学生による学生のためのICTサービスアイデアコンテスト|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

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さる10月27日、広島市立大学にて「フレッシュITあわ~ど2019」(https://freshitaward.wixsite.com/freshitaward2019)の最終審査会というものが開催され、審査員として参加してきました。このイベントは、電子情報通信学会中国支部学生会が主催し、モバイルやIoTを活用したアイデアやアプリを中国地方の学生・生徒から募集し、素晴らしい作品を表彰するというものです。

歴史は長く、前身となる「学生ケータイあわ~ど」は2007年からスタートし、スマホが当たり前となった2013年にはその名称を「フレッシュITあわ~ど」と改め、現在に至っております。じつは筆者も2008年から審査員として毎年参加させていただいております。

アプリ作品を競う「作品部門」の他に、ユニークなモバイルアプリの企画を競う「アイデア部門」が設けられ、学生ならではの視点でモバイルを楽しく有効に活用するアイデアに溢れています。毎年、学生ならではの気づきに驚かされることも多く、この恒例の審査会は筆者も毎年楽しみにしておりました。

「フレッシュITあわ~ど」と名称を改め第7回目となった今年は、アイデア部門に63件、作品部門の4件の応募があり、書類審査、二次審査によってアイデア部門6件、作品部門3件に絞られた上で最終審査会に臨みました。

学会が主催しているということもあり、最終審査会は学会のポスターセッションを模したスタイルで学生・生徒各位にプレゼンテーションをしていただき、それで説明を受けた審査員が順位を投票し、最優秀賞を決定します。最優秀賞には合わせて総務省中国総合通信局長長賞が送られます。

広島市立大学で開催された最終審査会の様子
広島市立大学で開催された最終審査会の様子

今年の作品部門で最優秀賞/総務省中国総合通信局長賞に選ばれたのは、岡山大学から二人組で応募されたチーム「KBD」の赤田拓磨さん、橋本律紀さんの作品「ManholeFactory」。マンホールを題材としたデータ収集と”ささやか”な交流ができるアプリというものです。マンホールというマニアックな着眼点がユニークです。
なるほど、市町村ごとにデザインの異なるマンホールの蓋を軸に、これを撮影して記録していくことができ、さらに同じマンホール(データ)をコレクションしている他のユーザーとの”ゆるい”コミュニケーションができるというアプリのようです。

マンホールに関するアプリやコミュニティーはすでに多数実現しているそうなのですが、どのマンホールが「いいね!」評価が高いとか、そういったことを競うのではなく、どのマンホールも平等に、同じコレクションをもつユーザーと”ゆるく”つながるところに心地よさを感じられるアプリを目指すのだそうです。そしてそれをきっかけにマンホールの蓋を見るために地方に足を運んでもらう機会につなげていけたらということでした。

作品部門最優秀賞に輝いた岡山大学「BYD」のお二人
作品部門最優秀賞に輝いた岡山大学「BYD」のお二人

そして、アイデア部門で最優秀賞/総務省中国総合通信局長賞に輝いたのは、鳥取大学大学院・川上寛子さんの「視線を共有するドライブレコーダー・目録」というアイデア。これは、ドライブレコーダーに運転者の視線の動きを同時記録し、その視線をドライブ映像と合わせてビッグデータとして収集・解析することで、ドライブ上の危険ポイントを収集し、そこを走る他のドライバーにも注意喚起するというものでした。

アイデア部門最優秀賞に輝いた鳥取大学の川上寛子さん
アイデア部門最優秀賞に輝いた鳥取大学の川上寛子さん

この鳥取大学・川上さんにビジネスモデルをお尋ねしたところ、そこはまだピンときていないようでした。しかし、筆者はドライブレコーダーをIoT化する価値はとても高いと高く評価しています。

最近では三井住友海上保険をはじめ、ドライブレコーダーをオプションとした自動車保険も販売されています。自動車保険のオプションとなっているそれらのサービスは、万が一の事故が発生した場合、直ちに保険会社の事故処理センターに通知でき、また事故の状況がドライブレコーダーに記録されているのでそれを参照して事故過失割合を算定しやすいというところが宣伝文句になっています。
しかし、実際にはドライバーの日頃の運転スキルも評価される機能が搭載されており、そうしたところから収集されるデータをもとに、いずれ保険料算出のための根拠としても活用していくのでしょう。現在、そこまでできているので、この川上さんのアイデアをドライブレコーダーの機能に加えることで、さらに事故が多発するポイントなどの収集も可能になり、損害保険会社としては有益な情報を収集できるIoT機器に発展するはずです。

