2020年に入ってから発表される各社のフラッグシップスマートフォンは5G対応が標準となりそうだ。2月と3月、ファーウェイ、シャオミ、OPPOなど各社の新製品発表会では5Gの性能についても多くの時間が割かれたほどだ。
世界初の5Gスマートフォンは2019年4月に発売となったサムスンの「Galaxy S10 5G」だった。それから現在までの約1年間に、市場では50機種もの5Gスマートフォンが登場している。その中には日本では全く知られていないメーカーの製品も存在するし、意外なメーカーがアメリカやヨーロッパなどの先進国で5Gスマートフォンを販売している。5Gスマートフォン市場だけを見ると「1位サムスン、2位ファーウェイ、3位アップル」という順位は大きく変わるのだ。
例えばアップルは5Gスマートフォンをまだ出していないため、現時点の5G端末市場では存在感は皆無だ。一方シャープやソニーは日本の5Gサービス開始に合わせて2月に5Gスマートフォンを発表、日本のみならずグローバル市場でも十分通用する高いスペックを誇っている。シャープは4Gスマートフォンをヨーロッパ市場にも出しているが、今後5Gスマートフォンも販売されるかもしれないだろう。シャープの存在感が一気に高まる期待ももてる。

実は2019年にヨーロッパで5Gが始まった際、スイスのキャリアは中国メーカーの5Gスマートフォンをいち早く導入した。スイスコムはOPPOの「Reno 5G」を、サンライズはシャオミの「Mi MiX 3 5G」を採用。どちらもスイスでは無名のメーカーだったが、最新の5Gに対応するだけではなく高いカメラスペックなどから一定の知名度を得ることに成功した。
シャオミもOPPOもその後4GスマートフォンやIoT製品をスイス市場に投入したが、5G製品を国内キャリアに投入している点を大きなアピールポイントにしている。5G開始から1年がたち、スイスではこの2社の名前をなんとなくでも聞いたことのある消費者が増えており、それだけでも大きな成果と言えるだろう。

このように5Gの開始は4G時代までの各スマートフォンメーカーの力関係を一旦リセットさせ、各社ほぼ横一線で同じスタートラインに並ぶことを可能にした。ソニーもシャープもこれからの5G新製品の展開次第では、シェア上位に食い込むことも充分可能なのだ。
とはいえ大手メーカーは各国の5G開始に合わせ、すでに積極的に5Gスマートフォンを投入している。調査会社OMDIAのレポートによると、2019年の全世界の5Gスマートフォンの出荷台数は1470万台。ちなみにこの数は全スマートフォン出荷台数のわずか1.1%、100分の1という数字だった。この中で最大数を取ったのはサムスンでシェアは49%、約半数となる。2位のファーウェイは27%、3位はVivoで12%、OPPOは4位で5%だった。
サムスンとファーウェイが早くもシェア1位と2位の座に就いたものの、Vivoが12%で3位に入るということは、やはりどのメーカーにもシェア上位に食い込める可能性があるということになる。たとえばOPPOから分離したハイエンドスマートフォンメーカー、OnePlusはアメリカのキャリア、スプリントに5Gスマートフォンを投入しており、1000ドルを切る価格とデザインの良さから現地では人気になっているという。

そして日本ではソフトバンクの5G向けに、シャープ、LGというおなじみのメーカーに加え、OPPOとZTEの5Gスマートフォンも発売になる。サムスンやソニーを出し抜いてOPPOとZTEが5Gスマートフォンを出すとは、時代も大きく変わったと感じさせる。日本市場でも5Gの開始によりスマートフォンのシェアが変わろうとしているのだ。
韓国でもアップルの5G対応の遅れで、5Gスマートフォンを大々的に投入したLGのスマートフォン全体の販売数が高まっているという。ユーザーが5Gを望むかどうかはさておき、通信キャリアとしては設備投資に多大な費用をかけた5Gをユーザーに使ってもらわなくてはならない。通信キャリア側も5Gスマートフォンの販売をより強化する動きが増えているのである。

おそらく今年9月にアップルは5G対応のiPhoneを発表するだろう。そうなれば世界中の消費者の5Gに対する関心は一気に高まるだろうし、アップルがいきなり5Gスマートフォン市場でシェアトップを奪い取るかもしれない。5Gの普及が進む今年のスマートフォン市場はエキサイティングな1年になりそうだ。