海外に続き日本でもファーウェイP40シリーズが発売になる

新型スマホを次々投入するファーウェイを悩ますGMS問題|山根康宏のワールドモバイルレポート

ファーウェイの5Gスマートフォン「P40 Pro 5G」「P40 lite 5G」が日本でも発表された。P40 Proはカメラスペックと価格。一方のP40 lite 5Gは税抜き3万9800円と、日本で発売される5Gスマートフォンの中でも群を抜く安さが魅力だ。
この2機種に加えて税抜き2万4800円という格安モデル「P40 lite E」も発表。日本のスマートフォン市場でいずれの機種ともに大きな話題となりそうだ。

海外に続き日本でもファーウェイP40シリーズが発売になる
海外に続き日本でもファーウェイP40シリーズが発売になる

通信キャリアを通さずにスマートフォン単体だけで買えるSIMフリー端末市場で、ファーウェイはここ数年高い人気を誇っている。特に「lite」シリーズは価格の安さが群を抜いており、ライカカメラを搭載した上位モデルと同じファミリーに属する製品ということでイメージも悪くない。格安SIMでおなじみのMVNOキャリアにとっても、ファーウェイのliteモデルは新規ユーザー獲得の武器となっている。

だが今回発表になった新製品は、もしもMVNOキャリアが売るならば顧客にしっかりした説明が必要となる。3つのスマートフォンはいずれもGMS(Google Mobile Services)すなわちグーグルのサービスに対応していないからだ。これはアメリカによる制裁を受けてのもので、2019年秋以降の新製品はGMSを搭載することはできなくなっている。

実はファーウェイはこの3機種の発表のわずか1週間前に「nova 3 lite+」を発表しているが、こちらは昨年発売されたモデルの再投入版となるためGMSに対応している。立て続けに発表された4つの製品のうち、1つだけがグーグル対応、残りの3つがグーグルに非対応なのだ。これでは日本の消費者も混乱してしまうかもしれない。

海外では2019年秋以降に発売されたモデルのほぼすべてがGMS非搭載となったため、ファーウェイ独自のサービスであるHMS(Huawei Mobile Services)対応となっている。WEBブラウザはグーグルのChromeではなくファーウェイ独自のモノを搭載、Gmailやグーグルマップはインストールされていない。さらにアプリはグーグルのPlay Storeではなくファーウェイ独自のAppGalleryを利用する。このAppGalleryに登録されているアプリはグーグルPlay Storeとは異なるもので、日本人に必須といえるアプリはLINEがようやく対応、Twitter、Instagram、Facebookは対応していない。

AppGalleryにあるソーシャルアプリ。LINE以外にメジャーなものは少ない
AppGalleryにあるソーシャルアプリ。LINE以外にメジャーなものは少ない

このため海外では2019年後半からファーウェイのスマートフォンに対する購入意欲が低下してしまっているようだ。同年9月発表の「Mate 30」シリーズは左右を落としたホライゾンディスプレイの搭載や円形に配置した高画質カメラ、合皮張りボディーモデルも存在し5Gにも対応するなどハードウェアの魅力は非常に高い。しかしGMSが使えないことから購入に二の足を踏む消費者も増えてしまった。

日本では3月に「日本初の5Gスマートフォン」として「Mate 30 Pro 5G」が発表されたが、購入者の評価はネットを探してもあまり多くない。5Gを利用するにはドコモやKDDI、ソフトバンクとの契約が必要だが、5Gスマートフォンはキャリアで販売されている他社品を購入したほうが本体価格の割引を受けられる。また新型コロナウィルスの影響で5Gを契約しようとする動きも足踏み状態が続いているため、Mate 30 Pro 5Gを購入する消費者は少なかったのだろう。

日本初の5Gスマホ、Mate 30 Pro 5G。だが購入者のレビューは少ない
日本初の5Gスマホ、Mate 30 Pro 5G。だが購入者のレビューは少ない

GMSが不要で国内独自サービスが多数展開されている中国では、ファーウェイは毎月数機種のスマートフォンを発表しており、日本円で3万円を切る低価格モデルも投入している。しかし中国以外ではGMSを搭載せねば消費者の反応は思わしくなく、それらの製品を大々的に海外展開するのも難しい。

日本で販売される低価格な5Gスマートフォンも、同じ中国のシャオミが海外で「Mi 10 Lite 5G」を発売しており、日本でもKDDIが採用している。海外では379.9ユーロ、約4万7000円であり、日本でも同等価格で出てくればファーウェイP40 lite 5Gの強力なライバルとなる。もちろん日本を含む海外向けのシャオミのスマートフォンはGMSに対応している。

シャオミはファーウェイと同じ6月2日にスマートフォン2機種を発表し、下位モデルである「Redmi Note 9S」は税込み2万4800円という超低価格で登場する。P40 lite Eは税込みでは2万7280円となるためシャオミのほうが安い。しかもカメラはシャオミがマクロを含む4つ、ファーウェイは3つだ。ディスプレイもシャオミが6.67インチ2400×1080ピクセルに対し、ファーウェイは6.39インチ1560×720ピクセルと小さくて解像度も低い。

Redmi 9Sの兄弟機、Redmi 9 Pro。超低価格でも大画面と高画質カメラを搭載
Redmi 9Sの兄弟機、Redmi 9 Pro。超低価格でも大画面と高画質カメラを搭載

シャオミは2019年12月に日本に参入したものの、1億800万画素カメラの「Mi Note 10」が一瞬話題になっただけで、その後動きは止まったままだった。ここで攻勢をかけようとするタイミングとファーウェイのグーグル非対応端末の投入タイミングが重なってしまったことで、シャオミの製品のほうに優位性が感じられる結果となってしまった。

SIMフリー市場ではOPPOも低価格モデルを強化しており、グーグルの使えないファーウェイから低価格モデルの代表の座を奪い取ろうとしている。そしてこの動きは日本だけではなく、アジアやヨーロッパでも活発になっている。

カメラ性能のベンチマークである「DXOmark」でファーウェイP40 Proはメインカメラのみならずフロントカメラでも全スマートフォンの中で1位の座に輝いている。これはファーウェイにとって大きな武器だ。メジャーアプリが使えないところはブラウザでの利用を促すなど、非GMSスマートフォンの使い方をユーザーにしっかりと認知させることですぐれたハードウェアの拡販を進めるべきだろう。

一方、低価格モデルは価格に敏感な層をターゲットにすることから、さらなる低価格モデルの投入や、nova 3 lite+のようにGMSの使える過去モデルの再投入も必要だろう。ハイエンド製品だがドイツでは2019年春のフラッグシップカメラフォン「P30 Pro」を2020年4月に「P30 Pro New Edition」として新たに発売している。

スマートフォンはハードウェアだけでは使えず、使い慣れたアプリが無くては消費者は買い換えをためらってしまう。今後の新製品へのハードウェア開発も引き続き行うことは必要だが、HMSの機能強化やAppGalleryへのアプリ登録数を増やすなど、ファーウェイはソフトウェア面に今までの10倍、いや100倍以上の開発リソースを投じるべきだろう。

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