2年で実用性ある製品になった折りたたみスマホ、その歴史を振り返る(後編)|山根康宏のワールドモバイルレポート

2年で実用性ある製品になった折りたたみスマホ、その歴史を振り返る(後編)|山根康宏のワールドモバイルレポート

サムスン折りたたみスマートフォンGalaxy Z Flip3 5G」「Galaxy Z Fold3 5G」が日本でも発売になった。製品の完成度は高く、日本以外の各国でも販売は好調なようだ。登場からわずか2年で実用レベルに達した折りたたみスマートフォン、2年間の動きを今回もお届けする。なお前回の第一回から読まれることをお勧めする。

折りたたみスマートフォンの改良とブランド化

2019年末までに4社から4機種登場した折りたたみスマートフォンは、2020年に入ると各社改良を加えていき、完成度を一気に高めていった。中でも最も活発な動きを見せたのがサムスンだ。サムスンはこの年、新たに縦折り式のスマートフォンも投入し、折りたたみスマートフォンメーカーの中で唯一「横開き式」「縦折り式」の2機種を発売するメーカーとなった。

2021年2月にサムスンは「Galaxy Z Flip」を発表。モトローラに次ぐ縦折り式のスマートフォンだが、Galaxy Foldと比べ折りたたみディスプレイに大きな改良がくわえられた。まずは最大の弱点だったディスプレイの弱さを改良。表面に超薄型のガラス(Samsung Ultra Thin Glass)を張り付けることで強度を大幅に増した。

折りたたみスマートフォンの完成度が増したGalaxy Z Flip
折りたたみスマートフォンの完成度が増したGalaxy Z Flip

また各社の折りたたみスマートフォンは「開くか、閉じるか」の2通りでしか利用できなかったが、好きな角度に折り曲げて使えるようにヒンジを改良した。Lの字型に畳み、上側、下側それぞれに別のアプリを表示したり、1つのアプリを「上側が表示」「下側がコントロールボタン」のように2つの画面で表示できるFlex Modeも搭載。机の上に置いたまま写真を撮る、といったことも可能になった。

8月に発表した「Galaxy Z Fold2 5G」は、初代のGalaxy FoldにこのGalaxy Z Flipの改良点を加えた製品となり、折りたたみスマートフォンの使い勝手がさらに進歩した。また外観もマット仕上げの高級感ある表面としたことで20万円台という高価格なスマートフォンらしい質感を持った製品となった。加えて閉じたときの外側ディスプレイのサイズも4.6インチから6.2インチへと大型化し、閉じたときでもフルにスマートフォンとして使えるようになったのだ。

サムスンはまたこれらの折りたたみスマートフォンにブランドコラボ製品を投入。ニューヨーク発のファッションブランド「Thom Browne」と提携したモデルも限定発売した。専用のパッケージにThom Browneカラーの本体や内蔵のテーマ、さらにスマートウォッチもバンドルした製品で、価格はGalaxy Z Flip版が30万円前後、Galaxy Z Fold2版が40万円前後と高価にもかかわらず、完売したという。
折りたたみスマートフォンをテクノロジーの進化したモデルというだけではなく、ブランド品として所有する価値のある製品にサムスンは作り上げたのだ。

サムスンは折りたたみスマートフォンをブランド品にした
サムスンは折りたたみスマートフォンをブランド品にした

サムスンの動きに対し、ファーウェイは2月に「Mate Xs」を発表、Mate Xのヒンジ部分の改良などマイナーチェンジにとどまったが、グローバル販売を本格的に開始した。ファーウェイのMate X / Mate Xsはサムスンの内折り式とは逆の外折り式で、閉じたときも大きな画面を使えることが一つの売りでもあった。
しかしアメリカ政府の制裁を受けて以降はグーグルサービスを搭載できず、グローバルでの販売数は伸びていない。

縦折り式で追いつかれたモトローラは9月に「moto razr 5G」を発表。こちらもディスプレイ強度を増した。やはり折りたたみスマートフォンはディスプレイのユーザーエクスペリエンスが一般的なスマートフォンと変わらないものでなければなかなか受け入れられないのだろう。

そしてRoyoleも9月に「FlexPai 2」を発表。初代モデルとは異なり、折りたたむと隙間なく畳める形状としたことで使いやすくなり、デザインも向上した。また自社だけでの販売から拡販にも動き、中国のキャリア、中国電信との販売協業をはじめた。
さらにはODMとして他社ブランド品での製品供給も開始。折りたたみスマートフォンは最新技術を搭載した高価格な製品と言うことで、中国の高級スマートフォンブランドであるKretaから「V11V」が、また同じく高級スマートフォンのVertuから「Axyta Fold」としてFlexPai 2が販売されている。

