数年前は数十社あった中国のスマートフォンメーカーもここにきて集約が進み、力のない企業は大手に飲み込まれるか事業を断念して市場から消えてしまった。その一方では生き残った大手メーカーがブランド強化に乗り出しており、サブブランドの分社や新しいブランドの立ち上げを強化している。
日本でもここ数年で中国メーカーの姿がすっかり当たり前のものとなった。だがまだメジャーな存在になり切れていないメーカーもある。
OPPOはこれまでSIMフリースマホを多数展開し、MVNOキャリアでも最新モデルが採用されてきた。しかしドコモなど大手キャリアからの販売実績が無いため、OPPOの名前を知らない人もまだ多いだろう。

しかし2020年3月末から日本でも始まった5Gサービスで、OPPOがついにメジャーデビューを果たすことになった。KDDIからは「Find X2」、ソフトバンクからは「Reno 3」がそれぞれ登場予定だ。これで日本でもOPPOの名前を聞く機会が今まで以上に増えるだろう。
一方海外では4月13日に新しいスマートフォン「OPPO Ace2」を発表した。OPPOのスマートフォンは2019年から「Reno」「Find」「A」の3つのラインにほぼ集約し、日本でも「Find X」や「A5」などが販売されている。
今回登場したAce 2は、前のモデルが「Reno Ace」でRenoシリーズの一因だった。このReno Aceは90Hzという画面の高速動作が売りで、高速ゲーム時に画面の書き換え速度も速くゲーム利用に適したモデルだ。一方でRenoはカメラを強化したミッドハイレンジモデルであり、ターゲットユーザーはRenoとReno Aceで異なっている。

そこで2020年からはReno AceからRenoの名前を外し、Aceという単独の名称となった。この背景にはASUSの「ROG Phone」やシャオミ傘下の「Black Shark」など、多数のゲーミング特化スマートフォンが各社から出てきており、他のスマートフォンとは異なるカテゴリの製品として認知されてきたからだ。
OPPOはAceというラインを、ゲーミングスマートフォンに特化した製品にしようとしているのだ。
これでOPPOのラインナップはハイエンド・フラッグシップのFindと並ぶ、ゲーミング対応のAce、その下にカメラ強化のReno、コスパ重視のAと、それぞれに特色を持たせスマートフォンの販売数増を狙おうとしている。だがOPPOは自社ラインナップの細分化だけではなく、分社化した別会社の製品も強化することでグループ全体の販売数を伸ばそうと考えているのだ。
OPPOから分社したメーカーは、OnePlusとrealmeという2社がある。OnePlusはハイエンド志向のモデル展開をしており、欧米市場ではオンライン販売を早くから始めたこともあって知る人ぞ知るメーカーになっている。
アメリカではTモバイルやベライゾンなど大手キャリアにもスマートフォンを納入しており、5Gスマートフォンもすでに採用されている。

OnePlusの製品なら日本市場でそのまま出してもハイエンド志向な市場だけに充分受け入れられそうだ。日本で5Gの普及が進めば、OnePlusのスマートフォンが上陸する可能性は大いにありそうだ。
現在OnePlusはOPPOの上位モデルよりさらに上のスペックのモデルを出すことで、大量販売は見込めないものの特定層から支持を受け一定の売り上げを確保できるメーカーにまで成長した。またマクラーレンとコラボしたモデルを出すなど、ハイブランド化にも力を入れている。
なおOPPOのほうはFindシリーズでランボルギーニとコラボ。上位モデルでスポーツカーメーカーとどちらもコラボしているのは同じ血の流れる企業だからだろうか。
一方、realmeは元々OPPOの別ブランドとして2018年にスタート。当初はインド向けに超格安スマートフォンを投入した。これはシャオミが低価格モデル「RedMi」を立て続けに投入して成功して一気にシェアを奪い取った動きに倣ったものだ。シャオミはこのRedMiがインドのスマートフォン売り上げランクの上位に入り、2018年にはサムスンを抜いてインドでシェア1位になった。
realmeはOPPOの低価格モデルかそれより下のスペックの製品を展開していたが、インドでも人気になるとrealmeというブランドそのものの認知度が高まり、やがてカメラを強化した製品などより高性能なモデルも投入していった。そしてインド以外の国でも人気が出るようになったことから、別会社としてOPPOとあえてバッティングするような製品も出すようになったのだ。
realmeはヨーロッパでもスマートフォンを展開しているし、中国では5Gに対応した最新モデルも投入した。

このように製品ラインナップの拡大と分社化を行ったOPPOとOnePlus、realmeのスマートフォンをおおざっぱに分類すると、
・ハイスペック:OPPO Find、OPPO Ace、OnePlus、Realme X
・ミッドハイレンジ:OPPO Reno
・ミッドレンジ:OPPO A、realme
・エントリー:OPPO A、realme C
といった具合に、広いレンジに複数のブランドから製品を展開していることがわかる。OPPOとrealmeから同じような製品が出てきても「OPPOにするか、シャオミにするか」とライバル製品を買うかどうか悩んでいる客を、「OPPOかrealme、どちらにしよう」とグループの製品に目を向けさせれば、結果としてグループ全体の売り上げは高まる。
そしてOPPO、OnePlus、realmeはメインターゲット層をわけており、それぞれにファン層を開拓することでユーザー層のすそ野を広げている。
ライバルのシャオミやVivoも同様な動きを見せており、中国メーカーの勢いはこれからさらに増していくだろう。