P40 lite 5GとP40 lite Eはどちらが高性能?スマホの名前もそろそろ変化が必要|山根康宏のワールドモバイルレポート

P40 lite 5GとP40 lite Eはどちらが高性能?スマホの名前もそろそろ変化が必要|山根康宏のワールドモバイルレポート

2020年6月に日本でファーウェイが新製品「P40 Pro」「P40 lite 5G」「P40 lite E」の3機種を発表した。ハイスペックなカメラフォン、価格を抑えた5Gモデル、低価格なエコノミータイプとなかなかうまい品ぞろえと言える。
しかし製品名が従来よりわかりにくくなったと思われないだろうか?

従来のファーウェイは上位モデルが存在し、その低価格版として「lite」の名前の付いたモデルが存在した。しかし今回は「lite 5G」「lite E」と2つのliteモデルが存在する。家電量販店で「ファーウェイの新製品が出たから、安いモデルのliteを買おう」と思い、店頭ですぐに見つけたP40 lite 5Gを買った後、実は最安値のモデルがP40 lite Eであることを後で知った、なんてことも十分起こりうる。

P40シリーズはグローバルではさらに「P40 Pro+」「P40」「P40 lite」も存在する。つまりliteモデルは3機種もあるし、P40 Proの上にPro+というモデルもあるのだ。それぞれスペックと価格を変えることで6つのバリエーションを持たせ「業界トップクラスのカメラを搭載するP40シリーズ」の堂々たるラインナップを形成している。
だが製品に使っている名称を見ると「Pro」「無印」「lite」の3つしかない。6つのモデルをこの3つでカバーしているというわけだ。

P40はシリーズの中心モデルだが、日本では発売されていない
P40はシリーズの中心モデルだが、日本では発売されていない

実際に筆者の居住する香港の家電店で、7月に発売されたばかりのP40 Pro+を触ろうと店頭のデモ機を操作していたところ、ファーウェイのプロモーターから「P40 Proのカメラもいいですよ」と説明を受けた。なんのことはない、P40 Pro+と思って触っていたのはP40 Proだったのだ。背面のカメラ周りを見れば区別はつくが、ディスプレイサイズや前面デザインが同一なうえ、製品名として掲示されている「P40 Pro」と「P40 Pro+」も見にくく区別しにくかった。

家電店店頭のP40 Pro+。しかし手前のPOPは「P40 Pro」とあるからややこしい
家電店店頭のP40 Pro+。しかし手前のPOPは「P40 Pro」とあるからややこしい

各メーカーはスマートフォンの性能を年々高めている。ファーウェイの昨年モデルを見ると「P30 Pro」「P30」「P30 lite」、「Mate 30 Pro」「Mate 30」「Mate 30 lite」とわかりやすい。それぞれProモデルは業界最上位のカメラを搭載している。

しかし昨年あたりからスマートフォンのカメラ性能の進化はスマートフォンの本体性能の進化の速度を大きく上回り始めた。「光学10倍、デジタル100倍ズーム」「1億画素」など、現時点で最高のカメラを搭載しようとすると、製品単価が上がるだけではなく標準モデルとのスペック・価格差が大きく開いてしまう。
そこでファーウェイは「標準」「上位」の上に最上位モデルを用意し「Proの上だからPro+」という製品名をつけたのだろう。

ちなみにP40とP40 Proシリーズのカメラ画素数構成はこうなっている。

・P40 Pro+:5000万+800万(10倍)+800万(3倍)+4000万(超広角)+ToF
・P40 Pro:5000万+1200万(5倍)+4000万(超広角)+ToF
・P40:5000万+800万(3倍)+1600万(超広角)

P40 Pro+の光学10倍ズームカメラはデジタル100倍に対応、しかも3倍光学ズームも搭載するという贅沢な構成だ。しかしP40 Proとの性能差が製品名からはわかりにくい。そもそもここまでの文章を読んだ方も「カメラのスペックは違うみたいだけど、どちらも同じような製品」という印象を受けないだろうか。
筆者は実際にP40 Pro+を試用してみたが、その望遠性能はP40 Proとは比較にならないくらい強力で「どちらも似たような製品」では決してなかった。

左がP40 Pro+。5眼カメラで10倍+3倍望遠カメラと、P40 Pro(右)より高性能
左がP40 Pro+。5眼カメラで10倍+3倍望遠カメラと、P40 Pro(右)より高性能

