2年で実用性ある製品になった折りたたみスマホ、その歴史を振り返る(前編)|山根康宏のワールドモバイルレポート

2年で実用性ある製品になった折りたたみスマホ、その歴史を振り返る(前編)|山根康宏のワールドモバイルレポート

サムスン折りたたみスマートフォンGalaxy Z Flip3 5G」「Galaxy Z Fold3 5G」が日本でも発売になった。アップルの「iPhone 13」シリーズ発売後ではあるものの、市場での評判は高いようだ。

この2機種は、サムスンの母国である韓国では発売後39日で販売台数100万台を突破。筆者の住む香港では9月8日の販売初日は予約数完売で、入荷まで2週間待ちだったほど。折りたたみスマートフォンはどちらかといえばマニア向きというイメージもあったが、サムスンのこの2製品は普通のスマートフォンとして多くの一般消費者に受け入れられているようだ。

Galaxy Z Fold3 5GとGalaxy Z Flip3 5G
Galaxy Z Fold3 5GとGalaxy Z Flip3 5G

韓国における100万台の販売台数の内訳は、70万台が縦折りのGalaxy Z Flip3 5G、残りが横開きのGalaxy Z Fold3 5Gだ。Galaxy Z Flip3 5Gは特に女性層に売れているようで、香港でもサムスンストアや家電店では女性が手にしている姿をよく見かける。
以前「Galaxy Z Flip3 5G登場、折りたたみスマートフォンが「フツーのスマホ」になった」で書いたように、Galaxy Z Flip3 5Gの登場で折りたたみスマートフォンはもはや特別な製品ではなくなったのだ。

このようにわずか2年で実用性ある製品になった折りたたみスマートフォン、その短いながらも急激に進歩した歴史を今回の前編、次回の後編の2回でお届けする。

折りたたみスマートフォンの登場とメーカーの競争

折りためるスマートフォンとしては、2011年2月に京セラが「Kyocera Echo」をアメリカ向けに、同年9月にソニーが「Sony Tablet P」を発表。ただしどちらもディスプレイを2枚搭載しており、ディスプレイが曲がるものではなかった。
その後サムスンが2013年1月にラスベガスで開催されたCES2013でディスプレイが曲がるスマートフォンのコンセプトビデオを公開。ディスプレイメーカーでもあるサムスンの発表に大きな期待が寄せられた。

京セラのKyocera Echo。2枚のディスプレイを畳める構造だ
京セラのKyocera Echo。2枚のディスプレイを畳める構造だ

しかしディスプレイを曲げる、しかも新聞や雑誌のように、閉じるように曲げられるディスプレイの実用化は容易ではない。
LGは2013年10月にディスプレイを湾曲させたスマートフォン「LG G Flex」を発表するが、サムスンはあわててその直前に「Galaxy Round」を発表。「曲がるディスプレイ世界初」の栄誉を何としてでも勝ち取りたかったのだろう。

そしてそれから5年。2018年10月7~8日にサムスンが行った開発者会議「Samsung Developer Conference 2018」でサムスンが折りたたみスマートフォン(折りたたみディスプレイ)の試作モデル発表。すぐに量産化を始めるというアナウンスを行い、ついに折りたたみスマートフォンが夢から現実のものになる日が近づいてきた。

サムスンが初公開した折りたたみスマホ(Samsung Developer Conference 2018の公式動画より)
サムスンが初公開した折りたたみスマホ(Samsung Developer Conference 2018の公式動画より)

このサムスンの発表を受け、すぐに動きを見せたのが中国のRoyoleだ。11月1日にいきなり折りたたみスマートフォン「FlexPai」を発表し、一気に話題のメーカーおよび製品となった。年明けの2019年1月のCES2012ではRoyoleブースは入場制限を行うほどの来客を集め、サムスンの折りたたみスマートフォンの話題を消し去るほどだった。

