテリーにシリコン製の着せ替えカバーを提供したのもXiaomiが最初だ。極限まで価格を引き下げたモバイルバッテリーの1台当たりの利益は微々たるものだろうが、これにカバーを別売すれば利益を高めることができる。
Xiaomiのこのアイディアはなかなか優れたものだ。

Xiaomiのアクセサリはスマートフォンと連携できる体重計や色を変更できるLEDライトなど、IoT製品とも呼べるものが徐々に増えていった。
その極めつけが2014年12月に発表した「Mi Air Purifier」。Xiaomi製の空気清浄機である。
そのデザインが日本メーカーの製品にそっくりということで問題にもなったが、この空気清浄機の販売をきっかけにXiaomiはスマートホーム&IoT製品の開発・販売にも注力するようになる。関連会社への出資や買収も積極的に行っており、例えばアクションカメラの「GoPro」より格安で購入できる「Yi Action Camera」はXiaoyi Technology(小蟻)の開発した製品だ。
2015年7月には浄水器を発表。空気清浄機と同様、フィルターが詰まればスマートフォンに通知される。どちらの製品も本体が安いだけではなく、カートリッジも低価格だ。プリンターメーカーが高価格なインクカートリッジで利益を出していると批判を受けることがあるが、清浄機製品もカートリッジは高い。Xiaomiは大気汚染や水質汚染問題が社会問題となっている中国で、消費者に安心かつリーズナブルな製品を送り出しているわけだ。


そして2016年4月にはついにIH炊飯器を発売した。
開発には日本人が関わっており、バーコードを読み取り米に応じた最適な炊飯ができる。中国人が日本に大量にやってきては日本の炊飯器を買って帰ることへの対抗でもあり、中国国産で日本より優れたものを、という意気込みで作られた製品である。
これらの空気清浄機、浄水器、炊飯器は、中国の消費者が今何を求めているのか、それをそのまま製品にしたものとも言える。
つまりXiaomiのスマートフォン以外の製品を見れば、中国の消費者のトレンドがそのままモノとして見えてくるのである。
2015年秋に発表した小型の自律式電動車「Ninebot mini」も、中国ではヒット商品となっている。
中国ではちょっと前からノーブランドの電動式小型一輪車などがブームだが、品質が悪く歩行中に本体が分解して乗っていた人が大けがをしたり、バッテリーが急に切れて使いものにならなくなってしまう製品が多かった。Ninebot miniはわずか1999元(約3万1000円)ながらも品質は高く、最大22Kmの走行が可能だ。
実はこれもXiaomiが買収したNinebot社の製品。
この手の製品は「セグウェイ」が有名だが、そのNinebotはセグウェイを買収しており、つまりXiaomiは世界の大手の自律式電動車メーカーを傘下に収めているのである。セグウェイはまだまだ警察の警備や空港内の職員の移動、観光地での利用など用途は限られているが、中国では一般消費者が類似の製品を使う姿が目立っている。
もしかすると今後は電動スクーターや電気自動車をXiaomiが手掛ける可能性もありうるだろう。


これらの華やかな製品だけではなく、Xiaomiは他にも有用なデバイスを販売している。
たとえば2016年4月に発表した子供向けのスマートウォッチはGSMの通信機能を内蔵し、通話ができる。親のスマートフォンにアプリを入れておけば、子供の居場所がすぐにわかるだけではなく、相互に緊急通話も可能だ。このスマートウォッチにはXiaomiがMVNOで提供している自社のSIMが入っており、安価な通話料金で利用できる。XiaomiがMVNOに参入した当初は自社のスマートフォンとSIMのセット販売目的とみられた。だが通信機能を内蔵したIoTデバイスを開発すれば、それにSIMを内蔵させ自社のエコシステム内で販売することも可能なのである。
MVNOの参入はIoT時代を見越していたものでもあったのだろう。

Xiaomiのこれらの周辺機器やアクセサリは、海外でも販売されているものが多い。Ninebot miniはヨーロッパでの引き合いも多いとのことだ。Xiaomiが次々に送り出すこれらの製品を見ていれば、IoT機器のトレンドをそのまま追いかけることができるかもしれない。
スマートフォンで市場を賑わすことの無くなったXiaomiだが、それ以外の製品ではむしろこれから注目すべきメーカーになるだろう。