たしかにサムスンなどは上位モデルの製品名に「+」を付けて区分している。しかし「Galaxy S20」「Galaxy S20+」のように、数字に+を付けるだけなので多少はわかりやすい。そもそもこの型番は2017年から導入しているし、OPPOなど他のメーカーも一時期は同じ型番方式を採用していた。

そしてそのサムスンは、2020年春モデルの最上位機種に「Galaxy S20 Ultra」という名称を付けた。つまりS20、S20+、S20 Ultraというラインナップになる。Ultraという名前を見れば、「なにかすごい」というイメージをより消費者に訴えやすいのではないだろうか。Ultraの型番はソニーも大画面モデルに採用していたが、グローバルでの存在感が低いため世界での大画面モデルの製品名の代名詞は「Note」や「Max」がよく知られている。そのNoteもサムスンが流行らせた製品名である。

サムスンは家電メーカーとしての歴史も長く、消費者に製品をどう認知してもらうかという知見は他のスマートフォンメーカーよりも多く持っている。しかしそれが裏目に出てしまった過去を持つ。
2014年頃は「S」「Note」という今の2本柱に加え、「Ace」「Core」「Grand」「Mega」「Pocket」「Star」「Young」「Win」など、次々とモデルを投入。その結果製品間の区別がつきにくくなってしまい(それに加え、前年モデルも併売されるため似たようなモデルだらけが店頭に並ぶ)、消費者がどの製品を選べばいいかわかりにくくなり、結果として販売数が伸び悩んだ時期があったのだ。

Galaxy S20 Ultraはカメラ性能でここ数年ファーウェイの後塵を拝することになってしまったサムスンにとって、「Galaxyのカメラもスゴイ」という印象を与えることにも成功しているだろう。Galaxy S20 UltraとP40 Pro+は両者譲らぬカメラ性能を誇るが、製品名だけを見比べるとUltraのほうのインパクトが高い。業界最高のカメラフォンを目指す両者だが、2020年春モデルを比較するとイメージ戦略の点ではサムスンの圧勝と言える。

”Ultra”の名前にふさわしい超高性能なカメラを搭載するGalaxy S20 Ultra
”Ultra”の名前にふさわしい超高性能なカメラを搭載するGalaxy S20 Ultra

さてこのわかりにくい型番で損をしているな、と思える製品が他にもある。中国のVivoが6月に発表した「X50」シリーズだ。「X50 Pro」と「X50 Pro+」の2つの上位モデルが存在するが、どちらのほうがすごい製品と思うだろうか?

X50 ProはチップセットにSnapdragon 765Gを搭載。X50 Pro+は同865で、スマートフォン性能の差で見ればPro+のほうがスペックは高い。やはり「+」が付くぶんだけ高性能なのだ。ところ同じ4つのカメラを搭載する両モデルの、最高画質のカメラは以下のような違いがある。

・X50 Pro+:5000万画素。1/1.3インチセンサー搭載
・X50 Pro:4800万画素。ジンバル内蔵

最高画質はX50 Pro+のほうがわずかに高い。そしてX50 Pro+は市販されているスマートフォンの中で現時点で最大サイズの1/1.3インチのセンサーを搭載している。一方X50 Proは手振れを補正する猪口型のジンバルを内蔵している。ジンバルはスマートフォンやデジカメを取り付ける手振れ補正の道具で小型三脚程度の大きさだが、X50 Proはそのジンバルをスマートフォンのカメラ部分に内蔵してしまったのだ。

強力な手振れ補正が可能なジンバルを内蔵したX50 Proのカメラモジュール
強力な手振れ補正が可能なジンバルを内蔵したX50 Proのカメラモジュール

もちろんチップセットの性能差は大きいが、手振れしにくいカメラを搭載したスマートフォンのほうを好む消費者のほうが多いのではないだろうか?世界初の偉業を成し遂げたモデルなのに、Proというありきたりの名前ではPro+との製品の特性の差もわかりにくい。

ファーウェイもVivoも(そしてシャオミなど他の中国メーカーも)、複数モデルの横展開を行い、各モデルごとに「Pro、無印、Lite」といった機能差をつけて縦展開も行っている。全製品の一覧表はそれこそ美しく見えるだろう。だが消費者がその一覧表を見て、どのモデルが自分に適しているのか、あるいはどんな機能が目玉なのか、といった区別がつきにくくなってしまっていないだろうか。

似たような型番の製品が並ぶようになると、サムスンが消費者から飽きられてしまった過去を同じ過ちを犯してしまう。そろそろスマートフォンの製品名の付け方も抜本から替えなおす時代ではないだろうか?

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