単三電池2本で10年動き、電波の到達エリアも広いLPWAはIoTには欠かせない通信方式だ。その中の一つ、NB-IoTはLTE回線を使ってデータ通信を行うため、新たに基地局を立てずとも全国展開が容易に行える。すでに一部の国ではメーターの自動検針や駐車場の空き状況の検知などB2B向け、あるいはパブリックセクター向けに導入が進んでいる。日々の生活が便利になるための裏方として、NB-IoTは社会の中に着々と広がりつつあるのだ。
しかしこの裏方のNB-IoTが、今度はコンシューマーの目に触れる部分に使われようとしている。中国の大手家電メーカー、四川長虹電器(長虹、Chang Hong)はファーウェイと組んで家電製品へのNB-IoTモジュール搭載を進めようとしている。2018年3月に上海で開催された中国の家電展示会「AWE2018」の長虹ブースには、試作モデルとしてNB-IoT搭載の冷蔵庫とエアコンが展示されていた。

この両家電は本体の状態をスマートフォンアプリで監視することができる。たとえば冷蔵室、冷凍室の温度をいつでもアプリで確認できる。また温度設定をアプリからコントロールすることも出来るのだ。エアコンも同様で、リモコン代わりにスマートフォンを使って温度調整ができる。
この手のスマートフォンと連携できる家電、いわゆるスマート家電にはこれまでWi-FiやBluetoothが搭載されていた。しかし家の中の電波状況が悪い場所には設営できない。また家のWi-Fiに接続する必要もある。最近のWi-Fiルーターはパスワードが長く、それを入力して接続作業をするのも面倒なものだ。
しかし冷蔵庫がNB-IoTを搭載していれば、自宅に設置するだけでそのまますぐにデータの送信が可能になる。家にWi-Fiが無くとも、家電の制御や管理が可能になるのである。

長虹はCHiQ-Lifeの名前でスマートホーム製品をすでに展開中している。現在の主力はアラームやセンサーなどのホームセキュリティー製品で、スマートフォンのアプリを使い家の状態を管理できる。ホームサーバーと各種センサーはWi-Fi、Bluetooth、ZigBeeで繋がれ、家の状態を常にモニタリングできる。
しかしこれらのセンサー類も、すでに市場にはNB-IoTを搭載したものも出始めている。温度計、煙感知器、窓の開閉検知器などにもNB-IoTが乗れば、買ってきて設置するだけですぐに使えるようになるのである。

とはいえ最近のスマート冷蔵庫は大型のタッチパネルモニタを接続し、YouTubeの動画を再生できるものもある。サムスンやLGの販売するスマート冷蔵庫の最上位モデルは、もはやタブレットをそのまま冷蔵庫に埋め込んだような製品だ。この手の用途にはWi-FiやLTEが必要で、NB-IoTでは役不足だ。
だが腕にはめるスマートウォッチが「何でもできる」を売りに高性能をアピールした割には利用者が増えていない(実質的に使われていない)ことを考えると、スマート冷蔵庫も動画の再生などリッチなコンテンツ再生を謳ったところで、実際にはほとんど使われないのが関の山になるだろう。

NB-IoTと家電の組み合わせは、家電の状態や異常検出時のアラートを確実にスマートフォンへ送信することができる。真の意味でスマートな家電とは、そんな機能を持った製品のことを言うのではないだろうか?洗濯機、乾燥機、オーブンレンジ、コーヒーメーカー、ジューサーなどなど、あらゆる家電にNB-IoTのモジュールが搭載されれば、なかなか普及が進まないスマートホームの利用拡大の起爆剤になるかもしれない。