大型化とワイド化が進んだここ数年のスマートフォンのディスプレイ。いまや6インチの画面サイズも大きいとは感じられず、7インチ弱の特大ディスプレイを搭載した製品も増えている。これは画面の縦横比が長くなったことで、大きい画面サイズでも片手で持てる大きさを保持できるようになったからだ。ソニーのXperia 1やXperia 5は縦横比が21:9と、映画館のスクリーンとほぼ同じ形のディスプレイを搭載している。
この大型化のトレンドの次として、ディスプレイを本体の側面まで回り込ませた製品が中国メーカーから次々に登場している。正面だけではなく側面も表示エリアにする、そんなスマートフォンが数年後には当たり前になりそうだ。

角を曲げたディスプレイはサムスンが長年「エッジディスプレイ」としてハイエンドモデルを中心に採用してきた。このエッジディスプレイはファーウェイなどほかのメーカーもサムスン(サムスン・ディスプレイ)から有機ELパネルを購入し自社製品に搭載している。とはいえサムスン以外の採用例はまだそれほど多くはない。
一方、2019年後半になって次々と出てきた製品は、「ウォーターフォールディスプレイ」、すなわち滝の流れが落ちるように、ほぼ直角にディスプレイが折れ曲がった側面構造をしている。エッジディスプレイはその外側を支えるフレームがまだ見えていたが、ウォーターフォールディスプレイはそれすらほとんど見えない。すなわち正面から見ると左右にベゼルの無い美しい外観を実現できるのだ。

またギャラリーなどで画面を左右にスワイプすると、まるで本体の横から写真が巻物のように出てくる様は見ていて気持ちいい。視覚的にディスプレイが永遠に続いているような効果も与えてくれるのだ。なおスマートフォンのディスプレイは表面にタッチセンサーを内蔵しているが、側面部分は感度を調整して誤操作が起きないようにしている。側面も表示エリアとなると握ったときにその部分が反応してしまいそうだが、そのあたりはしっかりと調整されている。

側面がディスプレイであることから、タッチセンサーとして使うことも考えられている。たとえば側面を指先で二回タップすれば、ボリュームボタンが画面上に表示されるのだ。このあたりもうまく設計が考えられており、一回ではタッチ感度の調整上アクションを起こすことは難しいが、誤って二回タップすることは考えにくい。このように側面までをディスプレイにすることで、ボリュームボタンの無いすっきりしたデザインの端末を作ることもできるのだ。
実は側面にボタンの無いスマートフォンはVivoなどが試作を行っていた。HTCやソニーのスマートフォンも、側面のフレームをタップしたり握って圧力を加えることで機能を呼び出すスマートフォンを作っている。しかし側面のフレームに感圧センサーを埋め込むのは調整が難しく、コストも割高になってしまう。
ウォーターフォールディスプレイもコストそのものは高くなるため、フレームにセンサーを入れる場合と端末原価は変わらないかもしれない。しかしいずれウォーターフォールディスプレイは価格が下がっていくだろうし、本体にセンサーを埋め込むよりも、ディスプレイのタッチ操作のほうが様々な拡張性が期待できる。ゲームコントローラーやカメラのシャッターなど、側面タッチ機能を備えたスマートフォンがいくつかあるが、それらもいずれはウォーターフォールディスプレイを採用していくかもしれない。

現時点でウォーターフォールディスプレイを採用したモデルはまだ数機種のみ。しかしファーウェイはサムスンのエッジディスプレイからウォーターフォールディスプレイ(ファーウェイは「ホライゾンディスプレイ」と呼ぶ)へ乗り換えており、ウォーターフォールディスプレイによる端末機能の向上に自ら期待をかけている。来年春にはカメラフォン「P」シリーズのモデルチェンジが予定されているが、側面を使った新たな機能が搭載されるだろう。

さてウォーターフォールディスプレイの究極系と言えるのがシャオミの「Mi MIX Alpaha」だ。なんとディスプレイが表から裏側に回り込んでいるのである。そのため側面部分に電波感度や時刻、通知などをフルに表示することもできる。
Mi MIX Alphaの実機を触った人はまだごく少数しかおらず、実機はシャオミの店舗などにショーケースに入って展示されているだけだ。それでもこの全く新しい製品をを外から見るだけで「スマートフォンの側面や裏面が表示領域でないのはおかしい」と思えてしまうほどだ。2020年のスマートフォンは、今までとはまた違う形に進化していくのである。
