半導体不足でもシェア1位を死守するvivoのスマホ投入戦略|山根康宏のワールドモバイルレポート

半導体不足でもシェア1位を死守するvivoのスマホ投入戦略|山根康宏のワールドモバイルレポート

世界的な半導体不足により、アップルはiPhone 13シリーズの減産を余儀なくされるというニュースが世界中を駆け巡った。また、アップルはiPhoneにチップセット供給を回すためiPadの減産も行うようだ。
アップルにとって毎年第4四半期は1年を通じて唯一、出荷台数でほかのメーカーを抜き去るチャンスがある時期だが、2021年に限っては9月に新製品を投入するという毎年恒例のスケジュールが大きく足を引っ張る格好になってしまった。

とはいえこの状況はほかのスマートフォンメーカーにとっても同じことだ。しかし中国メーカーは製品投入サイクルに柔軟性を持たせ、年間を通じて売れ筋商品の在庫切れをなくそうとマイナーチェンジモデルを相次いで投入している。
中でも中国市場でトップの座を常に争っているvivoは、2021年1月から10月までに投入したスマートフォンの種類が30機種を超える。実に1か月あたり平均3モデルをリリースしているのだ。
vivoのスマートフォンはカメラ強化のフラッグシップモデル「Xシリーズ」を筆頭に「Sシリーズ」「Tシリーズ」「Yシリーズ」の4つのラインナップを揃え、さらにサブブランドとして「iQOOシリーズ」も擁している。

これらの中で最も売れ筋のラインナップは低価格モデルを中心としたYシリーズだ。そのYシリーズだけでもこの10か月に投入されたモデルは9機種。つまりYシリーズの新製品だけでもほぼ毎月1機種が発売になっているのだ。
とはいえここまでYシリーズを多数展開しているのは目新しい新製品を開発しているのではなく、チップセットを変更したマイナーチェンジモデルを相次いで投入しているのである。

たとえば1月に発売した「Y31s」はチップセットにクアルコム製Snapdragon 480を世界初採用し、6.58インチディスプレイに1300万画素+200万画素カメラを搭載したエントリーモデルだ。そして3月には早くも「Y31s Standard Edition」が登場。基本性能はそのままにチップセットをメディアテックのDimensity 700に交換したモデルだ。さらに6月には「Y31s t1版」を発売。Y31s Standard Editionの6GB+128GBのメモリ構成を4GB+64GBに引き下げた。1つのモデルが3回もモデルチェンジしたのである。

おそらくSnapdragon 480やメモリの供給量が少ないことから仕様変更を行いつつも、ベストセラーモデルの品切れを防ごうとしたのだろう。なおvivoのサイトを見ると最新モデルとして再びSnapdragon 480を搭載した「Y31s t2版」が出ているが、中国のニュースサイトに発表の情報はなく、すでに品切れになっていることから販売時期は短期間だったようだ。

3回(公式には4回)のマイナーチェンジを行ったvivo「Y31s」シリーズ
3回(公式には4回)のマイナーチェンジを行ったvivo「Y31s」シリーズ

また6月に発売された「Y53s」はSnapdragon 480を搭載して発売されたが、8月にはDimensity 700搭載の「Y53s t1版」とDimensity 900搭載の「Y53s t2版」の2機種が入れ替わって登場した。いずれも6.58インチディスプレイに6400万画素+200万画素のカメラは変わらない。
Y31sのようにチップセットを変更したモデルを後から出す例はほかに「Y52s」→「Y52s t1版」の例もあるが、Y53sシリーズのように同じ月に外観も基本スペックも同じモデルでチップセットだけ異なる、という製品を出す例は他のメーカーを見ても見当たらない。

3モデルが同時に併売されているY53sシリーズ
3モデルが同時に併売されているY53sシリーズ

vivoは中国国内でシェアトップをOPPOと争っている。2017年第4四半期以降はファーウェイが1位の座を確固たる地位として独走していたが、2021年第1四半期に両社がファーウェイを再び抜き去り、vivoは僅差でトップを維持している。このままトップを走るためには半導体不足とはいえ製品を出せないという状況は絶対に避けなければならない。特にボリュームを稼げるコスパに優れた製品がオンラインストアで「品切れ」となれば、中国の消費者は「他の製品も在庫はないかもしれない」と考え他のメーカーの製品購入に走ってしまう。
vivoはチップセットを適時変更することでマイナーチェンジモデルを矢継ぎ早に出し、オンラインストアやECサイトでの品切れを無くしているのだ。

中国国内のスマートフォン出荷量。vivoがOPPOと1位を争っている(Canalys調査)
中国国内のスマートフォン出荷量。vivoがOPPOと1位を争っている(Canalys調査)

下位モデルだけではなく、上位モデルでも類似のマイナーチェンジ製品の投入は行われている。2021年上半期のフラッグシップモデルX60シリーズも、4月発売の「X60t」は2020年12月発売「X60」のチップセットをサムスン製Exynos 1080からDimensity 1100に変更。さらに5月に発売した「X60 Curve Display Edition」はX60のディスプレイを上位モデルである「X60 Pro」が搭載するカーブディスプレイに変更した。
クアルコム、メディアテック、サムスンの3大メーカーとそれこそ毎週のようにチップセットの供給量の交渉を行い、手持ちのラインナップの中の売れ行きを予想しながら製品を次々と投入する、ここまでしなくては中国国内でのシェア1位は守れないのだろう。

カールツアイスレンズとジンバルカメラを搭載するvivo「X60シリーズ」
カールツアイスレンズとジンバルカメラを搭載するvivo「X60シリーズ」

最近ではOPPOやrealmeも同様のマイナーチェンジモデルの投入を行っている。
一方シャオミはグローバル展開しているためにチップセットの購入数が多く、チップセットメーカーからの供給不足は逃れているようで、類似のマイナーチェンジモデルの投入は行っていない。しかしこの半導体不足が長期化するようならば、シャオミの製品展開も戦略変更を余儀なくされることになるだろう。
果たして半導体不足はいつ解消するのか、スマートフォンメーカーにとって頭の痛い問題はすぐに解決しそうにない。

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