デスクトップモードはスマートフォンをPCのようにマルチウィンドウで利用できる

Snapdragon 888が登場、スマホがあればPC不要な時代がやってくる|山根康宏のワールドモバイルレポート

クアルコムから最新のチップセットとなる「Snapdragon 888」が発表になった。現行の最上位チップセット「Snapdragon 865」と比べると、CPUは25%の性能アップ、25%の消費電力ダウン、GPUは35%のレンダリング高速化、20%の省電力化が図られている。他にも5Gモデムがチップセット内に統合されており、モデム制御の効率化も図られる。

来年はSnapdragon 888を搭載した、今よりもハイスペックなスマートフォンが続々と登場する。しかしその一方で、スマートフォンの性能は日常用途にはオーバースペックとも言えるレベルに達している。例えばARやVRを使うのであれば高性能なスマートフォンは必要だろうが、ARもVRも日常生活で必須となるサービスはまだ存在しない。「ARが使えないと不便」と思う人がどれくらいいるだろうか。

クアルコムの最新ハイスペックチップセット「Snapdragon 888」
クアルコムの最新ハイスペックチップセット「Snapdragon 888」

つまりSNSやYouTubeを使い、WEB検索にオンラインショッピング。写真や動画を撮ってメッセージでシェア、その程度の用途なら、2万4800円で売っているシャオミの「Redmi Note 9S」でも困ることは無い。「おサイフ機能が無い」など細かい欠点はあるものの、2年間使い続けるとして月々約1000円で買えるスマートフォンでもそれほど困ることはなく使えるほど、スマートフォン全体のスペックは高まっているのだ。

もちろん低価格なスマートフォンの性能が引きあがったのは、チップセットメーカーやスマートフォンメーカーが常にハイスペックなスマートフォンを開発していった結果だ。Snapdragon 888を搭載したスマートフォンは誰もが使うスマートフォンではなく、高性能を求めるユーザーのものになるだろう。しかしここまでスマートフォンのスペックがあがると、今のスマートフォンとは違う用途展開も十分に考えられる。

その1つがスマートフォンのPC的な利用だ。すでにサムスンとファーウェイはスマートフォンを外部ディスプレイに接続すると、専用のデスクトップモードを利用できる。あとはキーボードとマウスをBluetoothなどで接続すれば、スマートフォンを簡易的なPCとして使うことができるのだ。
ここで「簡易的」と書いたのはWindows PCのアプリが利用できるのではなく、あくまでもスマートフォンのアプリが使えるだけという意味だ。もしもPCでグーグルのオフィスアプリをブラウザで使っているなら、スマートフォンを外部ディスプレイに接続してデスクトップモードで利用すると使い勝手はほとんど変わらない。むしろ普段使っているスマートフォンをそのままPC用に使えるとなると、スマートフォンに保存した写真や動画の共有や編集作業も楽だ。

デスクトップモードはスマートフォンをPCのようにマルチウィンドウで利用できる
デスクトップモードはスマートフォンをPCのようにマルチウィンドウで利用できる

スマートフォンにデスクトップモードを搭載しているのはサムスンとファーウェイ、あとはLGなどごく一部のメーカーの、上位モデルの一部に過ぎない。スマートフォンをPCのように使えるデスクトップモードは、ディスプレイの中で複数のウィンドウを表示しそれぞれを自由な大きさで配置できる。YouTubeを見ながらゲームをする、といった、PCのような使い方もできるのだ。しかしそのためにはスマートフォンは高性能でなくてはならない。

Snapdragon 888を搭載するスマートフォンは現在最もハイスペックなSnapdragon 865を搭載しているスマートフォンよりもさらに高性能になる。デスクトップモードの利用もより容易にできるだろう。
たとえばモトローラはSnapdragon 888の発表会で、スマートフォンをディスプレイに接続して使うデスクトップモードの例を披露した。つまりモトローラが来年投入するSnapdragon 888搭載スマートフォンは、ディスプレイとキーボード、マウスをつなげばPCのように使うことができるわけだ。

モトローラによるSnapdragon 888搭載スマートフォンの利用例。デスクトップモードだ
モトローラによるSnapdragon 888搭載スマートフォンの利用例。デスクトップモードだ

ビジネス用途でもまだまだPCは必要なツールで、スマートフォンはその補佐として使われるケースが大半だ。ルーチンワークなどはスマートフォンに専用アプリを入れそれを利用すればPCレスでも仕事が完了するといった例もあるが、まだまだ限定的。多くのビジネスシーンでPCは必要不可欠だ。

しかしスマートフォンがハイスペックになりPC同様の使い方ができるようになれば、ビジネス環境も大きく変わる。リモートワークが増えたことで自宅で仕事をする人も増え、中古のノートPC市場が活況を呈しているという話が聞かれている。しかしSnapdragon 888搭載のスマートフォンがあれば、自宅にはディスプレイとキーボード、マウスだけあればPCは不要になる。

すでにスマートフォンをPC化する「Mirabook」のような製品も出てきている。これはノートPCの形をしているが、中身はディスプレイとキーボードのみ。スマートフォンを接続すると、まるでノートPCのように使うことができるのだ。ディスプレイとキーボードだけの製品なので、ノートPCのように数年でスペックが低くなってしまうこともない。自宅やオフィスにMirabookを置き、移動中はスマートフォンを使って仕事する、というワークスタイルも現実のものになるかもしれない。

スマートフォンをノートPCのように使えるMirabook
スマートフォンをノートPCのように使えるMirabook

このようにスマートフォンのPC的な利用が増えれば、今のスマートフォンではまだまだパワー不足と感じるユーザーも出てくるだろう。スマートフォンはSNS利用の使い方なら今の製品でも十分かもしれない。しかし今後PC代替利用や、冒頭に書いたようにARやVRのスムーズな利用を考えれば、まだまだスペックを高めていく必要があるのだ。スマートフォンの性能進化は、スマートフォンの使い方の幅をさらに広げてくれるものになるのだ。

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