電源不要のIoT、「Enocean」の可能性|山根康宏のワールドモバイルレポート

電源不要のIoT、「Enocean」の可能性|山根康宏のワールドモバイルレポート

超低消費電力(Low Power)で利用できる広域ネットワーク(WideArea)、LPWA規格にはNB-IoT、LoRa、Singroxなど複数の規格が存在する。それぞれには一長一短があるものの、乾電池数本で十年動く製品もあるなど、電源供給に難点がある場所へもセンサー類を設置することが可能だ。

ところが電池すら不要、電源無しでも動作する規格が存在するのだ。それがEnOceanである。EnOceanはエナジーハーベスト技術を利用する。これは環境発電の意味で、電源を光や熱など外部からのエネルギーから取り入れたり、動作や振動など動きをエネルギーに変えて利用するのだ。動作に必要な電力はZigBeeの1/10程度とかなり低い。

EnOceanは双方向通信の製品化も可能だが、実際に商用利用されているものはデータの送信のみに対応し、受信を考えない用途のものが展開されている。電源を取る必要が一切なく、電池交換の必要もないため、機器内へ組み込んでしまい後から取り外すことを考える必要もない。そのため取得したデータを送り出すセンサー用途への利用が進んでいるのだ。

EnOceanに対応したセンサーの一例
EnOceanに対応したセンサーの一例

たとえばドアの開閉を感知するスイッチ型のセンサーであれば、スイッチ部分が押されることで、センサー内部の電磁誘導素子がその動きから電力を生み出す。そしてスイッチがON、あるいはOFFになったことをEnOceanのゲートウェイに送信するのである。EnOceanの電波の到達距離は商用製品で30メートルから300メートル程度で、工場やオフィス、家屋内のセンサーとしては十分実用的だ。

EnOceanは単独で利用することも可能だが、ゲートウェイを通してスマートホームソリューションと接続すれば、他のIoT製品と同じように使うことができる。2018年1月にラスベガスで開催されたCES2018の会場では、IoTの標準規格団体である「OPEN CONNECTIVITY FOUNDATION (OCF)」ブース内でEnOceanを組み込んだ機器のデモが行われていた。

様々な規格が乱立したスマートホームも、今やOCFの元に各メーカーの製品が相互に繋がるようになっている。最近では冷蔵庫に大型ディスプレイを内蔵し、画面をタッチすることで家庭内の家電をコントロールしたり、子供部屋の様子をカメラで確認すると言ったことが可能だ。EnOceanの機器もゲートウェイ経由でOCFに接続すれば、冷蔵庫の画面上にセンサー情報を表示することができる。

ヨーロッパではEnOceanを内蔵した年配者向けのSOSセンサーがすでに実用化されている。同ブースでのデモでは、首からぶら下げたセンサーのボタンを押すと、冷蔵庫の画面に緊急状態が起きたことが表示された。電池不要のため充電をする必要が一切なく、利用者は健康状態が悪くなった時にボタンを押すだけで家族にその状況を知らせることができるのだ。

お年寄りのSOSセンサー
お年寄りのSOSセンサー
ボタンを押すと、OCF対応のスマート冷蔵庫の画面に表示される
ボタンを押すと、OCF対応のスマート冷蔵庫の画面に表示される

この手の緊急センサーは様々な製品が商用化されているが、ボタン電池を使う製品であっても数年に1度は電池交換が必要だ。そのためいざ使おうと思った時には、電池がすでに切れてしまっていたこともあるかもしれない。EnOceanならばその心配は一切不要であるため、数年に1度あるかないかという動作も確実に保証してくれるというわけだ。

開閉スイッチをドアや家具に組み込むことも簡単だ
開閉スイッチをドアや家具に組み込むことも簡単だ

LPWAは各規格ごとに長所と短所を持っている。その長所短所を相互に補完しあいながら、あらゆるものが繋がる時代がこれからやってくる。どの規格が主流になるか、ではなく、アプリケーションに応じてLPWA規格を使い分けていくことで、オフィスや家庭、そして都市のスマート化が急速に進んでいくだろう。

この記事が気に入ったら
いいね ! をお願いします

Twitter で

山根康宏のワールドモバイルレポートカテゴリの最新記事