RoyoleのFlexPai。一躍世界中から注目される製品となった
RoyoleのFlexPai。一躍世界中から注目される製品となった

しかし2月20日にバルセロナでサムスンは折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」を正式に発表。その数日後にファーウェイが「Mate X」を発表。世界シェア上位2社が相次いで折りたたみスマートフォンを出したことで、Royoleの存在感は一気に薄くなり、CES2019の熱狂から1か月半後に行われたMWC2019のRoyoleブースは閑古鳥が鳴くほどだった。
Royoleはその後2020年に後継モデル「FlexPai 2」を発表するものの、以前ほどの注目を集めることはできていない。

一方、2019年11月にはモトローラから縦折り式の「moto razr」が発表。世界初の縦折り式であることに加え、モトローラの往年の名機「RAZR(レーザー)」と同じ製品名やデザインコンセプトを踏襲したこともあって大きな話題となったのだ。

moto razr。世界初の縦折り式スマホだ
moto razr。世界初の縦折り式スマホだ

このように2018年末から2019年にかけて、4社から折りたたみスマートフォンが相次いで登場したことで市場は「これからは折りたたみスマホだ」という話でもちきりになる、はずだった。
現実的には折りたたみスマートフォンはポジティブな評価よりネガティブ評価が目立ち、各社とも販売数は思わしくなかった。

曲がるディスプレイの問題点と改良

サムスンのGalaxy Foldは当初夏前に発売される予定だった。しかし4月にレビューとして先行提供された初期モデルはディスプレイと本体のヒンジ部分に隙間があり、そこから異物の混入や針などを入れてしまうとディスプレイがはがれてしまう問題が明らかになった。そのため製品に改良を加えた結果、発売は9月にずれ込んだ。
ようやく登場したサムスンの折りたたみスマートフォンに大きな注目が集まったが、ディスプレイ表面がガラスではなく樹脂素材だったこともあり傷がつきやすく、気を使いながら使わねばならなかった。

ディスプレイに気を使いながら使う必要のあったGalaxy Fold
ディスプレイに気を使いながら使う必要のあったGalaxy Fold

モトローラのmoto razrも同じ問題があり、ディスプレイの強度不足から破損例が報告されたり、ヒンジ部分からの異音を気にする購入者の声も聞かれた。moto razrはGalaxy Foldとは異なり、ディスプレイのヒンジ部分は本体に固定されておらず、本体を折るとヒンジの内側に曲がったディスプレイの伸びしろが逃げるという構造を取った。これによりGalaxy Foldにみられる、ディスプレイのヒンジ部分の「折り曲げのスジ」が見えず、伸ばしたときも1枚の美しいディスプレイに見えるのだ。しかしその反面、構造上ディスプレイの強度を高めることが難しい。

ファーウェイのMate Xはそもそも販売数が少なく、中国以外での販売は少なく入手が困難だった。また中国での価格は16999元(当時約26万円)と高く、購入者は限られていた。そのためせっかく出したMate Xも、実際に製品を目にした人の数は多くなかったようだ。

ファーウェイMate Xは市場に出てきた数はわずかだった
ファーウェイMate Xは市場に出てきた数はわずかだった

そしてRoyoleのFlexPaiは、これも中国限定の販売となった。グローバルからの購入は「開発者モデル」という名前で売られたが、これはグーグルサービス非搭載など中国外の一般ユーザーには使いにくい製品であったことから、「商用製品ではなく、開発者向けのもの」という名目で売ったようだ。
FlexPaiもディスプレイ強度は弱く、しかも外側に折りたたむため、畳んだ状態ではその弱いディスプレイが外側両面にあり、そのままポケットに入れるだけで傷がついてしまう恐れがあった。さらに折りたためるといってもヒンジ部分の径はかなり大きく、畳んだ状態でもかなり膨らんだサイズとなる。
大手メーカー3社の製品に比べ、完成度は低かった。

このように各社の最初のモデルは商用レベルとして考えると難点のある製品だった。しかし各社はもちろん改良を加え、翌年には完成度のより高まった製品を出していったのだ。その話は後編として次へ続く。


スマホの形状に関する記事については下記もご覧ください。

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