イギリスの新教科「コンピューティング」の背景 ― 20年以上前から始まっていた情報教育|上松恵理子のモバイル教育事情

イギリスの新教科「コンピューティング」の背景 ― 20年以上前から始まっていた情報教育|上松恵理子のモバイル教育事情

ケンブリッジの街並み

モバイル教育を進化させている国の共通キーワード。それは小学校の教科「情報」である。前回[1]にも触れたが、イギリスの場合、1995年から小学校に「ICT」という教科が入り、2014年からは教科「コンピューティング」がスタートした。

他の国でも情報を専門に学ぶ新教科がカリキュラムに導入されてきた。例えば、ニュージーランドの小学校では「デジタルテクノロジー」という教科がある。もちろん日本の総合学習のような形でプログラミング教育が入っている国もある。しかし、小中高と系統的に情報を学んだり、ロボティクス教育などの導入のためには教科が必要だということを各国で聞いたのも事実。

そこで新教科ではどうスタートし、どのような基準があり、それをどう評価する試験が実施されるのか、筆者はその疑問を解決すべく、イギリスのOCR[2]を訪問した。OCRはイギリスの全ての学校が利用可能な学習プログラムや資格を提供しているケンブリッジ大学の附属機関である。全国で行われる試験問題作成だけでなく、授業評価の基準も作成している。

ここで、Computer Science & ICT スペシャリストでエグザムボードであるヴェナイ氏[3]に単独インタビューを行った。

実はOCRのようなコンピュータ教育の評価機関はイギリスには4カ所存在し、評価は学習指導要領のようなナショナルカリキュラムと連動している。CAS(Computing at school)[4]や Naace(National Association of Advisers for Computers in England)[5]という ICT リテラシーやICT を利用した教育推進&支援を行い、カリキュラムの提言までもするような教育関連団体や機関もある。OCRの試験問題もイギリスの多くの学校で使われている。もはやイギリスにおいては、コンピュータを使うか使わないか、1人一台か否か、などというフェイズではない。

Vinay Thawait 氏

ヴェナイ氏は以前は高校で、1995年から始まった教科「ICT」を教えていたという。教科「ICT」のエキスパートの先生がここOCRで雇用され、教師の経験を活かし、中高生の受ける全国規模で行われる試験や授業評価基準の作成に関わっていたのである。
新教科は、コンピュテーショナルシンキング(Computational Thinking)創造力(creativity)をつけるといったレベルの高い内容なので教職員の反対もあった。しかし、情報社会の進化が著しいため、やるしかないと思い、粛々と教師教育を進めている」と述べていた。

ケンブリッジの街並み

さて、話はそれるが、ここケンブリッジ大学の周囲には多くの大学関連の機関がある。民間の日本語学校もあって日本人の大学生がたくさんいた。
ここから離れているがオックスフォード大学も様々なカレッジがあり、街がまるごと大学といった感じである。この2つの大学は特別かもしれないが、イギリスのアカデミック機関の規模の大きさ、教育の質の高さ、それを支える機関の多さに驚いた。

さて、しばらくイギリスの話が続いたが今回で一区切り、他の話題に移ることとする。

[1] イギリスの教科「コンピューティング」におけるプログラミング教育|上松恵理子のモバイル教育事情 https://mobile-univ.com/archives/18063/
[2] OCR:Oxford, Cambridge and RSA Examinations and Learning
[3] Vinay Thawait 氏Subject Specialist – Computer Science & ICT)
[4] CAS(Computing at school) https://www.computingatschool.org.uk/
[5] Naace(National Association of Advisers for Computersin England)
https://www.naace.co.uk/

ケンブリッジ大学附属機関のOCRにて、Vinay Thawait 氏(Subject Specialist - Computer Science & ICT)へのインタビューの様子
ケンブリッジ大学附属機関のOCRにて、Vinay Thawait 氏(Subject Specialist – Computer Science & ICT)へのインタビューの様子

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