サムスンとファーウェイが競い合っていた折りたたみスマートフォン市場にシャオミが殴り込みをかけてきた。2021年3月27日にシャオミが発表した「Mi MIX FOLD」は先行2社の販売する内折り式と同じデザインをした折りたたみスマートフォンだ。
一方日本では3月にモトローラが縦折り式のスマートフォン「razr 5G」を発売。ここにきて折りたたみスマートフォンの話題が市場をにぎわせている。

シャオミのMi MIX FOLDは先行2社、しかもスマートフォン市場で巨大な影響力を持つ2社の製品をよく研究して作られている。
・開くと8.01インチ(世界最大)。16:9の動画も広く表示できる
・閉じると6.52インチ(世界最大)。
・1億800万画素カメラ(折りたたみ最高)
・2000万画素フロントカメラ(折りたたみ最高)
・9999元(史上初の1万円切りの折りたたみ端末)
中でも9999元、日本円で約16万7000円という価格設定は世界中に衝撃を与えている。この価格はiPhone 12 Pro Max 256GBモデルの中国価格、10990元より安い。つまりiPhoneよりも安く折りたたみスマートフォンが買えるのだ。1万元を切るというわかりやすい価格設定はシャオミならではの手法だが、iPhoneよりも安いというインパクトは大きい。

ファーウェイの最新折りたたみスマートフォン「Mate X2」は約1か月前の2月22日に発売され、17999元(約30万1000円)という価格ながら中国で売れまくっている。しかしシャオミが半額近い価格で対抗機種を出したとなると、今後の売れ行きに影響を及ぼすかもしれない。ファーウェイはアメリカ政府の制裁によりチップセットの供給に難点があることから、最終的に生産できる台数が限られていることからシャオミの影響はそれほど大きいものにはならないかもしれない。しかし今後次のモデルを出すとなると、サムスンも含め9999元という価格は新しい指標になっていくだろう。
中国ではほかのメーカーも折りたたみスマートフォンを近いうちに出す予定という噂が出ている。調査会社Omdiaの資料によると、OPPOは縦折り式、Vivoは横折り式のスマートフォンを近いうちに発売する予定だという。どちらもディスプレイはサムスン製と言われている。この2社の製品が出てくれば、サムスンが販売する横折り式の「Galaxy Z Foldシリーズ」と縦折り式の「Galaxy Z Flip」シリーズの姉妹モデルが増えることになる。そうなれば折りたたみディスプレイを使った新しいUIやアプリ、コンテンツ開発にも弾みがつく。

そのサムスンはこの夏に第三世代目となる折りたたみスマートフォンを投入する予定だ。噂では「Z」式に折りたたみ3つ折り式が出てくるという話もあったが、2つ折りの現状の折りたたみディスプレイですらまだ開発途上と言える品質だけに、3つ折りの登場はまだ先になるだろう。なお3つ折りディスプレイはTCL系のCSOTが開発中だ。

これら折りたたみスマートフォンのディスプレイは、ディスプレイメーカーが開発・製造している。サムスン(とOPPO、Vivo)はサムスンディスプレイ、ファーウェイはBOE、モトローラとシャオミはTCL系のCSOTのディスプレイを採用。また新興企業としてRoyoleも折りたたみディスプレイを開発し、自社のスマートフォンに搭載している。RoyoleはZTEと提携も行っており、今後ZTEから折りたたみスマートフォンが出てくる可能性もある。

スマートフォンの画面サイズはより大きくなることが求められるが、人間の手で持てるスマートフォンのサイズには限界がある。「片手で持てる大画面」これを実現できるのが折りたたみスマートフォンであり、今後各社から多数の製品が出てくるに違いない。そしてそれら折りたたみスマートフォンの製品開発動向を左右するのはディスプレイメーカーとなる。シャオミが価格を引き下げたことで、各ディスプレイメーカーもより安価で性能の良い折りたたみディスプレイを開発しなくてはならないし、それを実装するスマートフォンメーカーも競争力ある価格を実現する必要がある。
Mi MIX FOLDの登場は折りたたみスマートフォンの「大衆化」の始まりとなり、他社の新製品開発戦略に大きな影響を与えるだろう。今年各社から出てくる折りたたみスマートフォンが果たしてどのような機能を搭載し、画面サイズはどれくらいになり、さらに価格はどこまで引き下がるのか。もしかすると年末あたりには10万円を切る格安折りたたみスマートフォンが登場するのかもしれない。