また、このほかにも、アイデア部門で優秀賞に評価された鳥取大学・竹川峻平さんの「アメデス」というアイデアは、傘にGPSと開閉センサーを装着することで、傘の利用状況から雨が降っている正確な位置やその量を共有できるというもの。じつは審査を担当された先生からは傘を使っている側のメリットが薄いのではといった指摘もされていたのですが、筆者はなかなか良いアイデアと評価しました。

雨傘IoTのアイデアを披露した鳥取大学の竹川峻平さん
雨傘IoTのアイデアを披露した鳥取大学の竹川峻平さん

ご存知の方も多いと思いますが、中国ではバス停や駅の出口などにレンタル傘のスタンドが並んでいます。とても安価に利用できるので、中国の都市部に暮らす人の多くはわざわざ自分の傘を持ち歩くことなどしません。しかしこの中国のレンタル傘はパーソナルスコアリングサービスと連携していて、そのユーザーが正しく傘を返却する人なのかどうかの評価につながっています。スコアが高いユーザーはレンタル傘の利用も無料になるという特典がついてきます。

日本でもLINEスコアやYahoo!スコアなどのスコアリングサービスがスタートしています。もしこのようなGPS付き開閉センサー付きの傘が安価に製造できて、これらのパーソナルスコアリングサービスを提供する企業とコラボできたら、企業側は天気予報だけでなく、様々なデータを収集することができるはずです。

このほか、作品部門で優秀賞に輝いた島根大学・藤原巧さんの作品「動画再生の位置的な同期による除雪車ナビゲーションアプリ・夏景色」も大変有益なアプリだと感じました。豪雪地帯における除雪作業は、雪で道路上の様々なモノ(マンホールだとかポールだとか)が見えないため、これが除雪の際にトラブルの元になっていることを指摘。そこで除雪コースの夏景色の動画をあらかじめ蓄積し、除雪時にはその道路の夏の景色を参考情報として活用しようというものです。除雪車の走行中の位置情報をもとに、その場所の夏景色を同期させてディスプレイ上に表示させることで、雪に埋もれている障害物などを予見することができます。

豪雪地の除雪の安全に対する課題解決を考えた島根大学の藤原巧さん
豪雪地の除雪の安全に対する課題解決を考えた島根大学の藤原巧さん

これは日頃雪が降らない太平洋側の都市部ではピンと来ないかもしれませんが、豪雪地帯に住む筆者にとっても切実な問題です。冬季の青森市は市街部でも積雪が1mほどあります。このため道路脇には雪が積み上げられ、その白い雪の塊の中にどんな障害物が潜んでいるか分かりません。雪だから大丈夫だろうとクルマで突っ込んだりすると、その中に消火栓があったりしてクルマも大破したりします。こうしたトラブルを避ける画期的なアプリ作品とお見受けしました。

このほかにも魅力的なアイデアに満ちたアワードですが、このイベントは創設当初から電子情報通信学会に加入する中国地方の学生会員が役員となり、これに学生会顧問を務める大学教員が協力し運営されてきました。今年の多数の学生会スタッフを取りまとめ、このイベントのトップとして仕切ったのは広島市立大学大学院情報科学研究科修士2年生の長谷弘美さん。イベント終了後、一言コメントをいただきました。

「これまでもスタッフとしてこのイベントに関わらせていただきましたが、色々なアイデアが応募されてくるので楽しいです。総選挙があった年は選挙に関わるアイデア、最近ではオリンピックが迫ってきたこともありスポーツに関するアイデアなど、時流に乗ったアイデアが重要だなと感じました。このフレッシュITあわ〜どは、企画から振り返ると半年以上にわたるイベントであり、その進行や手順などはこれから社会に出て役立つことも多く有意義です」
とのこと。

今年このイベントを仕切った学生代表の長谷弘美さん(広島市立大学大学院)
今年このイベントを仕切った学生代表の長谷弘美さん(広島市立大学大学院)

こうして大学を超えた多くの学生がイベントを仕切り、それを代々継承して成功させているのはすごいことだと思いました。作品審査は学生会のスタッフを務める学生のほか、地域の各大学の教員なども審査員となり、今回の最終審査会ではポスターセッションを通じて多くの議論も弾む素晴らしいイベントでした。

ただ、イベントに関わるのは大半が情報系の学生と教員なので、技術的な議論は盛り上がりますが、ビジネスモデルの検討はもう少し工夫が必要と感じました。何より素晴らしいアイデアが山ほどあるのに、それをビジネス化できる人たちがこのイベントに招けていない印象です。

ここにより多くのICT企業関係者も加わると、良いアイデアの実用化に弾みがつきそうです。来年もこの時期に開催される予定ですし、最終審査会はどなたでも観覧可能なようです。
ぜひ在京のICT関係者もお越しになりませんか?

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