ファーウェイの大きな落ち込みが目立った第1四半期

2020年のスマホ市場はシャオミの勢いが他社を圧倒|山根康宏のワールドモバイルレポート

2020年は年明けから新型コロナウイルスの蔓延が広がり、あらゆる産業に影響を及ぼした。それは通信業界も変わらず、スマートフォンの出荷台数ではメーカー間のパワーバランスに大きな動きがみられた。2020年を振り返ってみよう。

2020年1月30日にWHOが「世界的な緊急事態」を宣言したものの、新型コロナウイルスはあっという間に世界中へ拡散していった。世界最大のスマートフォン市場、中国では都市の閉鎖により人々は買い物に出かけることができなくなるだけではなく、仕事を奪われるケースも増えた。つまりスマートフォンなど買っていられない状況になったわけだ。カウンターポイントの調査によると1月から3月の第1四半期のスマートフォンの全世界出荷量は3億台を割り込み、前年同期比マイナスという最悪の状況となった。

中でも落ち込みが激しかったのがファーウェイだ。1年以上前の2019年5月15日、米国商務省はファーウェイを産業安全保障局のエンティティーリストに追加。ファーウェイ制裁が始まった。9月からはグーグルとの取引が停止され、それ以降に発売するファーウェイ製スマートフォンにはグーグルサービスが搭載できなくなった。そしてFacebookやTwitterなど主要なSNSサービスもファーウェイ端末から使用できなくなった。その結果先進国市場でファーウェイのスマートフォンが消費者から敬遠されたことにより、ファーウェイはグーグルサービス不要な中国国内での販売を2019年後半から強化していったのだ。

しかし2020年の頭から中国市場が新型コロナウイルスの影響を受け、その影響をもろにかぶったファーウェイは前年同期比で約2割ダウンという大きな減少を示した。ちなみにサムスンもほぼ同じ落ち込みを記録している。

ファーウェイの大きな落ち込みが目立った第1四半期
ファーウェイの大きな落ち込みが目立った第1四半期

第2四半期に入ると中国のコロナウィルス対策が効果を見せ始め、中国市場が回復を迎えた。ファーウェイは昨年同期と同じレベルまで出荷量を回復。
一方サムスンは中国では存在感が無く、中国以外の市場を主戦場としていたがそれらの市場がコロナウイルスの影響を受けたままだったことから出荷量をさらに落とし、ついにファーウェイに1位の座を明け渡した。パンデミックという特殊な状況がもたらしたものとはいえ、ファーウェイの力の強さを世界中に知らしめる結果となった。

ファーウェイがついに1位の座に就いた第2四半期
ファーウェイがついに1位の座に就いた第2四半期

そして迎えた第3四半期。中国以外の市場でもコロナウイルスと共存する生活が一般化したことにより消費者の購買力も戻り、サムスンが前年レベルの出荷量を回復。
一方ファーウェイは前年同期には及ばず、2020年第1、第2四半期とほぼ同数の出荷量に留まった。つまりファーウェイのスマートフォン出荷台数は中国市場に左右されるということなのだ。中国以外での出荷台数を伸ばせなければ、本調子のサムスンを抜くことは不可能。しかしファーウェイがグーグルサービスを搭載できないかぎり、それを達成するのはかなり難しいのだ。

そして今期で注目すべきはシャオミの存在だ。シャオミがアップルを抜いて3位に躍り出たのである。実はシャオミは2020年に入ってから第1、第2四半期も出荷数を伸ばしている。第3四半期は前年同期比で1.5倍を出荷。ファーウェイにも肉薄している。

第3四半期はシャオミが3位。2020年はめまぐるしく順位が入れ替わった
第3四半期はシャオミが3位。2020年はめまぐるしく順位が入れ替わった

アップルは第2四半期に低価格な「iPhone SE」を出して前年同期比プラスを達成したが、第3四半期は逆にマイナスとなった。これは例年9月後半に出荷を開始する新型iPhoneが、2020年は10月と11月にずれ込んだ影響が大きい。しかも第4四半期は2モデルの販売時期が約2か月半、他の2モデルが約1か月半となる。その結果、例年サムスンと1位争いを行っていた第4四半期に、アップルはサムスンほどの出荷台数を記録することはできないだろう。

ちなみにアップルの新製品の遅れは、他のメーカーの新製品投入戦略を変えようとしている。サムスンは例年2月に発表予定だったフラッグシップモデルを1月に発表する。つまりアップルのiPhone 12シリーズに真っ向からぶつける戦略だ。例年であれば8月に発売するGalaxy Noteシリーズが新型iPhoneの対抗製品となるが、iPhone 12の発売が遅れたことで2月の新製品を1月に投入しぶつけようという戦略だ。

2020年8月に筆者が執筆した記事「最高のタイミングでiPhone SEを投入したアップル、2020年は独り勝ちなるか」では、アップルが2020年のスマートフォン市場で独り勝ちするかもしれないと予測した。

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それはiPhone 12シリーズが9月に発売されれば、であった。しかし10月、11月と発売時期が2回にわけてずれ込んだことから、2021年年初のスマートフォン市場で逆に強力なライバルとの戦いを強いられることになりそうだ。

それでは第4四半期は実際にどのメーカーが強さを発揮するだろうか。サムスンは厚い製品ポートフォリオを有しており前年同期レベルを維持するだろう。またシャオミも低価格はハイスペックモデル「Mi 10T」などで攻勢をかける。しかしファーウェイは再びアメリカ政府の制裁の影響を受けるため出荷数を減らさざるを得ない。2020年9月以降は子会社ハイシリコンがファーウェイスマートフォン向けのチップセットの生産ができなくなるため、生産台数そのものが落ち込んでしまうのだ。

またアップルを抜いたシャオミだが、アップルの底力に及ぶほどの力はまだつけていない。それを加味すると、2020年第4四半期は

1位:サムスン 約7000万台
2位:アップル 約6000万台
3位:シャオミ 約5000万台
4位:ファーウェイ 約4000万台

といった順位になるだろうか。しかしその下を見ると、OPPOとVivoが第3四半期に3000万台をそれぞれ出荷している。ファーウェイが今以上に落ち込み、OPPOとVivoが好調な結果を示せば、4位OPPO、5位Vivo、6位ファーウェイという順位もあるかもしれない。

このように2020年を振り返ると、上位4社の優劣・勢いをABCの3段階で示すと、

サムスン:A
ファーウェイ:Cー
アップル:B
シャオミ:A+

ファーウェイはCより低いCマイナス、シャオミは全社の中で絶好調でAプラスとサムスンを抜く勢いだったと感じる。この勢いはそのまま来年の勢いへとつながっていくだろう。なおファーウェイは出荷台数の2-3割りを占めるHonorブランドが別会社化されるため、単純に2021年の出荷台数は今年の3/4に減ってしまう。
2021年のスマートフォン市場はコロナウイルスの影響を抜きにしても、激しい争いが見られそうだ。

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