リアルとバーチャルを横断した新たな共同体から生まれる学び【前編】|上松恵理子のモバイル教育事情

リアルとバーチャルを横断した新たな共同体から生まれる学び【前編】|上松恵理子のモバイル教育事情

今回は「働き方」「暮らし方」「学び方」を新しい概念でとらえて起業された丑田俊輔さんにインタビューをしました。これからの教育はグローカルな社会構築が必要だというハバタク株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:丑田俊輔さん)についてお話を伺います。

「働き方」に興味を持ったきっかけ

上松:先日は近未来研究会(*1) にて色々な取り組みを伺いました。時代を先取りした取り組みをされていらっしゃいますね。「働き方」「暮らし方」「学び方」を同時並行的にされていられる中でまずは「働き方」についてお伺いさせていただきます。今、コワーキングシェアオフィスを千代田区でされていらっしゃるんですよね。

ちよだプラットフォームスクウェア コワーキングスペース
ちよだプラットフォームスクウェア コワーキングスペース

丑田:「ちよだプラットフォームスクウェア」という神田にあるシェアオフィス・コワーキングオフィスで、2004年に誕生した会社です。そもそも遡ると、慶應義塾大学商学部2年生の時に学部のインターンシップの科目があったんです。その授業の中でオフィス家具会社のインターンシップをしていて、その経営者が、千代田区の公共施設を拠点に、新しい働き方を提案するプロジェクトを考えていらっしゃったんですね。
まちづくりに寄与する事業体として「非営利型株式会社」というあり方を実践し、取り組みに共感いただいた方々からの出資を元に生まれました。
インターンシップのご縁から、こちらのプロジェクトの面白さに惹かれて、大学在学中にどっぷり関わりはじめました。

上松:慶應義塾大学ではカリキュラムにインターンシップがあるのですね。企業にとっても学生の意見はとても貴重ですし良い機会ですよね。ICT教育の研究を家具メーカーとコラボしたことがあるのですが、意外に最新のテクノロジーに敏感な企業もありますね。それからずっとされていらっしゃったんですか。

丑田:いえ、大学を卒業してから少し離れ、日本IBMで4年ほど働き、グローバル戦略チームでコンサルティングの仕事をしていました。上の子どもが生まることもきっかけに教育に興味を持ち始めて、2010年に「学び方」をテーマとしたハバタク株式会社をつくり、その後2014年からは秋田を拠点に暮らしています。

「暮らし方」と、共創型コミュニティプラットフォーム「シェアビレッジ」

上松:なるほど。ここで「暮らし方」についてもお伺いしたいです。色々な地域の取り組みを見せて頂いたんですが、秋田からはじまった「シェアビレッジ(Share Village)*」はすごいシステムですよね、海外では近いものをみたことがあるけれども、日本ではあのようなコミュニティのシステムってまだまだ少ないのではないでしょうか。これまで地域通貨系の取り組みは打ち上げ花火になりがちで、サスティナブルにやっていくことができる仕組みが求められていると思います。

ShareVillage トップページ
ShareVillage トップページ

ShareVillage 概要

* Share Villageは、コミュニティの立ち上げとコモンズ(共有資源)の運用に最適化した「共創型コミュニティプラットフォーム」。2021年春に、Webとスマホアプリを利用したサービスとして公開された。
URL: https://sharevillage.co/

丑田:はい、確かに日本円と比べたお得感で地域通貨をつくっても、なかなか普及しなかったり長続きしないことは多そうですね。Share Villageは、自治体の枠組みではなく、コミュニティ単位で独自のコインを発行できるようにしています。

上松:脱自治体ですね。

丑田:自分は秋田で生まれたのではないことや、旅や仕事で移動する機会が多いこともあり、「暮らし方」を少し俯瞰的に見ているのかもしれません。自治体の枠にとらわれない新たな村をつくってみたり、住んでいないけれど特定の地域やコミュニティに参加したり愛着を持ったりすることもありだと思って。

上松:秋田にお住まいとは千代田区とかなり離れていますね。奥さんのご出身なのでそれで五城目町なんですか。

丑田:いえ、秋田出身ではあるのですが、五城目町ではないんですよね。ちよだプラットフォームスクウェアの中に「市町村サテライトオフィス東京」という、全国の自治体がシェアする区画があるのですが、五城目町と千代田区が姉妹都市ということもあって、企業誘致の拠点がここに設置されました。そのご縁から町に遊びに行って、一目惚れしたんですよね。
五城目町は観光地でないこともあり、里山の暮らしが淡々と続いていること、秋田空港まで40分、市内までも30分でアクセスも比較的いい。暮らしや子育ての環境としても、仕事の環境としても、バランスがいいなと思います。

リアルとバーチャルをシームレスに繋ぐシェアビレッジ

シェアビレッジ町村上松:なんか直観というか、ここがいいと魅せられた経緯がわかりました。ちなみに私はエストニアへ数回取材や視察に行ったのですが、電子政府なので土地のこだわりがないし、クラウド上でやるのですよね。五城目町という場所にどのくらい依拠しているんでしょうか。

丑田:もともとシェアビレッジは、五城目町の茅葺古民家を舞台に、「年貢」という会費を納めた会員ならぬ「村民」が第二の田舎を持つことで、都会と田舎がつながり学び合うコミュニティをつくるプロジェクトがはじまりでした。2015年に開村し、2500人ほどの村民が参加する「村」に育っていきました。

