ここのところ大手メーカーの動きがぴたりと止まってしまったスマートウォッチ市場。だが海外の展示会では新興メーカーから新製品が次々と登場している。それらのほとんどはアプリを入れてスマートフォンのコンパニオンとして使う多機能な製品ではない。活動量計やGPSによるトラッキング機能を備え、スマートフォンとの連携は通話やSNSの通知を受ける程度のベーシックな機能を持ったものが多い。
スマートウォッチもこれからは腕時計同様、機能は各社各製品大きな差は無く、本体のデザインで勝負する時代がやってくるのかもしれない。だが中国の検索サービス「Sogou(搜狗)」が中国で販売しているスマートウォッチは、他の製品にないある機能を搭載することで製品の差別化を図っている。
その機能とはカメラ。Sogouはスマートウォッチを「Teemo(糖猫)」のブランド名で展開してる。ターゲットユーザーは子供で、子供が好みそうなカラフルな色合いに、その親が必要とするトラッキング機能などを搭載している。
またTeemoと親のスマートフォンとの間では専用のチャットアプリでの会話が可能で、SNSアプリのタイムラインに類似した画面で会話ができる。

Teemoのスマートウォッチは全モデルがGSMの通信機能を備えている。つまりSIMを入れることで、単体で通信が可能なのだ。一般的なスマートウォッチはスマートフォンとペアリングし、スマートフォンは常に持っていなくてはならない。
だが子供にスマートフォンまでを毎日持たせるのは大変だろう。外で遊んでいる時にスマートフォンを紛失してしまえば、スマートウォッチのトラッキング機能すら使えなくなる。子供の位置を常に把握するためにはスマートフォンが無くとも単体で動くことが重要なのだ。
そして上位モデルの「T3」や「Color」にはカメラが内蔵されている。子供が自分の現在の状況を写真に取って親のスマートフォンに送る事ができるわけだ。
また、緊急時などはカメラを起動し続けておけば、位置情報だけではなくその場の様子も送ることができる。子供に万が一のことがあったときなど、親のスマートフォンに子供の表情や付近の状況が自動で送られて来ればそれだけでも安心できるだろう。音声を送るにしてもしゃべらなくてはならないし、スマートウォッチの狭い画面で文字を打つのは大変だ。しかしカメラならばワンタッチでその場の状況を的確に伝えることができる。

どちらの製品も10秒の動画も撮影できるので、簡単なビデオメッセージの送信にも使えそうだ。
またクラウドスペースも用意されているので、容量を気にせず写真や動画を撮影することもできる。日常の写真を撮ってSNSにアップする用途にも使えそうで、Teemoのスマートウォッチは子供だけではなく大人が使っても楽しめるかもしれない。
しかも現在、LTEに対応し500万画素の高画質カメラを搭載した最上位モデルも開発中だという。価格は2万円程度になる予定だが、この秋に発売予定とのこと。高速な通信回線を利用できることから高画質な写真や動画を撮影でき、しかも動画はより長い時間の録画にも対応できそうだ。こちらの製品こそ、大人向けバージョンが欲しいところだ。
カメラを内蔵したスマートウォッチは、Samsungが過去に販売していたことがある。同社初のスマートウォッチ「Galaxy Gear」はGalaxyスマートフォンと連携できるスマートウォッチで、Apple Watchより先の2013年9月に発表された。本体には200万画素オートフォーカスのカメラも備え、そこそこ高画質な写真も撮影することが出来た。
しかし常にスマートフォンとペアで使う必要があり、しかもGalaxy以外の端末とは接続できなかった。「腕カメラ」として使うには使い勝手は今ひとつだったようだ。
2014年に発売した後継モデルでは、カメラありの「Gear 2」とカメラ無しの「Gear Neo」が登場したことからわかるように、カメラ機能は無くても良い、と当時のSamusngは考えた。
だがそれはカメラ機能そのものがユーザーに受けなかったのではなく、スマートウォッチで撮影した画像をスマートフォンへ転送し、そこから改ためて利用するという面倒さが利用のネックになっていたのかもしれない。
今やSNSでは写真を送りあうことがあたりまえのものになっている。その場のスナップ写真を撮影し、そのまま自動アップロードできるカメラを内蔵したスマートウォッチならば、今の時代のユーザーニーズにマッチした製品になるだろう。通信モジュールの小型化や低消費電力化が進んだ今こそ、カメラを搭載し単体で通信できるスマートウォッチの普及が進むかもしれない。