スマートフォンの「裏面」に注目、2画面スマホはようやく日の目を見るか?|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォンの「裏面」に注目、2画面スマホはようやく日の目を見るか?|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォンの裏側もスマートフォン、すなわち表も裏にも表示できる2画面スマートフォンが中国のNubiaから発売された。「Nubia X」は表から見れば6.26インチの大型ディスプレイを搭載した普通のスマートフォン。しかし裏を見ると、通常はただのメーカーロゴやカメラしかない背面側にも時計表示がされている。しかも側面のボタンを押せば裏側にもAndroidの画面が表示される。実はNubia Xの裏面は5.1インチのディスプレイになっており、こちら側を使っても操作できるのだ。

表も裏もスマートフォン、2画面端末のNubia X
表も裏もスマートフォン、2画面端末のNubia X

表も裏もカラー表示のできるスマートフォン、という製品はNubia Xが初めてのものだろう。サムスンが中国で出している折りたたみ型の超高級スマートフォン「W-2XXX」シリーズは、閉じた状態でも外側をスマートフォンとして操作でき、開くと今度は内側のディスプレイがスマートフォンになる。両画面が使えるといえば両画面だが、これはあくまでも折りたたみスタイルの端末であればガラケー時代から似たような製品はあった。

また中国のMeizuが出している「Pro7 Plus」は背面のカメラが縦に並んでおり、その下部に小型ディスプレイを搭載している。背面カメラを使って自撮りをするときや、時計などを表示しておくことができるものの、1.9インチと小型のため、この製品を「裏表2画面端末」とは呼びにくい。

Nubia Xは裏側の画面の電源を切ると、裏面全体が光沢感ある仕上げになっている。通常はここに時計や待ち受け画像が表示されるが、裏面全体が同じ色合いで仕上げられているために、裏側全体がディスプレイのように見えるのだ。実際は裏面全体のサイズは約6.3インチ(表のディスプレイが6.26インチなので、それとほぼ同じ大きさだ)で、その中央部分に5.1インチのディスプレイが埋め込まれている。しかしつなぎ目は見えずその外観は美しい。

裏面側でAndroid OSを使うと、ディスプレイ面だけが中央に位置していることが見える。裏面もスマートフォンとして使う意味は、裏側に配置されている1600万画素+2400万画素の高性能なカメラを自撮り用として使うためだ。実はNubia Xの表面にはフロントカメラは無い。最近のスマートフォンはどれもノッチ、つまりディスプレイ上部のカメラ回りに切り欠きがあるが、Nubia Xはそのノッチが無いのである。

ディスプレイにはノッチがない
ディスプレイにはノッチがない

普段は使われないスマートフォンの背面を、本体を裏返してもスマートフォンにしてしまう、こんな突拍子もないアイディアをNubia Xは製品化した。しかし両画面スマートフォンはNubia Xが最初の製品ではない。新興メーカーを中心にこれまでもいくつかの製品が発売され、そして消えていった。すなわちメジャーな製品になることは決してなかったのだ。

2012年にロシアのYota Devicesが世界初の2画面スマートフォン「YotaPhone」を発表した。表側は4.3インチのカラーディスプレイ、裏側には同じく4.3インチのモノクロディスプレイを搭載した。このモノクロディスプレイはE-Ink(電子ペーパー)で解像度は640×360ピクセル。表の液晶が1280×720ピクセルなので、その半分の解像度だった。裏面では専用のOSが動き、電子ブックリーダーを使うのが主な用途だった。

2014年には「YotaPhone 2」が登場。ディスプレイは表が5インチ1920×1080ドットの有機EL、裏面はE-Inkのまま4.7インチ960×540ピクセルまで解像度を上げた。裏面ではより細かい文字が読めるようになり、さらにはCPUにSnapdragon 801を採用したことでハイスペックとなり、裏面でもAndroid OSが動くようになった。

ハイスペックな2画面スマートフォン、YotaPhone 2
ハイスペックな2画面スマートフォン、YotaPhone 2

だがモノクロ画面でAndroid OSを動かすメリットはあまりなかった。また電子書籍をわざわざモノクロ画面で読む必要性も薄れていった。E-Inkといえばアマゾンの電子ブックリーダー「Kindle」が有名だが、そのKindleも今では液晶画面の普通のタブレットが主力モデルだ。モノクロ画面を積極的に使うアプリケーションが無ければ、両画面スマートフォンの存在意義も薄れてしまう。