上松:すごい人数が集まったんですね。年貢まであるとは。

丑田:近代の共同体やコミュニティには、人間を土地で捕捉し、効率的に統治するための村や行政という側面もあるけれども、もともと縄文時代くらいまで遡ると、生き延びるための人間の群れであり、土地の移動もしながら一緒に暮らすということもあったはず。
こういった文脈も眺めながら、ある程度の生存が担保されつつデジタル技術も登場した21世紀に村を再定義するとしたら、リアルとバーチャルを横断しながら、プレイフルな気持ちを原動力に生まれていく新たな共同体では無いかと思っていて。

上松:まさにこれからの村の概念ですね。クラウド上でプラットフォームを作ることで場がリアルとバーチャルでシームレスになるというところが。

丑田:暮らしの中に、公でも私でもない「コモン」がもっと増えたらいいなと思っています。コモンズとしてシェアするのは古民家じゃなくてもよくて、山、温泉、食堂、農地、住宅など有形資産かもしれませんし、はたまたバーチャル上の無形資産かもしれません。
物理的な行政区や住民票を越えて多様な人が集う新たな「村」が生まれたり、一人が複数の「村」に所属することも当たり前となっていくと思います。

上松:ところで、デジタルが過ぎるとかつてのセカンドライフみたいになるのでしょうか。

丑田:「あつまれどうぶつの森」で放課後にバーチャル空間で集まる子どもたちを見ていると、リアルな空間とシームレスになっていくように感じますね。

上松:私は大震災で村を離れてそこでプツっと人間関係が切れるのっておかしい、と思っていたんですよね。誰かクラウド上でもプラットフォームを作って何かできなかったのかなと思います。色々とすごいですよね、将来ブロックチェーンみたいにするんですか。
本来ならそういったスパイラルを地域でまわして還元できたらと思うんですよね。

丑田:そうですね。まだまだはじまったばかりの取り組みですが、このプラットフォーム自体をコモンズとして、参加してくださる方々と共に育てていきたいです。

*1 近未来研究会は2015年に発足(岸田徹代表)。未来がどうなるかという予測と、未来をどうつくっていくかという構想の2つの側面で未来を考え、10年ないし15年後程度の近未来にしぼり、日本の未来シナリオについて自由闊達に意見交換をする場である。

近未来研究会メンバー(2021年8月現在:敬称略)
• 粟飯原理咲 アイランド代表取締役(「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」など主宰)
• 荒木貴之 ドルトン東京学園中等部・高等部校長
• 石原昇 ロボット革命イニシアティブ協議会有識者メンバー、名古屋商科大学客員教授
• 上松恵理子 武蔵野学院大学准教授(ICT 教育、コンピュータ・リテラシー)『小学校にプログラミングがやってきた! 』『小学校にオンライン教育がやってきた! 』など
• 丑田俊輔 プラットフォームサービス代表取締役、ハバタク代表取締役
• 岸田徹(本研究会代表)ネットラーニンググループ代表、一般財団法人オープンバッジ・ネットワーク代表理事、NPO 法人 Asuka Academy 代表理事
• 北原まどか 特定非営利活動法人森ノオト理事長
• 久米信行 iU 情報経営イノベーション専門職大学教授、多摩大学客員教授、明治大学講師、未来学会理事、久米繊維工業相談役『すぐやる!技術』など
• 阪井和男 明治大学法学部教授(情報学、情報組織論、複雑系科学、場の言語学、死生学など)
• 下川和男 イースト取締役会長、日本電子出版協会副会長
• 関口和一 MM 総研代表取締役所長、日本経済新聞客員編集委員(元編集委員・論説委員)、法政大学大学院客員教授、国際大学グローコム客員教授
• 高橋明子 (株)エンパブリック、亜細亜大学都市創造学部非常勤講師、総務省地域情報化アドバイザー
• 田辺恵一郎 プラットフォームサービス相談役
• 坪田知己 元日経メディアラボ所長、『2030 年メディアのかたち』『21 世紀の共感文章術』など
• 服部桂 元朝日新聞ジャーナリスト学校シニア研究員 近著『VR 原論』、『マクルーハンはメッセージ』、訳書『<インターネット>のつぎに来るもの』など
• 藤元健太郎 D4DR 代表取締役社長、関東学院大学非常勤講師、Plantio 共同創業者、日経 MJ で「奔流 e ビジネス」連載、『ニューノーマル時代のビジネス革命』
• 村上憲郎 元 Google, Inc.副社長兼グーグル株式会社代表取締役社長、ネットラーニングホールディングス社外取締役、『クオンタム思考』
• 校條諭(本研究会コーディネーター)メディア研究者、ネットラーニング HD 社外取締役、NPO 法人みんなの元気学校代表理事、『ニュースメディア進化論』
• 山田昌弘 中央大学文学部教授(家族社会学)、読売新聞人生案内レギュラー解答者、『結婚不要社会』、『新型格差社会』など
• 米山公啓 作家・医師、著書 300 冊以上、近著『長生きの方法〇と×』、『幸せ運ぶコーヒータイム』、『看取り医独庵』(ペンネーム根津潤太郎)
• 事務局他


後編につづきます。

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