スマホの苦境をIoT製品で乗り越えようとするファーウェイ|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマホの苦境をIoT製品で乗り越えようとするファーウェイ|山根康宏のワールドモバイルレポート

ファーウェイのスマートフォンビジネスはアメリカ政府の制裁を受け苦境に陥っている。2019年にアップルを抜き世界シェア2位となったものの、2021年に入ると5位以下にシェアは急減してしまった。
新製品を思うように出せないことが原因であり、特に5Gに対応した製品はチップセットの供給ができないことから止まってしまった。
iPhoneはメインモデルがすべて5G対応、他のメーカーも上位モデルのみならずミドルレンジモデルも5G対応が当たり前の中、ファーウェイが8月に発売した「P50 Pro」は世界最高のカメラ性能を誇るにもかかわらず、5Gには対応していない。

ファーウェイ「P50 Pro」。カメラ指標の1つ、DXOmarkで世界トップのカメラ性能を誇る
ファーウェイ「P50 Pro」。カメラ指標の1つ、DXOmarkで世界トップのカメラ性能を誇る

2021年にファーウェイが発表したスマートフォンは、新製品の数が激減しているうえに、昨年モデルを4Gに変更したダウングレードモデルばかりとなっている。ファーウェイの中国のオンラインストア「Vmall」を見てもスマートフォンのラインナップに目新しさは感じられない。他の中国メーカーはほぼ毎月のようにハイエンド、ミドルレンジ、エントリーモデルと新製品を投入しており、しかも5Gに対応している。ファーウェイはそれらと比べるとどうしても見劣りしてしまうのだ。

とはいえファーウェイのスマートフォン開発技術は今でも高い。それはフラッグシップモデルP50 Proを見れば明らかである。カメラ性能だけではなく美しい色表現ができるディスプレイ、高速充電と効率的な省エネモードによる長時間の利用、さらには本体の質感の高さなど、P50 Proが中国以外で発売されないのはもったいないと筆者は思ってしまう。

P50 Proは性能だけではなく本体の仕上がりも美しい
P50 Proは性能だけではなく本体の仕上がりも美しい

政治的な問題が解決しない限り、ファーウェイが以前のような栄光を取り戻すことは難しいだろう。しかしいつかくるその日まで、ファーウェイはコンシューマー向けのビジネスを決してあきらめていない。スマートフォンが苦戦する中で、スマートフォン以外の開発にも大きな力を入れている。

ファーウェイはコンシューマー向け製品を分類し、「1+8+N」戦略を展開している。「1」はスマートフォンで、全ての製品の中心となる。しかし現時点ではその中心製品の開発が停滞しており、方向展開を強いられている。

1+8の「8」はスマートフォンと直接接続できるIT機器であり、「PC」「タブレット」「TV」「オーディオ」「スマートグラス」「スマートウォッチ」「スマートカー」「ヘッドフォン」だ。ファーウェイはスマートフォンよりもこれらの製品に現在注力している。

スマートウォッチは腕時計型の「Huawei Watch」が電池の持ちの良さを武器に世界中で人気になっており、精力的に新製品を出している。リストバンド型の「Huawei Band」も低価格モデルに加え、ディスプレイサイズを1.47インチの長方形として表示エリアを広げた「Huawei Band 6」を投入し話題となった。

ウェアラブル製品のバリエーションを増やしたことで、世界のスマートウォッチ市場のシェアは2019年、2020年と連続してアップルに次ぐ2位となった(カウンターポイント調査)。TWSなどヘッドフォンを含めたウェアラブル全体でもアップル1位、低価格モデルを中心に展開するシャオミが2位、そしてファーウェイは3位だ。

Huawei Watchを始めとするファーウェイのウェアラブル製品はグローバルでも売れている
Huawei Watchを始めとするファーウェイのウェアラブル製品はグローバルでも売れている

PCは中国政府とマイクロソフトの関係が良好なこともあってか、Windows OSを搭載したモデルを今でも定期的に販売している。新型コロナウィルスによる巣ごもりの影響を受け、PCの販売は好調だ。なおファーウェイのPCは2019年ころ、制裁の影響からWindowsではなくLinux OSを搭載した時期もあったが、現在はWindowsに戻っている。
ファーウェイのPCはさすがにまだグローバルでは存在感は低いものの、中国国内だけを見ればレノボに次いで2位だ。一方タブレットは中国国内2位、グローバルでは3位につけている。

さてTVは日本人がイメージするTV放送を受診するTVではなく、ネットアクセス機能を持つスマートTVやスマートモニターだ。6月にはHarmonyOS 2デバイスをシームレスに接続できる「MateView」を発表。日本でも発売されたが28.2インチ、3:2の4K+ディスプレイにタブレットやノートPC、スマートフォンも接続できる。海外ではファーウェイがこれまで不得意としていた、PCショップなどでも販売が行われているが、他社にはない性能のディスプレイであり注目を集めそうだ。

このようにスマートフォンメーカーとして知られるファーウェイも、1+8+N戦略の「8」の部分にフォーカスした製品を次々と出しており、ファーウェイ以外の製品でも利用してもらおうと様々な製品をラインナップに加えている。ファーウェイのスマートウォッチやMateViewのようなスマートモニターは、性能のいい製品として売れ行きを伸ばしていくだろう。

ファーウェイの中国のオンラインストアVmall。スマートフォン以外の製品の取り扱いも多い
ファーウェイの中国のオンラインストアVmall。スマートフォン以外の製品の取り扱いも多い

1+8+N戦略の最後の「N」はIoT製品だ。これはファーウェイ製品に限らず、スマートホームなど様々なメーカーの製品をファーウェイのIoTプラットフォーム「HiLink」でつなぐもの。すでにHiLink対応製品は800以上のメーカーから2億台以上が出荷され利用されている。

ファーウェイはHarmonyOS 2をスマートフォンだけではなくタブレット、スマートウォッチ、スマートTV、そしてIoT製品にも広げることを発表している。これによりファーウェイは1+8+N戦略のほぼすべての製品にHarmonyOSを搭載し、シームレスなIoTエコシステムを完成させようとしている。もちろんエコシステム拡大のためにはスマートフォン新製品を定期的に投入する必要があるが、スマートフォンが苦境の今はむしろスマートフォン以外の製品の開発に力を入れることで、エコシステム全体の底上げを計ろうとしているのだ。

今後しばらくはファーウェイのスマートフォン新製品は年に1-2機種程度しか出てこないかもしれない。だがスマートフォン以外の製品は他メーカーのスマートフォンを使っているユーザーにとっても興味ある製品が次々と出てくるだろう。こんな状況だからこそ、ファーウェイからは目を離してはいけないのだ。

3:2の4K+モニター「MateView」は他社のPCやスマートフォンユーザーも興味を持つだろう
3:2の4K+モニター「MateView」は他社のPCやスマートフォンユーザーも興味を持つだろう

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