FlexPai 2の別ブランドモデル、Kreta V11V
FlexPai 2の別ブランドモデル、Kreta V11V

2020年の折りたたみスマートフォンはディスプレイ周りの改良がくわえられ、一歩ずつ実用製品へと近づいて行った。そして2021年にはついにあの「話題のメーカー」からも折りたたみスマートフォンが発売になり、ついに参入メーカーは5社となった。

2021年、シャオミの参入

2021年に最初の動きを見せたのはファーウェイで、2月に「Mate X2」を発表した。それまでの外折り方式のディスプレイをやめ、サムスンと同じ内折り方式へと変更したモデルだ。外折り方式ではやはり畳んだ時にディスプレイがむき出しになることから、どうしても傷や破損問題を避けられなかったのだろう。
サムスンのFoldシリーズよりもメリットがある、と対抗心をむき出しにしていたファーウェイだが、結局は同じスタイルで競争を行うことになったのだ。

内折り式となったファーウェイMate X2
内折り式となったファーウェイMate X2

なおファーウェイはアメリカ政府の制裁により5Gスマートフォンの生産が事実上できなくなっており、またスマートフォンの心臓部であるチップセットも他社に頼らざるを得なくなっている。Mate X2も当初は5G版として発表されたが、その後中国では4G版が発売。生産数も伸ばせず、グローバルではグーグルサービス非搭載のこともあり、このMate X2は製品スペックは高いものの販売面では思わしい数を残せなかったと思われる。

2021年上半期の折りたたみスマートフォン市場で最大の話題を奪ったのはシャオミだ。
3月に発表された「Mi MIX Fold」はシャオミらしい製品だ。開いたディスプレイサイズは8.01インチで、サムスンGalaxy Z Fold2 5Gの7.6インチ、ファーウェイMate X2の8インチより大きい。Mate X2との差はわずか0.1インチだが、シャオミは「世界最大の折りたたみスマートフォン」と堂々とアピールできたのだ。

シャオミもついに折りたたみスマートフォンに参入
シャオミもついに折りたたみスマートフォンに参入

また価格は9999元(当時約17万円)。20万円を切る価格は破格であり、しかも中国で1万元を切る4桁価格はハイエンドコスパ端末を次々と送り出すシャオミらしい値段設定だった。開いた時は複数のアプリを個別のウィンドウで表示できるデスクトップモードも搭載するなど使い勝手も高めており、大衆製品に近づいた折りたたみスマートフォンと言える。
とはいえこの価格で出すのはやはり無理があったのか、中国国内の販売にとどまっている。

誰もが使える、完成度の高い折りたたみスマートフォンへ

このように新たにシャオミという大きなライバルが登場した市場で、サムスンが出した答えは「これまでにはない折りたたみスマートフォン」だ。
まず縦折り式のGalaxy Z Flip3 5Gは1000ドルを切る999.99ドルで登場。iPhoneの上位モデルよりも安く、ハイエンドスマートフォンとしても普通の価格になった。ディスプレイもさらに表面のガラスの強度を増し、閉じたときの外ディスプレイも大型化した。折りたたみスマートフォンは高くて壊れやすい、という常識を覆したのだ

一方、Galaxy Z Fold3 5Gは折りたたみスマートフォンとして初めてスタイラス入力に対応。すなわちディスプレイの強度をさらに増したのだ。これにより普段開閉操作をするときでも気を遣わずに使うことができる。また内側のディスプレイはカメラをディスプレイ埋め込み式にしたことで全画面表示が可能になった。もちろん質感も高まっている。価格はまだ20万円前後ではあるものの、高性能スマートフォンとして考えれば決して高いとは言えないだろう。

現時点で最高の完成度を誇る折りたたみスマホ、Galaxy Z Fold3 5G
現時点で最高の完成度を誇る折りたたみスマホ、Galaxy Z Fold3 5G

Galaxy Z Flip3 5G、Galaxy Z Fold3 5Gの登場で、折りたたみスマートフォンはついに「誰が買っても普通に使える」レベルの製品になった。これはようやくスタート地点、ゼロレベルの製品になったということでもある。
この2つの製品の完成度は非常に高いが、まだまだ改良すべき点はいろいろとあるだろう。噂ではグーグルやOPPOも折りたたみスマートフォンを投入予定とのこと。他のメーカーにはぜひともこの2製品を超える折りたたみスマートフォンを出してほしいものだ。


前編はこちらからご覧ください。

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