このYotaPhone 2は日本でもマニアの間を中心に話題になった。800ドル以上もした価格もその後大幅に下がり、2016年には200ドル程度まで急落。高性能スマートフォンとして登場したものの、実際は売れ行きが悪く最後は投げ売りされてしまった。欠点の1つは裏面も表示されるため、一般的なケースを装着することができなかったことだろう。専用のバンパー型ケースが販売されたが、本体を保護したいユーザーには不満足だったに違いない。

Yota Deviceはその後中国企業の傘下に入り、2017年には「YotaPhone 3」を投入。ディスプレイは表が5.5インチ1902×1080ピクセル、裏のE-Inkは5.2インチ1280×720ピクセルとなり、E-Inkの解像度はAndroidスマートフォンとしても十分使えるレベルになっている。しかし結局モノクロの裏面で高度な操作をするユーザーはおらず、メーカーとしても使い道には苦慮しているのが実情だろう。

現在、2画面スマートフォンを積極的に展開しているのは中国の大手家電メーカー、ハイセンスだ。ハイセンスといえば東芝のTV部門を買収したり、2018年ロシアワールドカップのスポンサーになるなどグローバルで存在感を高めているメーカーだ。日本でも冷蔵庫などの白物家電を出している。

そのハイセンスは中国やヨーロッパでスマートフォンを展開しており、そのラインナップの一つにYotaPhone同様の背面E-Inkスマートフォンを持っているのだ。2017年2月に「A2」、同9月に「A2 Pro」と立て続けに2画面端末をリリースし、2018年10月には「A6」を発表した。A6は表が6.01インチ2160×1080ピクセル、裏が5.61インチ1440×720ピクセルという、今はやりの18:9のワイドディスプレイを採用した。

ハイセンスのA6。表も裏もディスプレイは高解像度だ
ハイセンスのA6。表も裏もディスプレイは高解像度だ

筆者は実際にこのA6を2018年9月にベルリンで開催されたIFA2018のハイセンスブースで触ってみたが、大画面&高解像度のE-Inkディスプレイは改めて電子ブックリーダーとしての使い道や、またSNSのタイムライン表示にも適していると感じた。今までの2画面スマートフォンが普及しなかったのも、E-Inkの性能が低かったからかもしれない。

しかしハイセンスが2画面スマートフォンをがんばっているのは別のところに意味があるのかもしれない。それはスマートホームとの連携だ。家電メーカー各社は家電のIoT化を進め、そのコントローラーとしてスマートフォンを使おうとしている。今後は「エアコンを止めて」と語り掛ける音声入力も主流になるだろうが、家電の細かい設定はアプリを使ったほうが楽だろう。スマートフォンでスマート家電のアプリを立ち上げればコントロールは簡単だが、動画やSNSを楽しんでいる最中に、いちいちスマート家電のアプリを切り替えるのも面倒だ。

そこで2画面スマートフォンの登場だ。裏面を常に家電コントロール用のアプリを起動しておき、家電の操作だけではなく、家電の動作状況を表示しておけば、常に家庭内の家電を自宅のみならず外出先からも監視できる。一歩進めればスマート洗濯機の洗剤の残量が少なくなったので、アプリ画面からオンラインショッピングへ進む、といったECとの連携もできる。

スマート家電の普及に2画面スマートフォンが一役買うかもしれない
スマート家電の普及に2画面スマートフォンが一役買うかもしれない

さてそう考えると、Nubia Xのように裏面がカラーディスプレイになると、スマート冷蔵庫の内蔵カメラからの映像をそのままカラー写真として表示できる。「スマートフォンの裏面はスマート家電のため」という使い方は、もしかしたら全く新しいアプリケーションになるのかもしれない。

キワモノ、あるいはマニア向けとも思えるNubia X。だがスマートフォンを取り巻く環境は進化しており、IoTの進化でありとあらゆるものがつながる時代がやってこようとしている。スマートフォンの画面サイズは今のままでは足りなくなる、そうなれば、裏面もディスプレイにしたNubia Xのような端末が他社からも登場するかもしれない。

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