シャオミが日本に上陸、ファーウェイやアップルを脅かす存在になるか|山根康宏のワールドモバイルレポート

シャオミが日本に上陸、ファーウェイやアップルを脅かす存在になるか|山根康宏のワールドモバイルレポート

シャオミ(Xiaomi)

スマートフォン販売台数で世界シェア4位(2019年第3四半期、IDC)を誇るシャオミ(Xiaomi、小米科技)が日本市場に参入する。シャオミは低価格を武器に新興国を中心に海外展開を広げてきたが、ここ数年はハイエンド機種を引っ提げてヨーロッパの先進国にも参入を果たした。そして2019年も終わりになってついに日本への参入を果たすことになる。これで日本のスマートフォン市場はこれまでにはない激戦が繰り広げられるようになるかもしれない。

シャオミのスマートフォンは価格が売りではあるものの、「安かろう・悪かろう」の製品ではない。日本投入の「Mi Note 10」は1億800万画素のカメラを搭載しており、カメラベンチマークのDXOMARKでも最高点を取っている(中国版の「CC9 Pro」。ファーウェイ「Mate 30 Pro」と同得点)。上位モデルの「Mi Note 10 Pro」は649ユーロ(約7万8000円)と決して「安価」ではないものの、カメラスペックを考えると割安感があるだろう。

1億画素カメラを搭載した「Mi Note 10」
1億画素カメラを搭載した「Mi Note 10」

とはいえ「iPhoneが実質無料」のように、通信キャリアが端末割引販売を行う日本では、端末のパフォーマンスを価格に反映して売ることは難しかった。いくらMi Note 10 Proが10万円を切ろうが、以前ならばドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社がこぞって2年契約とオプションサービスを付けることでiPhoneの価格を大幅に下げて販売し、SIMフリーで販売される端末の購入メリットを無くしていた。

しかし10月以降からの分離プランの投入により、通信キャリアは端末割引が制限されることになった。たとえば10万円以上の端末を半額で売ることは事実上難しくなったのだ。消費者サイドから見れば端末価格が実質値上がりするが、それは従来が不公平な市場構造だったためであり、長い目で見れば分離プランの導入は消費者にメリットをもたらす。通信料金に端末割引の原資が乗らなくなったため、例えば2年契約の違約金も1000円になった。1000円なら2年契約と言いながらいつでも解約できる。2年契約はあるようで無くなったも同然だ。分離プランは「契約縛り」を実質的になくしてくれたのだ。

そもそも日本は参入したくてもしにくい市場だった。しかし「端末をまっとうな価格で販売できる」市場になったことで、参入の敷居は大きく引き下がったのだ。そして何よりもメーカーにとって日本は魅力ある市場なのだ。なぜなら日本ほど製品品質にこだわる消費者のいる国はいないからである。これは他の海外から参入したメーカーも必ずいうことだが、それはお世辞ではない。日本で端末を販売するということは、端末の性能だけではなく品質、そしてアフターケアも含めた「製品に対する総合的なユーザー体験」という貴重なデータを得ることができるのである。

例えば製品のパッケージのへこみや汚れですら日本人は気にする。パッケージは輸送時の保護用でもあるのだが、そこにこだわることで製品のパッキングや輸送時の取り扱いにも気を配る事ができるようになるのである。アップルの製品を買った時に誰もが満足できるのは、パッケージから気を使った製品になっているからである。たとえ他国市場ほど販売数が伸びなかったとしても、日本の消費者から得られるフィードバックは貴重なデータとして今後の製品開発に反映することができるわけだ。

海外販売のMi Note 10のパッケージ。これも日本の消費者には重要な「製品の一部」だ
海外販売のMi Note 10のパッケージ。これも日本の消費者には重要な「製品の一部」だ

それではシャオミに日本市場での勝算はあるのだろうか?分離プランの投入で実質的に端末価格が引き上げられた日本では端末の買い控えが一時的に起き、SIMフリーの高価な端末は売りにくいかもしれない。しかし通信キャリアと紐づけ不要の製品で、その性能が優れていればお金を払ってでも買いたいと考える消費者は日本にも一定層いるはずだ。

現時点で日本で販売されているスマートフォンのうち、カメラ性能に優れているファーウェイの「P30 Pro」やサムスンの「Galaxy Note10+」はドコモやKDDIと契約しなくては購入できない。契約するためにはキャリアの店に行かねばならないし、すぐに解約するとしても新規やMNP移転料、最低の基本料金がかかる。スマートフォンのカメラだけを使おうと2台目に買おうと思っても「面倒」なのだ。

しかしSIMフリーで優れたカメラフォンが販売されれば、家電量販店でその場でお金を払うだけで購入できる。もちろんメインに使うためにMNPでキャリアを移動したり、あるいは2台目用にとMVNOのSIM契約をする人もあるだろう。しかしそれらは端末を買った後からやってもいいことであり、「キャリアの店に行かなくては端末が買えない」のではない。

分離プラン導入前は、大手キャリアで販売している端末ならば、キャリアで契約することで割安に買うことができた。しかし分離プラン導入後は、キャリアで売られるハイエンド端末の価格が正規の値段に近くなり、同等のスペックで家電量販店などで販売されるSIMフリースマートフォンとの価格差がなくなる。ドコモで販売されるファーウェイP30 Proは約9万円だが、これなら日本でSIMフリーとして単体販売されるシャオミのMi Note 10でも十分競争力がある。

1億画素カメラは日本の消費者にとっても気になる存在だろう
1億画素カメラは日本の消費者にとっても気になる存在だろう

このように分離プランの登場でシャオミはSIMフリー端末を堂々と日本に出し、すでにSIMフリー市場とキャリア市場でカメラフォンの代名詞となっているファーウェイと真っ向から勝負することが可能になったのだ。もちろん日本ではまだまだiPhoneがメジャーな存在だろうから、シャオミのスマートフォンが販売台数のシェア上位に入ることはしばらくないだろう。

しかしファーウェイのスマートフォンの知名度が上がったのは、価格もあるだろうがカメラ性能が認められたからでもある。Mi Note 10の1億画素カメラが日本の消費者に認められれば、シャオミは「安い中華フォン」ではなく「カメラに優れたハイエンドフォン」と認知され、次に出てくる製品にも期待が集まるようになるだろう。シャオミが今後どのようにMi Note 10を日本でプロモートしていくのか、その展開手法が楽しみである。

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