公平販売が5G普及を後押し、韓国でiPhoneの値引き率は日本より高い?|山根康宏のワールドモバイルレポート

公平販売が5G普及を後押し、韓国でiPhoneの値引き率は日本より高い?|山根康宏のワールドモバイルレポート

2021年5月17日に行われた総務省の有識者会議で、アップルジャパンは5Gスマートフォンの値引き幅拡大を訴えた。日本の5G普及率は低く、5Gを普及させるためには5Gスマートフォンのさらなる値引き販売が必要という理由だ。現在日本では通信キャリアでスマートフォンを販売する際に、値引きの上限は2万円と定められている。

iPhoneユーザーの多い日本では「5Gスマートフォン=iPhone 12シリーズ=高価なもの」という印象が強いだろう。しかし日本でもすでに低価格な5Gスマートフォンは販売されている。たとえばシャオミの「Redmi Note 9T」は5G対応、4800万画素カメラ、5000mAhバッテリー、おサイフケータイ対応。ソフトバンクからの発売で税別1万9637円、学生でもがんばれば買える価格だ。キャリアが2万円以上の値引きをしなくとも、すでに安価な5Gスマートフォンは市場で販売されている。

ちなみにRedmi Note 9Tのヨーロッパの価格はSIMフリーで229ユーロ、約3万円だ。Redmi Note 9Tは一昔前の「安かろう悪かろう」な製品ではなく、本体仕上げや基本スペックは十分実用的である。
シャオミは企業努力で5Gスマートフォンの低価格化を行い、十分使える性能の製品を出すことで世界各国の5Gの普及を後押ししようとしている。

海外でも3万円で販売されているRedmi Note 5G
海外でも3万円で販売されているRedmi Note 5G

それでは日本より5Gが普及している韓国で、5Gスマートフォンはどれくらい安く売られているのだろうか。
韓国の5G加入者数は2021年3月末時点でSKテレコムが約673万、KTが約440万、LG U+が約333万で、3社合計で1500万弱となっている。5G加入率は2割程度だが、現時点で数%という日本よりも普及は進んでいる。しかし韓国の5Gサービス開始は2019年4月であり、2020年3月に各社が開始した日本より約1年早い。

韓国の各キャリアは5G加入者を増やすために5Gスマートフォンの割引販売も行っている。シェアトップのSKテレコムのiPhone 12 miniの販売例を見てみよう。ちなみに韓国キャリアはSIMロック無しでスマートフォンを販売している。アップルストアで買っても、キャリアで買っても、買ったiPhoneはどのキャリアでも使うことができる。

韓国のiPhone 12 mini(64GB)のアップルストアでの販売価格は950万ウォン(約9万3420円)だ。SKテレコムの新規加入価格を見ると、データ無制限プラン(8万9000ウォン/月=約8740円)に24か月加入すると、iPhone 12 miniは555万ウォン(約5万4530円)と大幅な割引が行われている。割引額は395万ウォン(約3万8810円)と日本の倍だ。本体価格と比べても割引率は約4割で、ここまで安ければ5GのiPhoneを買おうと考える消費者も増えるだろう。韓国ではたしかに5Gスマートフォンの割引は高くなっている。

SKテレコムの販売ページを日本語翻訳してみた。ページ最下段がiPhone価格と基本料金だ
SKテレコムの販売ページを日本語翻訳してみた。ページ最下段がiPhone価格と基本料金だ

しかしSKテレコムの販売ページで、支払い方法を変えるとこのような表示となった。プランは同じデータ無制限24か月加入で、iPhoneも全く同じ製品だ。この支払い方法ではiPhone 12 miniは946万ウォン(約9万2960円)と定価とほとんど変わらないが、基本料金は6万6725ウォン/月(約6560円/月)と、本来の8万9000ウォン/月より大幅に安くなっている。

SKテレコムの販売ページで支払いパターンを変えてみた
SKテレコムの販売ページで支払いパターンを変えてみた

それではそれぞれの契約内容で、2年間の合計支払額(iPhoneと基本料金2年間)はいくらになるか計算してみよう。

A)iPhone 555万ウォン+8万9000ウォンx2年間=269万1000ウォン(約26万円)
B)iPhone 946万ウォン+6万6725ウォンx2年間=254万7400ウォン(約25万円)

このように「iPhone本体を安く買い、毎月の基本料金は正規の金額を払う」「iPhone本体は値引きなしで、毎月の基本料金を安くする」どちらで契約しても、2年間の総支払額は1万円程度しか変わらない。端末の値段だけを割引するのではなく、料金を割引する選択肢も与えることで不公平感をなくしているのだ。
5Gスマートフォンの大幅な割引は5G加入者増をけん引しているだろうが、料金割引を受ける選択肢を与えたことで、5G加入への敷居を低めているのだ。

筆者は香港に住んでおり、5Gスマートフォンを使っている。筆者の周りではiPhone 12シリーズやGalaxy S21シリーズのユーザー数は多く(いずれも5G対応)、キャリアの5Gプランに加入して5G回線を不自由なく使っている友人知人が多い。

スマートフォンのマニアでもある筆者は5Gスマートフォンが出てきたときに、すぐに買いたいと思ったが、5Gエリアが貧弱であれば最低プランに加入し、普段は4Gを使おうと考えただろう。香港では4Gならデータ定額プランがあるが、5Gは定額プランがない。それでも筆者が5G契約を2キャリア2回線所有しているのは「香港ではほとんどのエリアで5Gが使える」からだ。

筆者の自宅。速度はあまり出ないが(下り200Mbps程度)室内で5Gが入る
筆者の自宅。速度はあまり出ないが(下り200Mbps程度)室内で5Gが入る

結局のところ、日本の5Gの普及にはまず先にキャリアの5Gネットワークがどこでも使えるレベルに引き上げる必要があるのではないだろうか。5Gスマートフォンが高いから5Gに加入しないのではなく、5Gが使える場所がないから5Gに加入するメリットが無いのだ。

そして日本で今後5Gスマートフォンの値引き率を高めるのであれば、韓国のように5Gスマートフォンの値引きは不要で料金を安くする、という公平な選択肢を消費者に与えるべきだろう。もしも日本の5Gスマートフォンの値引き上限が4万円になったら、前述のソフトバンク販売のRedmi Note 9Tはマイナス2万円となる。そのマイナス分を料金で還元しなければ不公平だ。

日本のスマートフォンの販売形態はここ数年で、かなり強引なやり方ではあるものの「歪み」の是正に取り組んできた。5G普及のためには端末値引きの上限緩和も必要だろうが、どの消費者も納得する、不公平の無い施策を進めてほしいものだ。

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