Galaxy Note9の発表会ではゲーム対応も一つの目玉だった

2019年はゲーミングスマートフォン元年になる?各社から新製品が次々登場|山根康宏のワールドモバイルレポート

世界のスマートフォン市場は先進国での普及が一巡し、新興国の成長頼みになっている。調査会社ガートナーの報告を見ると、2018年の各四半期のスマートフォン販売台数成長率は前年比で1から2%と低成長に終わった。毎年華々しく新製品を発表するアップルですら、iPhoneはもはや新規顧客獲得ではなく既存客の買い替え需要に頼っているのが実情だ。高価格路線を貫き低価格モデルは旧製品や中古(販売数には加算されないがユーザーは増える)でカバーする製品戦略を行っている。

各メーカーはポスト・スマートフォンとしてスマートホームやウェアラブル製品などの開発に躍起になっている。しかしスマートウォッチで成功しているのはアップルなどごく一部のメーカーであり、スマートウォッチが普及するためには「デザイン」「UI」「独立した通信機能」など乗り越えなくてはならない壁は大きい。

となると、やはり本業のスマートフォン事業に目玉となる製品が欲しいのが各社の望むところだろう。一部のメーカーが製品展開を始めたゲーミングスマートフォンは、新しいユーザーをつかむ製品として期待の星になりそうだ。

スマートフォンの普及により年々縮小が続くPC市場の中で、IDCはゲーミングPCが好調な出荷台数を記録しているとしている。ゲーミングPCは価格よりも性能が重視される製品であり、本体デザインにも力をかけることで高価格かつブランド力をアピールできる。Razerのように小さいメーカーでも、ゲーミングPC市場では絶大な人気を誇っている。

Razerの「Razer Phone 2」完成度は非常に高いゲーミングスマートフォンだ
Razerの「Razer Phone 2」完成度は非常に高いゲーミングスマートフォンだ

そのRazerは「ポスト・ゲーミングPC」としてゲーミングスマートフォンに2017年から参入している。初代モデルはカメラの不具合などに泣かされたが、2018年に投入した「Razer Phone 2」はすべての欠点を改良したともいえる完成度の高い製品に仕上がっている。ゲーミングパッドを取り付ければ快適な操作も可能だ。

また「ROG」ブランドでゲーミングPCを展開しているASUSも「ROG Phone」を2018年に発表。側面にもセンサーを搭載しタッチボタンにするなどゲーム操作を考えた機能を搭載している。さらには冷却ユニット、ゲーミングパッド、2画面化モジュールなど、ROG Phoneでゲーム環境を快適にするための周辺機器も販売している。つまりスマートフォン単体だけではなく、アクセサリでもビジネス展開を行っているのだ。

ASUSのROG Phoneの豊富な周辺機器はスーツケース入りのフルセットもある
ASUSのROG Phoneの豊富な周辺機器はスーツケース入りのフルセットもある

ファーウェイが9月に発表したチップセット「Kirin 980」は高速な4GモデムやAI処理に優れたNPUを2つ搭載するなど、現時点で最強ともいえる製品だ。しかもゲーム用にGPUも強化されており、ゲーム用途にも適しているという。このKirin 980を搭載したスマートフォン「Mate 20」は4つのモデル展開が行われているが、日本未発売の「Mate 20 X」はゲームパッドも装着可能で、ゲーミングスマートフォンとしても使うことができる。

ファーウェイはこのゲーミングスマートフォンの展開に力を入れており、サブブランド「Honor」ではゲーム対応を意識した製品を多く出している。グラフィック性能を一時的に増加させる「GPU Turbo」機能を搭載した「Honor Play」を皮切りに、7.12インチの大画面モデル「Honor 8X Max」などをゲームに最適なスマートフォンとして販売している。

Honorはゲーム対応製品もアピールしている
Honorはゲーム対応製品もアピールしている

他の中国メーカーを見ると、シャオミとZTEの関連会社、Nubiaがそれぞれゲーミングスマートフォンを出している。シャオミは「Black Shark」、Nubiaは「Red Magic」がブランド・製品名で、2017年に初代モデルを投入後、2018年になり後継機を出している。どちらの製品もやはりゲーミングパッドが別売されている。

もちろん普通のスマートフォンでもハイスペックかつGPU性能に優れたモデルなら快適なゲーム操作が可能だろう。サムスンの「Galaxy Note9」は8月の新製品発表会時にゲーム「Fortnite」の対応を大きくアピールし、日本でも「PUBG」とのコラボイベントを行った。またゲームの中には今でも最初にiPhoneに対応するものが多く、iPhoneの最新モデルをゲーミング用として買う消費者も多い。

Galaxy Note9の発表会ではゲーム対応も一つの目玉だった
Galaxy Note9の発表会ではゲーム対応も一つの目玉だった

しかし今やスマートフォンは生活必需品であり、スマートフォンには常にメッセンジャーからの通知がくる時代だ。スマートフォンでゲームをしながらSNSやチャットをする、というのも面倒である。シャオミやNubiaのゲーミングスマートフォンは比較的安価な価格設定がされているが、これはメインスマートフォンとは別にゲーミング用として自社製品を買ってほしい、という考えもあるかもしれない。

またRazerは自ら「ゲーミングユーザーのためのライフスタイル」を提供する会社と謳っており、服飾にも手を出すなどファッションブランド化を進めている。RazerのPCやスマートフォンを持つだけではなく、RazerのTシャツを着てRazerのバッグを肩にかける、それがファッショナブルでカッコいいというイメージを発信しているのだ。

Razerが目指すのはゲーミング・ライフスタイル
Razerが目指すのはゲーミング・ライフスタイル

つまりゲーミングスマートフォンは「ゲームのためのスマートフォン」に留まるだけではなく、周辺機器を含めたプラスアルファの市場展開を行える可能性を秘めた製品というわけだ。ライティングを使って光る製品も多く、その外観は近未来を感じさせる。自作PCの世界でも、光るパーツやチューブが見える冷却装置などあえて「見せる」ための周辺機器が増えている。

筆者はRazer Phone 2のワイヤレス充電台を購入した。Qi方式に対応しておりiPhoneやGalaxyなど他のメーカーのスマートフォンも充電できる。RazerのPCやキーボード同様に充電中は底面が光り、見ているだけでも美しさを感じてしまう。こうした汎用周辺機器は、自社のスマートフォンを持っていないユーザーにも販売できるという実例だろうか。

Razer製品同様に光る充電台。他社スマホも利用できる
Razer製品同様に光る充電台。他社スマホも利用できる

2018年になり10万円を超えるハイスペックなスマートフォンが各社から相次いで登場している。しかしゲーミングスマートフォンはそのスペックの高さからさらに高価格なモデルが登場しても、ゲーミングユーザーの興味を引き付ける存在になるかもしれない。そのためには製品の性能や品質はもちろんのこと、その製品を買うことによるライフスタイルの向上や楽しさを伝えられるストーリーがー必要だ。スマートフォン向けゲームの高性能化がこれからも進む中、ゲーミングスマートフォンという新たな市場が2019年は確立されるかもしれない。

Galaxy Note9の発表会ではゲーム対応も一つの目玉だった
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