スマホを自分で修理できる時代は来るか?ヨーロッパはエコ指標を導入|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマホを自分で修理できる時代は来るか?ヨーロッパはエコ指標を導入|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォンの本体価格が2極化している。シャオミが次々と低価格なモデルを投入する一方、アップルやソニー、サムスンのハイエンドモデルは10万円どころか15万円以上の製品も当たり前となった。
さらにスマートフォン購入時の補償プログラムも安くは無い。アップルの「AppleCare+ for iPhone」は破損などをカバーしてくれるもののiPhone 12 Proの場合は2万2800円となる。もちろんAppleCare未加入の場合の修理費が高いことを考えればリーズナブルな価格設定だろう。

とはいえちょっとした修理を自分で直したり、あるいは「街の修理屋さん」で直したいという声もあるだろう。「正規のパーツを使い、正規の修理をする」ことでスマートフォンという精密機器を故障なく使い続けることができるというのがメーカーの考えだ。しかし自分で買ったものを自分で修理できないというのはおかしいという考え方もある。自動車の板金修理をいちいちメーカーに出していたらいくらかかるかわからない、というたとえもある。

もちろんスマートフォンはただのIT製品ではなく、24時間常にネットワークにつながり、個人情報などセキュリティーを守る情報端末だ。変な修理で動かなくなってしまっては困るだろうし、いらぬ改造をされるケースもでてくるかもしれない。しかしアメリカでは修理する権利(Right to repair)が叫ばれており、バイデン大統領も法令化に積極的だという。この動きに反対の立場をとるアップルの、共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏もこの権利に対して賛成の意見をビデオを通して明らかにしている。

自分で修理できるということは、一度買ったスマートフォンを長い期間使い続けることができるということだ。これは世界的に広がっているサスティナビリティ=接続可能性の動きにもつながる。例えばバッテリーが劣化したなら自分で交換したいという人もいるだろう。

サスティナビリティに関してはアメリカやアジアよりヨーロッパのほうが考えは進んでいる。
ドイツを拠点とする通信事業者、ドイツテレコムは2021年6月末からバルセロナで開催された世界最大の通信関連イベント「MWC2021」でオーストラリアのスマートフォンメーカー、Fairphoneとの協業を延長すると発表した。

自分でパーツを交換できるFairphone
自分でパーツを交換できるFairphone

Fairphoneは自分でパーツ単位で修理も可能なスマートフォンを展開するメーカーだ。最新モデルの「Fairphone 3+」はチップセットがSnapdragon 632、4G対応、RAM32GB / ROM64GB、3040mAhバッテリー、5.65インチディスプレイ、カメラは4800万画素のシングル。価格は439ユーロ、約5万7000円だ。性能を考えると価格は決して安くはないが、バッテリーのみならず内部のカメラやトップモジュールをパーツごとに自分で交換できる。地球環境にやさしい製品を使いたい、という人をターゲットにしているのだ。

最新モデルのFairphone 3+
最新モデルのFairphone 3+

ドイツテレコムはサムスンとも協業を発表している。サムスンとのバッテリー交換可能な5Gスマートフォンを共同開発するとのこと。詳細は不明だが、2022年に製品は発売予定だという。ドイツテレコムはすでにヨーロッパでサムスンと提携し中古スマートフォンの回収・再利用プログラムを展開しており、今後はリサイクルが容易なスマートフォンを自ら販売しようと考えているのだ。

ヨーロッパでは2021年6月から「Eco Rating」という指標が導入された。ヨーロッパの通信事業者6社と、サムスンなどスマートフォンメーカー12社の製品のリサイクル性などを数字で評価するプログラムだ。ヨーロッパの消費者はこれを見てどのメーカーのどの製品が持続性が高いかを判断することができる。

ヨーロッパで導入されたEco Raging
ヨーロッパで導入されたEco Raging

もちろん全てのスマートフォンをバッテリー交換式にしたり、パーツ交換できるようにするのは難しい。特にハイエンドモデルともなれば、高性能なカメラモジュールの交換時に指先でレンズを汚してしまえば写真の撮影時に影響が出てしまう。重要なのは消費者に選択肢を与えることで、製品ラインナップの中に「自己修理可能」な製品を加えることだろう。修理したい人はその製品を選べばいいわけだ。

また市販製品の自己修理については、アップルが独立系修理店にも正規の修理プログラムを提供するような動きが進むだろう。独立系の修理店が、メーカーにパーツを注文して入手し、それを使って修理できるようにするというわけだ。特にバッテリーに関しては非正規品は低品質のものや、劣化しやすいものもある。品質の悪いバッテリーはスマートフォンの発火を引き起こしかねないだけに、メーカー側が積極的にパーツとして純正品を提供するべきだろう。

ちなみにiPhoneが登場する以前、ノキアが世界(といっても日本・韓国・アメリカ以外だが)の携帯電話市場で圧倒的な強さを誇っていた時、各国には都市の街中に独立系の修理店が多数あり、どこからか入手してきた正規パーツや、非正規の互換パーツを使った修理が横行していた。
もちろん今のスマートフォンと昔の携帯電話では修理の難易度は大きく異なる。しかしそのころは「きっちりした保証と修理をしたい人はノキアのカスタマーケアで修理」「完全に修理できないかもしれないが、安価に済ませたい場合は独立系の修理店を使う」と、修理に関しても消費者側に選択肢があった。

スマートフォンが日用品としてこれだけ普及した今、メーカーにはリサイクル・リユースだけではなく、修理しやすい製品の投入や、安全に自分やサードパーティーによる修理ができる体制を提供することが求められるのではないだろうか。

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