スマホ好調なサムスンが諸手を挙げて喜べない理由|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマホ好調なサムスンが諸手を挙げて喜べない理由|山根康宏のワールドモバイルレポート

2021年第1四半期(1月-4月)の世界のスマートフォン出荷台数は、IDCの調査によると3億4550万台を記録した。新型コロナウィルスの蔓延が広がった昨年同期は2億7520万台だったが、この1年で市場は回復の傾向を見せている。各社の出荷台数はサムスンが7530万台、アップルが5520万台、シャオミが4860万台、OPPOが3750万台、Vivoが3490万台、その他メーカーが9410台である。

IDCによる20201年(と2020年)第1四半期スマートフォン出荷台数
IDCによる20201年(と2020年)第1四半期スマートフォン出荷台数

世界シェア1位のサムスンが4月末に発表した決算によると、スマートフォンなどを展開するIM(IT & モバイルコミュニケーションズ)部門は売り上げが29兆2100億ウォン(約2兆8314億円)、利益は4兆3900ウォン(約4255億円)だったとのこと。それぞれ前年同期比12.3%増、65.7%増となった。これは1月末に発売したフラッグシップモデル「Galaxy S21シリーズ」の販売が好調であったことが大きな要因とされている。

Galaxy S21シリーズは前年同期に発売した「Galaxy S20シリーズ」より販売が好調とのことで、サムスンの世界シェア1位は今年も安泰のように見える。しかしGalaxy S21シリーズは前モデルより平均で200ドルほど価格を下げたことが消費者の購入意欲を高めた結果にもなっている。今後のハイエンドモデルも同様の販売数を期待するなら、価格を引き上げることは難しい。中国メーカーはハイスペックな低価格モデルを次々と出しており、高価格で売るためにはアップルのような強力なブランド力が必要となる。

サムスンは折りたたみスマートフォン「Z」シリーズを高価格モデルとして出しているが、「Galaxy Z Flip」「Galaxy Z Fold」という名前はプレミアム感や先進性を感じさせるとは思えない。「Z」という字体はディスプレイを折り曲げているようにも見え、またアルファベット最後の文字ということから「究極」を意味しているのだろうが、メーカー側の自己主張の域を抜けていないと筆者は感じる。業界で唯一、2種類の折りたたみスマートフォンを出していることが果たしてどれくらいの消費者に浸透しているだろうか?

サムスンのプレミアムフラッグシップ「Galaxy Z」シリーズ。一般消費者にどこまでその名前が知られているだろうか?
サムスンのプレミアムフラッグシップ「Galaxy Z」シリーズ。一般消費者にどこまでその名前が知られているだろうか?

またIDCの調査結果を見ると、サムスン以外のメーカーは大幅な伸びを示している。サムスンは前年同期比で28.8%増加したが、アップルは同50.4%増。iPhone 12シリーズの出荷が例年より1-2か月後ろにずれたとはいえ、この伸びは予想を大きく上回ったといえる。また3位のシャオミは同64.8%増、4位OPPOは同64.5%増と、サムスンの伸びを倍以上も上回っているのだ。5位Vivoも同40.7%と、上位3社には負けるもののサムスンより増加している。

2位から5位の4社の伸びは、ファーウェイのマイナスによるところが大きいだろう。ファーウェイの2021年第1四半期の出荷台数は、2021年1月に分社化したHonorと合わせて2000万台程度だったと筆者は推測する(Counter Pointの調査では、サムスンが7660万台、ファーウェイが1500万台。ファーウェイからHonorが分社する前、Honorブランドはファーウェイ全体の1/4程度の出荷量だったことから推測)。

しかしファーウェイがアメリカ政府の制裁を受けていなければ、2021年第1四半期の出荷台数はサムスンの7530万台に次ぎ、6000万台程度になったと考えられる(過去の両者の出荷台数から筆者が独自に推測)。

ファーウェイが6000万台から2000万台に減少したということは、4000万台をほかのメーカーが奪ったことになる。各社の前年同期比の伸びから推測すると、この4000万台のほとんどをアップル、シャオミ、OPPO、Vivoが獲得し、サムスンはハイエンドモデルの出荷台数が伸びたといえ、逆にミドルレンジやエントリーモデルが思ったほど伸びなかったと推測される。

サムスンのミドルレンジモデル。中国メーカーはさらにコスパの高い製品を出している
サムスンのミドルレンジモデル。中国メーカーはさらにコスパの高い製品を出している

日本でもシャオミが低価格モデルを次々と投入し着々と知名度を高めているように、スマートフォンの低価格化は今後一層進むと予想される。アップルですら2020年4月に399ドルの「iPhone SE」を投入したことは記憶に新しい。5Gへの投資と料金低価格化のプレッシャーを受けている通信キャリアは、もはや10万円のハイエンドスマートフォンを無料でばらまくことはできなくなった。
多くの消費者がこれから中・低価格モデルに注目を集める中で、サムスンがシェアと利益を確保するにはハイエンドモデルでアップルと戦うだけではなく、中国メーカーと互角に戦えるミドルレンジ・エントリーモデルの強化がさらに必要だ。

アップルが第2四半期、第3四半期に販売数を落とすことは例年恒例であり、2021年第2四半期もサムスンのスマートフォン出荷量はシェア1位を記録するだろう。しかしアップルのすぐ後を追いかけるシャオミがシェア2位となり、しかもサムスンに肉薄する可能性は十分考えられる。折りたたみモデルやハイスペックなカメラを搭載した製品に加え、コスパの高い低価格・良性能モデルを豊富にそろえるシャオミは新型コロナウィルスの影響で景気状況が思わしくない先進国でもこれから販売量を増やしていくだろう。

サムスン以上に豊富な製品バリエーションを備えるシャオミ
サムスン以上に豊富な製品バリエーションを備えるシャオミ

中国が新型コロナウイルスの抑え込みに成功し、スマートフォン出荷量も伸びている。しかしサムスンは中国で全く存在感を示せていない。サムスンはこれから中国メーカーとの競争がより激化する状況に追い込まれるだけに、中国でも売れる製品を開発できなくてはグローバル市場の好調な状況も今後急変する可能性が十分ありうるのだ。

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