中国の新興スマートフォンメーカーとして世界中の話題をさらった時期もあったシャオミ(Xiaomi、小米科技)。2017年4月19日に最新モデルを発表したものの、地元の中国を始めグローバルでの反応はそれほど大きいものでは無かった。シャオミのスマートフォンはハイスペックで低価格を売りにしているものの、もはやスペックや価格だけでは消費者は興味を示さなくなっている。
シャオミのスマートフォンも一時はグローバルで3位、中国では1位にまで上り詰めたこともあった。しかし今では販売数は伸び悩んでおり、スマートフォン以外の製品を急激に増やしている。中でもスマートフォンと連携できるIoT製品は、シャオミがまるでスマート家電メーカーであるかのごとく、その種類は多岐にわたっている。
中でもスマート炊飯器はシャオミらしい製品かもしれない。最近は一時期ほどのブームではなくなったが、中国人が日本に来て大量の家電製品を「爆買い」していたころ、人気の筆頭製品が炊飯器だった。同じ米文化の中国と日本だが、日本の炊飯器の性能は中国メーカーの製品より優れている。ならば中国国産で高品質な炊飯器を作り出そうとシャオミは考えたわけだ。

シャオミの炊飯器は現在、3製品が販売されている。最上位モデルは999元(約1万5900円)、下位モデルなら399元(約6300円)と手ごろな価格だ。設計は元三洋電機の内藤毅氏で、「日本人設計」を大きな売りにしている。スマートフォンとの連携は、スマートフォンでお米の袋のバーコードを読み取れば、そのお米に最適な炊き上げ条件が設定される。また素炊飯器を設置した場所の高度に応じて炊き方を変えるなど、細かい設定も自動的に行われる。
シャオミはこのスマート炊飯器を市場に投入してから、スマート家電に「米家」のブランド名をつけ、スマート家電の販売を強化している。空気清浄機や浄水器など中国生活に必須の製品は、他社が「本体は安く、カートリッジは高く」というプリンターインクと同じビジネスモデルを展開している中、カートリッジも安価に買える点をアピールして販売数を伸ばしている。
最近発売されたスマートポットは、中国だけではなく他の国の消費者にとっても便利な製品だ。199元(約3100円)という低価格ながら、スマートフォンと連携して保温時間や保温温度をコントロールできる。ポットに水さえいれておけば、起床時にベッドの中からスマートフォンを使ってお湯を沸かすことも出来るわけだ。もちろん加熱中の水温も確認できるし、沸騰後はアラームで通知してくれる。

実は他の家電やスマートフォンメーカーはスマート家電の投入にあまり積極的ではない。例えば炊飯器も1度買えば数年使えるものを、わざわざスマートな製品が出たからと言って買い替える消費者はあまり多くないだろう。
しかしシャオミが手ごろに買えるスマート家電のラインナップを広げ、しかも手軽に買える価格のものを増やしていけば、スマート家電そのものに興味を持つ消費者を増やすことが出来るかもしれない。しかもそれらのスマート家電は音声でコントロールできるようになるようだ。
シャオミの家庭用の監視カメラ「Xiaomi 360° Mi White Smart Camera」は、家庭に設置するIPカメラで、外出先から室内の様子を監視できる。それだけの製品ならすでに世の中に類似品がいくらでもあるが、シャオミのカメラは簡単な音声認識にも対応している。「米家」ブランドのスマート家電は1つのスマートフォンアプリで全てをコントロールできるが、このカメラを接続すれば、カメラに向かって話しかけるだけで家電のOn/Off操作などができるという。

現状では操作できる内容は限られているようで、Alexaほどの機能は備えていない。とはいえ今日の天気や日付を音声で聞くことができるなど、将来性が楽しみなる製品だ。
シャオミは中国国内に自社製品の販売専門店「小米之家」を全国展開している。以前の小米之家の場所は駅から数分以内、建物の2階や3階などで、駅から近いながらも家賃の安い場所に展開いていた。しかし2016年からはショッピングモール内の一等地に店を出すなど、ショールームとしての位置づけを強化。2017年から3年かけて、店舗を1000まで増やす予定だ。
この小米之家に行ってみると、スマートフォンの最新モデルが並べられているのは当然だが、米家ブランドのスマート家電も多数陳列されている。しかも全てのモデルがその場で動作テストできるのだ。夫婦で小米之家にやってきて、旦那さんがスマートフォンを見ている間に、暇つぶしに奥さんがスマート家電を試してみる、なんて光景も見かけることが多い。
シャオミが販売店を増やすのは、スマートフォンだけではなくスマート家電などのIoT製品を実際に触ってもらい、その利便性を理解してもらうことで販売数増を狙っているのだろう。スマートフォンであれば価格やスペックを見れば、ある程度どんな製品であるかを判断することが出来る。しかしスマート家電は実際に触って見なくては、その利便性はわかりにくい。

オンライン販売に特化してスマートフォンの販売数を増やしてきたシャオミ。今後オフライン=実店舗を増やすのは、スマートフォンからIoT製品へとビジネスの方向性を変えていくためには必然なのだろう。数年後には、シャオミの製品ラインナップからスマートフォンが消え、総合IoT機器メーカーへと変わっているかもしれない。