高性能なメインカメラを前面でも使えるメリットは大きい

回転式カメラ採用のスマホが登場、画面のノッチは完全消滅へ|山根康宏のワールドモバイルレポート

iPhoneのディスプレイの上部の欠き取り部分、いわゆる「ノッチ」は見慣れてくれば気になるものではありませんでした。しかし海外のAndroidスマートフォンはそのノッチを無くす動きが急激に進んでいます。ノッチを無くすにはフロントカメラを廃止しなくてはなりませんが、各社はそのフロントカメラを「使わないときに隠す」構造を取って解決しています。

ASUSが6月に海外で発売したばかりの「ZenFone 6」は、背面のメインカメラが回転して表側に出てくる機構を取っています。つまりフロントカメラを使うときは、本体の上部にカメラが現れます。この機構は耐久性が心配ですが、ASUSによると10万回の開閉テストをクリアしているとのこと。

またZenFone 6を誤って落下させたときは、モーションセンサーが働きすばやくカメラを収納してくれます。飛び出たカメラが床にぶつかって破損してしまう恐れがないわけです。

裏側のメインカメラ部分の周りにスリットが見えるZenFone 6
裏側のメインカメラ部分の周りにスリットが見えるZenFone 6

ZenFone 6のカメラはモーターで動き、細かい角度もボリュームボタンを上下に動かすことで調整できます。さらには動く被写体を自動で追いかけるトラッキング機能も搭載しているのです。ペットの動画、あるいは街中を歩きながらビデオを撮るときなどに便利ですね。
トラッキング機能を持ったカメラを搭載したスマートフォンはZenFone 6だけなので、今までのスマートフォンにはなかった面白い使い方ができそうです。

カメラがフロント側に回転する
カメラがフロント側に回転する

サムスンの「Galaxy A80」もカメラに特徴を持たせています。メインカメラが回転してフロントカメラになる動きはZenFone 6と同じですが、A80の場合はまずカメラ部分全体が本体から上に飛び出し、そのままカメラ部分が回転します。
こうすることによって飛び出したカメラに無理な力が加わらないようにしているのです。

Galaxy A80のフロントカメラは、背面から上昇して前に回転する
Galaxy A80のフロントカメラは、背面から上昇して前に回転する

カメラ部分全体が飛び出すギミックは2018年にOPPOから登場した「FIND X」と似ていますが、FIND Xはメインカメラとフロントカメラは別々のものでした。Galaxy A80はFIND Xのカメラを1つにまとめ、回転式にしたというわけです。

ZenFone 6、Galaxy A80は共にメインカメラをフロントカメラとしても使うため、フロント側でも高画質な写真やビデオをとることができるというメリットも持っています。
カメラの性能指標の一つであるDOXMarkで、ZenFone 6はフロントカメラの性能で98という最高のスコアをマークしています。もちろん実はこれ、メインカメラがそのままフロントカメラになるからです。
ちょっとずるい気もしますが、フロント側でカメラを使いたいユーザーにとってはこの数値は重要な意味を持つでしょう。

高性能なメインカメラを前面でも使えるメリットは大きい
高性能なメインカメラを前面でも使えるメリットは大きい

スマートフォンの前面をすべてディスプレイにする動きは数年前からありました。当時は「ベゼルレス」と呼ばれ、本体の左右に加えて上部か下部がギリギリまでディスプレイという、「3方ベゼルレス」端末がいくつか出てきました。シャープの「AQUOS CRYSTAL」はその代表でしょう。下部にベゼルはあるものの、それ以外の3辺はギリギリまでディスプレイであり、美しいデザインでした。

その後2017年9月に「iPhone X」が登場し、ディスプレイの上部をカットしたデザインが流行となります。
しかし中国メーカーはすぐさまノッチを最小限にした、いわゆる「水滴型ノッチ」を採用。さらには指先サイズのフロントカメラだけを上下に動かす製品が相次いで登場します。
2018年末にはディスプレイの中に穴をあけてカメラを搭載する「パンチホールディスプレイ」を採用するモデルも出てきました。

パンチホールディスプレイのGalaxy A8s
パンチホールディスプレイのGalaxy A8s

各社がiPhone型のノッチを廃止するのは、やはり見た目の美しさにこだわるからでしょう。ノッチのないディスプレイはすっきりしたデザインな上に全画面表示が可能です。
あとはノッチ無しをどう実現かするかですが、ZenFone 6はASUSのフラッグシップ機、Galaxy A80はGalaxy Aシリーズの最上位モデルです。メーカーの「顔」となるモデルだけに、大胆なギミックの採用は話題を取ろうという思惑もあるでしょう。

Galaxy A80のカメラ部分のアップ
Galaxy A80のカメラ部分のアップ

あとはこの回転式カメラが他社も追従する製品になるのか、はたまた数機種で終わる一過性の流行になるのか。今のところ中国大手のOPPO、Vivo、シャオミはカメラを出し入れする収納式機構にこだわっていますし、サムスンのGalaxy SシリーズやLGなどは回転式カメラを採用する動きが見えません。

本体の一部が動く製品は見た目も楽しく飽きにくいでしょうから、ぜひ他社からも類似の製品が出てきてほしいものです。

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