ここ数年、急激に注目を浴びている小型の無人飛行機「ドローン」。実際は小型サイズのヘリコプターとでも呼べる形状をしており、スマートフォンを使ってコントロールすることもできる。無人でどこでも飛べる事や、スマートフォンとの間でデータの送受信が可能なことから、単なるラジコンのヘリコプターとは異なり、監視用途や配達用途など、業務向けの使い方の模索も始まっている。
最近では一般消費者向けの小型のドローンも増えており、カメラを内蔵して空撮を楽しむことができる製品も増えている。とはいえ、まだまだドローンを買って休日に楽しむ、というケースはごく限られた層だけだろう。ドローンの価格もまだ高めで、安いものでも5万円前後。スマートフォンの周辺機器として買うにはちょっと手が届きにくい。
ところがクラウドファウンディングサービスのKickstarterに登場した「AriSelfie」が、ドローンユーザーを一気に広げてくれるかもしれない。このAirSelfie、なんとスマートフォンのケースにドローンが内蔵されているのだ。AirSelifeはその名の通りセルフィー、つまり自撮りをするためのドローンだ。カメラを内蔵しており、AirSelfieを飛ばして自分一人や仲間たちとの写真を撮影できる。もちろんスマートフォンのアプリで撮影画面のプレビューができるので、最適な瞬間の1枚を撮影できる。

AirSelifeはまたiPhoneだけではなく、ファーウェイのライカカメラ内蔵スマートフォン「P9」、サムスンの「Galaxy S7 edge」、グーグルの「Google Pixel」などにも対応する。この手の製品はiPhoneのみに対応するものも多い中で、Androidのハイエンド端末にも対応し、ユーザー層を増やそうと考えている。
手の平に乗る超小型ドローンはすでにいくつもの製品が出ているが、意外と面倒なのが持ち運びだ。専用ケースに収納して、それをカバンの中にしまってしまえば、いざ使おうという時にわざわざ取り出すのも面倒なものである。一方AirSelfieはケースの厚みがスマートフォンの倍以上と大きくなるものの、スマートフォンを取り出せばいつでもドローンを引き出して使うことができる。仲間内で集まって集合写真を取りたい時など、その瞬間を逃すことも無いだろう。

AirSelfieのように、スマートフォンのケースに機器を収納するというアイディアは、もしかするとこれから登場するであろう、新しいIoT製品にも有用かもしれない。たとえば一時期大きな話題になった眼鏡型のウェアラブル機器「グーグルグラス」は、眼鏡をかけない人にとっては使いにくものだった。しかし、もしも使わない時にスマートフォンのケースに収納できるような形状であったならば、使いたい時だけさっと取り出して使える便利なアイウェアとしての評価も高まったかもしれない。
身体に取り付けるウェアラブルデバイスは、腕時計の代替となるスマートウォッチの普及が意外と進んでいない。腕時計はそもそも時間を見る道具であり、また自己をアピールするファッションアイテムでもある。1時間に何度も腕時計を見たり、その腕時計をなんどもタッチして操作する、という用途には本来は向いていないのかもしれない。

しかし腕時計以外のウェアラブルデバイスで、常に身体に取り付けておくことができそうなものはあまり多くない。今後センサーを内蔵した衣類も増えてくるだろう。また耳に装着するヘッドフォン型のデバイスで音声コントロールに対応した製品もいろいろと出てきそうだ。
だがもしかすると、「使いたい時だけスマートフォンから取り外して使う」なんて機器の方が、案外使いやすいかもしれない。音楽をワイヤレスで聞くBluetoothヘッドセットも、専用ケースに入れて収納するよりも、いっそのことスマートフォンのケースに装着できる製品として販売したほうが売れるかもしれない。
モトローラが2016年秋に発売した『Moto Z」は、本体の背面にカメラやプロジェクターのモジュールを装着できる、合体式のスマートフォンだ。それぞれのモジュールは単体では利用できないが、このモジュールとしてAirSelfieのような「ドローンモジュール」や「Bluetoothヘッドセット収納モジュール」なんてものが出てきたら便利だろう。かもしれない。モトローラももしかすると、次の合体式モジュールは、取り外しても単体で利用できるものを考えているかもしれない。

スマートフォンを中心に、スマートフォンと接続できるウェアラブルデバイスやIoT機器はこれからいろいろなものが出てくるだろう。だが使ってもらうための1つのアイディアとして「スマートフォン用のケースに収納できるようにする」という考えは悪くないのかもしれない。AirSelfieが市場に出てきてからの、利用者の反応が大いに気になるところだ。