スマホ出荷の半分以上が5Gモデルになった中国、5G大国の道をひた走る|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマホ出荷の半分以上が5Gモデルになった中国、5G大国の道をひた走る|山根康宏のワールドモバイルレポート

中国の情報産業の監督機関である中国工業情報化部は、毎月国内の携帯電話・スマートフォンの出荷台数の統計も出している。2020年6月の統計結果を見ると、携帯電話とスマートフォンの全出荷台数は2860万台だった。このうち5Gスマートフォンは1750万台で、全体の61%となった。つまり中国ではついに、スマートフォンの半数以上が5Gという時代になったのだ。

2019年11月に始まった中国の5Gサービスは、他国との非協調路線を走り独自の道を強引に進めた3G(TD-SCDMA)、4G(TD-LTE)の反省もあり、海外と歩調を合わせた通信方式を採用して国内の通信産業のグローバル展開を支援している。3G・4G時代はすでに海外先進国が先にサービスを先に始めており、中国企業が中国優位な規格で後から海外展開することはむずかしかった。

しかし5Gでは各国がほぼ横並びの状態でスタートを行っており、中国が5Gサービスを開始した時点で海外で5Gの利用者が目立っていたのは韓国の約400万人。韓国は2019年末に3キャリアの5G加入者数が500万に達した。

5Gサービスで当初は世界の先頭を走った韓国。繁華街では5Gのプロモーションをよく見かける
5Gサービスで当初は世界の先頭を走った韓国。繁華街では5Gのプロモーションをよく見かける

ところが中国ではシェア1位キャリア、中国移動(チャイナモバイル)1社だけで2019年末の5G加入者数は255万に達し、2020年に入ると1社だけで韓国の総5G利用者数を一気に抜いた。2020年5月末時点の中国移動の5G契約者数は約5561万。韓国3社をぬいたどころか、日本の人口の半数近い数字に達している。同社の2020年5月単月の5G加入者数は1000万を超えた。

中国の5G加入者数が増えているのは、冒頭で書いたように5Gスマートフォンの数が急激に増えているからだ。2020年に入ってから各メーカーの最新モデルは5Gに対応しており、4Gスマートフォンは低価格モデルなど目立たないものになっている。5Gスマートフォンの新機種の数も、1月:8機種、2月:11機種、3月:24機種、4月:22機種、5月:16機種、6月:24機種と、今年に入ってから100機種以上となっている(同一モデルのメモリ構成違い製品も含む)。

毎週のように発売になる中国の5Gスマートフォン。パッケージも多彩だ
毎週のように発売になる中国の5Gスマートフォン。パッケージも多彩だ

5Gが利用できるエリアも、3G・4G時代の反省から徐々に広げていくのではなく、サービス開始時から繁華街だけではなく住宅地も含め都市部では広いエリアをカバーした。日本の5Gが特定の場所でしか使えないという「点」展開しているのに対し、中国の5Gは北京市内の屋外を歩いていれば、普通につながるほど利用できる場所が多い。中国ではもはや5Gは日常的に使うことのできる、当たり前のサービスになっているのだ。

もちろん5Gスマートフォンを買う敷居も低くなっている。以前「クアルコムも参戦開始、2021年には1万円台の5Gスマホが登場するか」で書いたように、2000元(約3万円)を切る5Gスマートフォンが数多く販売されている。それに加えて通信キャリアも5Gスマートフォンの購入と5G契約をセットにすることで、スマートフォンを割り引いて販売している。

蛇足だがそうやって割引購入された5Gスマートフォンが転売され、新型コロナウィルスの影響下であっても香港に数多く輸入され販売されている。香港も2020年4月から5Gサービスが始まっており、一部の中国国内販売5Gスマートフォンは香港でも利用できるのだ。

香港で輸入販売される中国の5Gスマートフォン
香港で輸入販売される中国の5Gスマートフォン

さて5Gスマートフォンを次々と投入する各社の中で、最も活発な動きを見せているのがファーウェイだ。ファーウェイのラインナップと言えばライカカメラを大きくアピールする「Pシリーズ」、ビジネス向けの「Mateシリーズ」、またサブブランドの「Honor」がメジャーどころだ。しかし今やそのHonorもモデルが細分化されており、セルフィー特化だった「novaシリーズ」も3本目の柱になっている。

ファーウェイが2020年に入ってから中国で発売した5Gモデルはこんなにある(モデル名に「5G」がつくものは、5G表記を省略)。

・P40、P40 Pro、P40 Pro+
・Mate Xs
・nova 7、nova 7 Pro、nova 7 SE
・Enjoy 20 Pro、Enjoy Z
・Honor X10、X10 Max
・Honor 30、30 Pro、30 Pro+、30 Youth、30S
・Honor Play4、Play4 Pro

その数は19機種。半年でこれだけのモデルを出しているのだ。しかし「やりすぎ」とも思えるほど新製品を出しているのは、ファーウェイならではの特殊な事情があるからだろう。

アメリカ政府による制裁を受け、ファーウェイのスマートフォンはグーグルサービスの搭載ができなくなり、海外での販売が厳しくなりつつある。しかしスマートフォンの新技術の開発を続けていくためには、今の出荷台数を大きく下回るわけにはいかない。海外で売れなくなるかもしれない分を中国国内でカバーしなくてはならないのだ。

しかしそのファーウェイを後押しするように、中国は今年中に5G加入者数が2億を突破すると見込まれている。つまり5Gスマートフォンは出せば出しただけ売れる、という状況だ。ファーウェイは海外での逆風を国内のこの追い風に載せ替えることで危機を乗り切ろうとしている。6月に上海にオープンしたグローバルフラッグシップストアの存在は、国内販売強化の一環だ。

6月24日に上海にオープンしたファーウェイのフラッグシップストア
6月24日に上海にオープンしたファーウェイのフラッグシップストア

ファーウェイの動きに対し、当然ながら他社も競争力のある製品を出していく。その結果中国国内の5Gスマートフォン市場は他の国では見られないほどの激戦状態となっているわけだ。そしてその中から生まれた5G製品が海外市場にも投入され、海外の5G加入者を後押しする存在にもなるのである。

今年9月には5Gに対応したiPhoneが発表されるとみられている。ちなみに2019年の中国国内のiPhone出荷台数は2750万台だった(カナリス調査)。5Gの利用が当たり前の中国だけに、5G対応iPhoneは価格が高くても中国では大人気製品になることは間違いない。
5G iPhoneが発売になれば中国の5G加入者数はさらに増えていくだろう。

この記事が気に入ったら
いいね ! をお願いします

Twitter で

山根康宏のワールドモバイルレポートカテゴリの最新記事