今年も数多くのスマートフォン新製品が登場し、市場をにぎわせてくれるだろう。右も左も似たようなデザインだったスマートフォンも、最近ではカメラの配置に工夫したり、折りたたみ形状のモデルが出てくるなどバリエーションが増えている。しかしそれだけではなく、様々な機能を持ったモバイル端末も存在するのだ。
今回は1月にラスベガスで開催されたCES 2020で気になったスマートフォンやモバイル製品、5機種を紹介しよう。
縦に折り曲がるモトローラ「Razr」
モトローラのRazrは2000年代頭に発売され、日本を含む全世界で大ヒットした携帯電話のリバイバルモデルだ。縦に折れ曲がるディスプレイを採用し、開くと6.2インチディスプレイのスマートフォンとなる。
折りたためるデザインが人気になりそうだが、スマートフォンとしても普通の大きさなので使い勝手も高い。
10万円を超える価格はプレミアムモデルとして考えれば妥当なところだろうか。

サムスンの横折り式スマートフォン「Galaxy Fold」が2019年4月に登場した時、ディスプレイが破損しやすいことから発売は延期となり、9月にようやく改良品が出てきた。ではRazrのディスプレイ強度は大丈夫だろうか?
実機を触ってみると、たしかにガラスに覆われたディスプレイを採用する一般的なスマートフォンよりも、Razrのディスプレイ表面は樹脂で覆われているため「柔らかい」印象を受ける。指先でタッチする程度なら問題ないが、爪を立てて強く押しこめばディスプレイに傷が入ってしまう。
とはいえ閉じればポケットにも収まるコンパクトな大きさは持ち運びやすく、閉じたまま本体を握って振れば自動的にカメラが起動してすぐ写真が撮れる機能も搭載。なおこのジェスチャー機能はこれまでのモトローラのスマートフォンにも採用されてきたが、折りたたみ型スマートフォンの登場でうまく活用された格好だ。
カラー電子ペーパースマホは電子コミックや教育用途に最適
中国家電メーカー、ハイセンスが展示したスマートフォンの試作モデルはディスプレイに特徴がある。世界初のカラー電子ペーパーを採用したスマートフォンなのだ。電子ペーパーはこれまでほとんどがモノクロ表示で、モバイル製品ではアマゾンのKindleなど電子ブックリーダーに採用されてきた。
ハイセンスのモデルはその電子ペーパーをカラー化したディスプレイを採用し、カラフルな表示が可能になっている。

電子ペーパーはディスプレイそのものが光るのではなく、ディスプレイに光があたることで表示を見ることができる。まさしくペーパー=紙と同じだ。
電子ペーパーはディスプレイの内側にあるマイクロカプセルに電圧を加えることで画面表示を行うため、動画など動きのあるコンテンツの表示では画面書き換え速度が追いつかずあまり向いていない。そのためカラー電子ペーパーのスマートフォンを、普通のスマートフォンのように使うのはやや難しい。
しかしカラーのイラストの表示などは問題ないため、電子コミックや絵本、あるいは教育向けのコンテンツの利用などに向いているだろう。なによりもディスプレイが発光しないため目に優しいのも電子ペーパーの特性だ。小学生や中学生など、成長期の子供向けスマートフォンに適していると言えるだろう。
ディスプレイを“触って”表示させるタブレット「Tectile Pro」
ただの「板」の上にうっすらと絵が浮かび上がっているこの製品は、れっきとしたタブレットだ。PCLの「Tectile Pro」は世界初の視覚障がい者向けのタブレットなのである。
板の上には縦56個、横40個のピンが並んでおり、このピンを上下に動かすことで画面表示を行う。ピンは0.3秒で動くので反応速度は速い。

ピンのディスプレイの上にあるボタンを使い、点字をそのまま入力することができる。入力した展示はすぐさまピンに情報が送られ、点字が表示できるのだ。他の人がTectile Proを持っていれば「点字入力→相手のTactile Proの画面にその展示を表示」することもでき、点字を使ったチャットも可能だという。
またAndroidスマートフォンやタブレットと接続して、スマートフォンのブラウザで表示された文字をTectile Proの画面に点字で表示したり、イラストや絵をTactile Proの画面上にピンを使って疑似的に表示することもできる。視力に障がいがある人はスマートフォンを音声で使うことが多いが、相手に声ではなく文字(点字)でメッセージを送りたいときや、絵を見たり表現したいときにこのTectile Proは役立つわけだ。
一般消費者向けの製品ではないが、このようなタブレットが増えていけば、コミュニケーションの円滑化や、社会活動への参加もよりスムースになっていくだろう。
全世界でメッセージが使える衛星メッセンジャー「Spot X」
衛星電話のグローバルスターは地球上のほぼすべてのエリアをカバーしており、携帯電話回線が使えない秘境やへき地でも使うことのできるサービス。そのサービスに対応した「Spot X」はアメリカの電話番号を利用できる衛星回線を利用するメッセンジャー。つまりアメリカのスマートフォンの感覚で世界中の人とテキストメッセージをやり取りできるのだ。

本体に太いアンテナが付いているのは直接人工衛星と電波のやり取りをおこなうためだ。そのため室内では電波は入らない。なかなか触れない実機(ブース担当者が実際に使っているもの)をCES 2020の会場で手にすることができたが、電波は拾っていない状態だった。「どこにいるかを気にせず、空さえ見える状態ならば」使え、ローミング料金もかからずメッセージは1通100円以下で送信できるため、いつでも連絡を確実に取らなくてはならない、という特殊な仕事をしている人には必須な端末といえるだろうか。
丸いディスプレイのタブレット?「Cycle Phone」
dTOORが開発中のスマートフォン「Cycle Phone」はディスプレイが円形をした不思議なデザインをしている。サイズはスマートフォンとタブレットの中間くらいであり、片手で持つより両手で持ちたくなる大きさだ。ヘッドフォンジャックを左右に備えており、2人で1台を共用して音を聞いたりビデオ鑑賞するのにも向いた製品である。

ディスプレイを丸くすることで持ちやすくなったり、二人での共有がしやすいというメリットがあるそうだ。
アンテナマークなどが見えないためユーザーインターフェースの最適化は必要だが、既存のスマートフォンのデザインに飽き足らない人にも面白い製品に見えるかもしれない。