大手メーカー参入やカラー化で面白くなる電子ペーパーディスプレイ|山根康宏のワールドモバイルレポート

大手メーカー参入やカラー化で面白くなる電子ペーパーディスプレイ|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォンやタブレットのディスプレイ液晶有機ELのどちらかが使われている。「液晶」がディスプレイの代名詞のように使われることがあるが、この2つは技術的には全く別のものである。
背面にライトがありカラーフィルターを通して色を表示するのが液晶であるのに対し、有機ELは一つ一つの素子がRGB(赤・緑・青)に点灯し色を表示する。黒い色を表示する際、液晶はフィルターを使ってライトの色を遮るが、有機ELはすべての素子の点灯を消灯する。「有機ELは黒い色が引き締まって見える」のはそのためだ。

だが世の中にはこの2方式以外のディスプレイもある。それが電子ペーパーだ。電子ペーパーはその名の通り、ペーパー=「紙」を電子化したものである。新聞や雑誌、書籍に使われる紙は発色しないのと同様に、電子ペーパーもバックライトや素子が光ることはない。外部の光があるときのみ表示を見ることができるのだ。光を直接見ないため、電子ペーパーは目に優しいディスプレイでもあるのだ。
とはいえそれでは不便だろうと、電子ペーパーディスプレイにはフロントライトを内蔵したものがある。これは読書時に使うクリップ式のライトのように、電子ペーパーの表面を照らすライトだ。

電子ペーパーはアマゾンの電子ブックリーダー「Kindle」シリーズで使われていることから知っている人も多いだろう。だがモノクロ表示しかできないことから、Kindleもタブレット版が販売されている。
しかし電子ペーパーは電池の持ちがいいことや、文字を読むのに適したディスプレイのため根強い人気がある。そしてこの電子ペーパーも採用するメーカーが増え、またカラーに対応したものが出てくるなど用途が拡大しようとしている。

電子ペーパーの主な用途は電子ブックリーダーで、電子書籍やコミックを読む用途に使われる。しかしその用途ならばスマートフォンやタブレットでも代用できる。また漫画を読むためだけに電子ペーパー端末を買うのも面倒なものだ。
そこで最近は電子ペーパーをノート代わりに使えるような、ペン対応のタブレットにした製品が増えている。

ONYXの「Nova Air」は日本でも発売中だ
ONYXの「Nova Air」は日本でも発売中だ

Kindleほど有名ではないものの、電子ペーパータブレットを長年手掛けているONYXの製品は日本でも正規に販売されている。最新モデルの「Nova Air」は7.8インチの電子ペーパータブレットで、もちろんペン入力ができる。
厚さは6.3mmと薄く、重量も235gと最近の大型スマートフォンと変わらない重さだ。Android OSで動くのでアプリを入れることもできる。
電子ペーパーなら本当のノートに文字を書いているかのような感覚で手書きができ、Google KeepやOne Noteなどのアプリを使って書いたデータを他のスマートフォンやPCでも活用できる。

Nova Airの価格は4万3800円。ライバルとして考えられるのはアップルの最新版の「iPad mini」になるが、本体は5万9800円、Apple Pencilが1万5950円なので合計7万5750円となる。
タブレットを様々なことに使いたい人ならiPad miniのほうがいいが、デジタルノートとして常にメモを書く用途に専念したいのであればNova Airも強力なクリエイティブツールになる。空いた時間に電子ブックを読みたい、なんて人ならおすすめの製品だ。

中国では電子ペーパー搭載のペン入力タブレットが数社から出ており、手書きノート需要は意外と高いようだ。翻訳機を主に展開しているiFlytekは10インチ電子ペーパータブレット「T2」を販売中で、翻訳機能などと組み合わせたビジネスタブレットとして展開している。カバーを装着した外観は高級ステーショナリーのようでもあり、ビジネスシーンで使っても違和感ないだろう。

iFlytekの高級タブレット「T2」はビジネスユースをターゲット
iFlytekの高級タブレット「T2」はビジネスユースをターゲット

この他にも複数のペン対応電子ペーパータブレットが中国で販売されているが、スマートフォン大手でもあるファーウェイも同様の製品を開発中といううわさが流れている。スマートフォンの販売にブレーキがかかっている今、新しいジャンルの製品に活路を見出そうとしているのだろうか。
なおファーウェイのタブレットのディスプレイは新しい素材とも言われており、視野性と書き味に優れた製品が出てくるかもしれない。期待したいものだ。

なおシャオミも中国で電子ペーパータブレットを出しているが、ペン入力には対応せずリーダーとしての用途にとどまる。シャオミは日本でも10インチのタブレット「Xiaomi Pad 5」を販売したが、タブレットの下位モデルとして電子ペーパーモデルをラインナップに加えているのだろう。

シャオミも電子ペーパータブレットを出しているが、ペンは非対応だ
シャオミも電子ペーパータブレットを出しているが、ペンは非対応だ

さて電子ペーパーはタブレットだけのものではない。これも中国では家電メーカーのハイセンスが電子ペーパー搭載のスマートフォン「Aシリーズ」を展開している。しかもハイセンスはカラー電子ペーパーを搭載し、モノクロ表示しかできないという電子ペーパーの弱点を克服した製品を投入しているのだ。

最新モデルの「A7CC」はディスプレイサイズが6.7インチあり、タブレット代わりにもなる大きさだ。しかしカラー電子ペーパーで表示できる色数は4096色。イラストや絵の表示には向いているが、写真表示はやや厳しい。また動画の再生も液晶や有機ELのようにスムーズとはいかない。逆にゲームの利用にも向いていないため、ハイセンスは学習用スマートフォンとしてカラー電子ペーパースマートフォンを展開したいようだ。

ハイセンスのカラー電子ペーパースマホ「A7CC」。色の表現には限界がある
ハイセンスのカラー電子ペーパースマホ「A7CC」。色の表現には限界がある

実は最初に紹介したONYXからもカラー電子ペーパーを搭載したタブレット「BOOX Nova3Color」が発売されている。数色のカラー表示された電子コミックを読むときや、電子メモを取るときにペン先の色を変えたり、PDFの修正指示に赤を入れるという用途に向いている。

カラー電子ペーパータブレット「BOOX Nova3Color」
カラー電子ペーパータブレット「BOOX Nova3Color」

このように電子ペーパーも今やカラー表示ができる時代になってきた。
しかし液晶や有機ELなどのカラー表示とは発色技術も異なるため、同じような鮮やかな表示は難しい。とはいえより鮮明なカラー表示ができればカラー電子ペーパーの用途も広がるだろう。
そこで開発されたのが「Display Electronic Slurry (DES) 」方式というカラー電子ペーパーで、Falconから「TopJoy Butterfly」というタブレット2種類が海外や日本のクラウドファンディングで資金調達を行っている。

DES方式のカラー電子タブレット「TopJoy Butterfly」
DES方式のカラー電子タブレット「TopJoy Butterfly」

TopJoy Butterflyのディスプレイを見ると色の表示はたしかにくっきりとしており、写真表示まではいかなくともカラーのイラストなどは美しく表示できそうだ。電子コミックリーダーとして使うのも悪くないだろう。
製品がまだ出てきていないためどの程度の視野性があり、また画面の書き換え速度がどの程度なのかも未知数だが、電子ペーパー端末の普及を広げる起爆剤的な製品になる可能性は高い。
数年後はアマゾンのKindleもカラーモデルが当たり前になっているかもしれない。

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