6.9インチのディスプレイをすべて表示領域にできる

5G開始で存在感を増すZTEのスマホ、日本でも3キャリアから発売に|山根康宏のワールドモバイルレポート

ZTEの名前を覚えている人はあまり多くないかもしれない。
2017年秋に横開き型の畳めるスマートフォン「AXON M」を発表、日本ではドコモから「M Z-01K」として販売された。AXON Mはまだディスプレイが折りたためるフォルダブルスマートフォンの無い時代に出てきたことから世界中で大きな話題にもなった。しかし販売国が数カ国に限られたこと、価格が高かったことから商業的には成功できなかった。

ZTEは2016年にアメリカから制裁を受けたこともあり、スマートフォンの事業展開が一時的に停止してしまった。飛び道具と言えるAXON Mは出したものの、それ以外の製品は低価格なBladeシリーズで数を稼ごうとしたものの、市場での存在感を一時的に失った対価は大きかった。
アメリカではプリペイド向けの低価格スマートフォン市場で大きな存在感を持っていただけに、その市場を失ったことも大きかった。

しかし2019年に入ると5Gスマートフォン「AXON 10 Pro 5G」を発表。中国市場ではファーウェイやシャオミなど大手メーカーに先駆け、国内初の5Gスマートフォンの投入となった。
ZTEは携帯電話のインフラビジネスも展開しており、ファーウェイの陰に隠れてしまっているが5Gインフラでも存在感を誇る企業だ。中国国内でも各地に5Gインフラを提供している。ネットワークを知り尽くしているメーカーだからこそ、5Gスマートフォンの開発も競合他社に負けてはいないのだ。

中国初の5GスマートフォンとなったAXON 10 Pro 5G
中国初の5GスマートフォンとなったAXON 10 Pro 5G

ZTEのスマートフォンのラインナップは上位モデルの「AXON」とボリュームゾーン向けの「Blade」の2つが中心だ。とはいえ製品数が少ないため「カメラに強い」といった特徴はなかなかアピールできず、AXONシリーズであれば現在は5Gに対応していることを一つの売りにしている。
そして5Gスマートフォンが各国キャリアから求められている今、ZTEも少ないラインナップの中から製品のグローバル展開を計ろうとしている。

日本では2019年11月にワイモバイル向けに「Libero S10」で市場復活を果たし、2020年に入ってからは積極的に5Gスマートフォンを投入している。ソフトバンク向けに「AXON 10 Pro 5G」を3月に発売。ソフトバンクの5Gサービス最初のスマートフォンラインナップに食い込んだ。すでに中国などで販売実機がある端末だけに、ソフトバンクとしても導入しやすかったのだろう。

またKDDIには「ZTE a1」を8月に発売した。Snapdragon 765Gを搭載したミッドハイレンジモデルで、10万円以下で買える5GスマートフォンとしてKDDIの5Gユーザーを増やすことを狙って投入された。4800万画素を含むクワッドカメラを搭載しており、日常的に使うには十分な性能を誇る。

KDDIから「格安」な5Gスマホとして登場したa1
KDDIから「格安」な5Gスマホとして登場したa1

そして楽天モバイルが9月30日から開始した5GサービスにもZTEのスマートフォンが投入された。楽天モバイルのSub6とミリ波の5Gに対応した「Rakuten BIG」は楽天モバイルブランドで販売されるものの、製造元はZTEだ。

Rakuten BIGは6.9インチの大型ディスプレイが目を引く製品だ。5G回線を使って動画のストリーミングサービスを利用するときも、これだけ大きいディスプレイなら臨場感あふれる映像を楽しめる。またクワッドカメラの最大画素数は6400万画素と高く、夜景も美しく撮影できるのだ。チップセットはa1と同じSnapdragon 765Gでパフォーマンスは問題ない。

6.9インチの大画面のRakuten BIG。ZTEが製造する
6.9インチの大画面のRakuten BIG。ZTEが製造する

このRakuten BIGは中国で販売されている「AXON 20 5G」をベースモデルとしているようだ。両者はディスプレイサイズもカメラの画素数も全く同一だ。そしてどちらも世界初の機能を搭載している。それはカメラが埋め込まれたディスプレイの採用だ。

Rakuten BIGのディスプレイを見ると、フロントカメラが見当たらない。フロントカメラの無い製品は、カメラを本体の上にポップアップ式に収納するモデルがほとんどだが、Rakuten BIGはディスプレイの下にカメラを埋め込んでいるのだ。

ディスプレイの下にカメラが内蔵されているとなると、その部分は表示エリアに使えないはずだ。Rakuten BIGはカメラの上のディスプレイ部分の素材の透明度を高めることで、カメラを使わないときはディスプレイ全面を表示領域とし、フロントカメラを起動したときはディスプレイを通して写真撮影ができるようにしているのだ。

この技術はRakuten BIGのような大画面スマートフォンを使うとその有用性を強く体感することができる。写真でもビデオでもスマートフォンで表示したときに、ディスプレイの一部が書き取られていたり、穴が開いているとその部分が気になってしまう。フロントカメラ部分を避けて表示するとなると、せっかくのスマートフォンのディスプレイを有効利用できない。コンテンツ表示時にフロントカメラは邪魔な存在であり、ディスプレイ埋め込み型のカメラならスマートフォンの表示体験をより豊かなものにしてくれる。

6.9インチのディスプレイをすべて表示領域にできる
6.9インチのディスプレイをすべて表示領域にできる

なおフロントカメラは最近ではビデオ会議などにもよく使われるため、スマートフォンにとってその必要性は高まりつつある。またポップアップ式のフロントカメラは落下時の耐久性に難点がある。フロントカメラを無くさず見えなくする技術として、ディスプレイ埋め込み式のカメラは利点が大きい。

このようにZTEは5Gに対応するスマートフォンを出すだけではなく、5G時代のコンテンツ体験に優れたディスプレイを開発することで市場での存在感を今後増していくかもしれない。過去にはドコモや海外の大手キャリアからZTEのスマートフォンが販売されたことがあるだけに、先進的なスマートフォンを開発すればより多くの消費者の目に触れる機会も増えるだろう。ZTEの今後の新製品に期待したい。

6.9インチのディスプレイをすべて表示領域にできる
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