DX時代に必要な勉強とは【前編】|上松恵理子のモバイル教育事情

DX時代に必要な勉強とは【前編】|上松恵理子のモバイル教育事情

教育のデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital transformation)は、ICT化に伴い、もはやITを使いこなせることを目的として行うものではない。ICT化された環境の中、どう組織や制度を変えていくかが課題なのである。AIも教育に入ってくる時代には、子どもたちにも、ICT化は単なる手段であり、どういった目的で使っていけばよいのかを考える創造力と改革力を養うことが必要となってくる。

そんな時代にはどのような教育が理想なのか。また、DX時代に必要な勉強とは何かについて、フリースクールを立ち上げ、作家でありマスコミにも多く出演されている竹内薫さんにインタビューを行った。竹内さんは東京都出身で、東京大学教養学部教養学科卒業(専攻、科学史・科学哲学)、東京大学理学部物理学科卒業、マギル大学大学院博士課程修了(専攻、高エネルギー物理学)の理学博士(Ph.D.)である。

竹内薫さん

ニューヨークでは教わった覚えがない、自ら考え学ぶ

上松:いきなり小学校でニューヨークに行かれたんですか。それは英語大変だったでしょう。

竹内:英語が全くできずに行き、半年くらいは会話が完全でなかったのですが、子どもなので、比較的早く慣れましたね。あと数学(算数)は世界共通なので、常に成績トップで皆に一目置かれていました。そのことが自分の進路に繋がっているかもしれません。数理は自分の持っている武器なのかな、と思いました。算数、数学、サイエンス、物理、化学は国境がないのだな、と思いました。
個々の学習は進度別に進み、自己採点をして次の課題をする、という自分たちが勝手に履修していくような課題でした。数学の教科書というよりもドリルみたいなものを自分でやるスタイルだったことで、勉強に対する自主性が身につきました。それは良かったと思います。幼少期にアメリカに行って良かった点ですね。

上松:ずっと小学校はニューヨークですか。

竹内:小学校3年生から5年生まで、父親の仕事の関係でニューヨークの公立小学校に行って、2年ほどで帰国しました。ニューヨークでは当初英語ができず、そして帰国して留年にはしなかったため、日本語も2年のブランクがありました。そのため今度は国語ができずで、なかなか大変でした。その結果不登校ぎみになりました。

ニューヨーク在住当時の写真 ニューヨーク在住当時の写真 ニューヨーク在住当時の写真

上松:帰国子女にありがちなパターンですね。

竹内:まあ、でも中学校になったら英語が始まったので、自然と全体の成績は上がっていき救われました。しかしどうも成績評価の面では疑問が残っています。実はニューヨークでは絵をめちゃめちゃ褒められたんですね。外部講師のプロの絵描きの先生に「美術学校に進学して奨学金がもらえる」と言われたんです。しかし日本の図工の成績評価はひどいものでびっくりしました。体育も酷い成績で…自分は絵も運動も本当はダメなのかな、と思ってしまって。でも今はそれを克服し、楽しくカポエイラをやりロードバイクに乗っていますが。しかし、絵の方はけっこうなトラウマで、それ以降はぱったり絵を描かなくなりましたね。
ということで、子どもの頃の実体験で、どうも成績評価のシステムがおかしいな、と思ったんです。他人と同じでなく、どこか尖った人は悪い成績がつくのかな。幼少期に先生からの低い評価でトラウマになるのは良くないことだな、と思います。

プログラミング教育の評価について

上松:プログラミング教育では、色々なやり方があるのだと言って褒めたり、答えが1つでないことを認めてあげたりすることが大事だと思いますよね。

竹内:すぐにゴールできるように正解を求めて近道ばかり通ってしまうと、失敗を恐れてしまうようになるんですね。世の中の本質は失敗の連続なのに。失敗をしないで、塾の先生から教えてもらった近道を行くことは良くないと思います。自分で考え、納得していくことが必要です。近道も自分で発見したのでなければ価値がない。今の教育現場では、子供も、失敗を恐れるあまり理由もわからずに答えを暗記してしまうことが多いように思います。これでは社会に出てから自分で道を切り開くことができません。

上松:国語や数学でさえもテスト勉強は暗記が中心で、しかも正解が1つですよね。

竹内:知らず知らずのうちに子どもたちはテストのための勉強しかしなくなってくるんですよね。それは本末転倒ですね。道草をしないで近道だけを通るようになってしまい、最後のゴールだけを目指してしまう。それをすると勉強が楽しくないし、身につかないし、人に頼ろうとします。人にどうやると近道できますか、と聞く指示待ち人間になってしまう。

上松:すぐに学生に質問されることがあって、私はGoogleか、と思ってしまうくらい簡単に聞いてくることもありますね。昔よりも、自分で調べないですぐに質問されることが増えてきたように思います。

竹内:プログラミング教育も心配しています。課題を与えて自分で解いてみるということが大事です。例えば、通常の普及しているアルゴリズムでなくてヘンテコでも、それはそれで独創性があるわけです。しかしながら、それを評価できる先生がいないんですよね。そういったオリジナリティの評価を本来すべきです。相当力のあるプログラマーしか評価できないわけですが。
決まりきった答えを用意して「先生、これであってますか?」って感じになってしまう。そうなると天才プログラマーは0点になる可能性があって高評価がつかないと思います。独創性なプログラムを書く子どもたち、プログラミングが大好きな子どもたちがいるわけで、そういった子どもたちのモチベーションをどう保っていけばよいかという問題もあるのですよね。

上松:絵がすごくできるとか、音楽がすごくできるとかいうのが、学校で必ずしも高評価にならないという事に繋がりますね。

竹内:今、プログラミングを算数と融合させて、自分が授業を担当しているのですが、正直、オンライン授業でやる方がやりやすい、と思いました。効率が良いし生徒が集中できる。算数プログラミングについてはZoomでオンライン教育でも問題ないですね。

オンライン授業のイメージ

オンライン授業について

上松:コロナでいきなりオンライン授業をスタートされ、何かトラブルはありましたか?

竹内:実は3年くらい前から実証試験をくりかえしていたんですよ。何かあった時オンラインにする場合に慌てないように、機材チェックなどもやっていました。地方に住んでいる生徒につないで、現地の協力者にコーチで入ってもらったり。

・こちら側とあちら側でどういうインフラがあればよいのか
・ソフトウエアはどれが1番良いのか
・回線の問題は生じないのか
・資料の受け渡しはどういった方法でやればよいのか
・集中できる時間はどれくらいなのか

こういった課題を意識して実証実験をしていたんです。おかげさまで、緊急事態宣言が出てから1週間の準備期間を頂いてオンライン授業に移行できました。

上松:これまでの準備があったからというのが良くわかりました。何か問題はなかったですか。

竹内:ニューヨークで騒ぎになった「Zoom爆弾」を防ぐ対策を考えました。会社の中でチャンネルを作り、学校の中だけの会議という設定にしました。レッスンを開始した時に初めてURLを生成される方法にしたので、事前にURLが漏れたり、ランダムに入って来たりする輩をシャットアウトしたのです。システム上、考えられる一番安全な方法でやっていました。

上松:オンライン授業で何か反応はありましたか。

竹内:この時期によくZoomでやってくれましたね、と褒めていただきました。
とはいえ、色々なところに遠足で出かけていって社会観察するような活動ができない不満がありました。対面授業でなければできないことというのもたくさんあることがわかりました。


インタビュー後編では、子どもの才能を伸ばす、これからの学校や教育の在り方について語ります。後編の記事はこちら。

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