TCLの折り畳みスマートフォン「Project Chicago」

「折りたたみ」「目にやさしい反射型画面」「5Gミリ波」TCLの最新スマホがスゴイ|山根康宏のワールドモバイルレポート

2022年1月にラスベガスで開催されたCES 2022ではTCLのスマートフォンの展示が大きな注目を集めた。今話題の折りたたみ型スマートフォンに加え、5Gの新製品を発表。さらに目にやさしく子供に向けにも最適なディスプレイのタブレットを展示するなど、同社のモバイル製品開発力の高さを垣間見ることができたのだ。

折りたたみスマートフォンはサムスン、ファーウェイ、シャオミに続きOPPOとHonorが製品化しており、2022年には他のメーカーも参入を開始するだろう。TCLも実は2021年中に折りたたみスマートフォンを発売する予定だったが、諸般の事情でキャンセルとなった。しかし各社が相次いで製品化を進める中、TCLとしても製品化を行うことを決定したようだ。

TCLの折りたたみスマートフォンは開発名「Project Chicago」と呼ばれており、CES 2022でもその名のまま展示が行われていた。縦に折りたたむ形状であり、開くと6.7インチのディスプレイ、閉じると手のひらサイズのコンパクトな大きさとなり、しかも閉じた面にすき間がない。この形状のモデルはサムスンの「Galaxy Z Flip3 5G」が世界各国で売られているが、サイズはほぼ同等ながら閉じたときのディスプレイには隙間が開いてしまう。

TCLの折りたたみスマートフォン「Project Chicago」
TCLの折りたたみスマートフォン「Project Chicago」

TCLはディスプレイを製造開発する子会社CSOT(チャイナスター)を持っており、同社がサムスンよりも使い勝手の良いディスプレイを開発したというわけだ。
Project ChicagoはTCL初の折りたたみスマートフォンであるだけではなく、CSOTの折りたたみディスプレイのデモ機ともなり、他のメーカーへの同ディスプレイの採用をアピールする製品にもなる。Project Chicagoは年内製品化の予定ということだ。

TCLはまたCES 2022でスマートフォン2機種を発表した。どちらも5G対応で、もはやTCLも5Gモデルを出すのが当たり前となっているのだ。ちなみにTCLのスマートフォンはアルカテルブランドで世界展開されており日本でも数年前に数機種が発売されたことがあったが、現在は日本を含む各国でTCLのブランドとして製品展開が行われている。新製品のうち「TCL 30 V 5G」は5Gの高い周波数、ミリ波に対応したモデルで、アメリカではベライゾン・ワイヤレスから販売される。

ミリ波に対応する5Gモデル「TCL 30 V 5G」
ミリ波に対応する5Gモデル「TCL 30 V 5G」

ミリ波は今までの電波と特性が異なるため、スマートフォンの設計も容易ではない。特にアンテナの処理は従来のスマートフォンとは異なる設計が必要だ。iPhone 13もミリ波対応モデルはアメリカ向けの製品だけだ。
TCLはそんなミリ波対応のモデルをミドルレンジ機として出す予定であり、ベライゾンはTCL 30 V 5Gをユーザーの4Gから5Gへの移行の目玉製品として売り出すことだろう。2022年はTCLのスマートフォンがアメリカで一気にメジャーな存在になるかもしれない。

ミリ波対応のサムスン「Galaxy S21 FE 5G」。側面上部の楕円部分にミリ波アンテナを内蔵
ミリ波対応のサムスン「Galaxy S21 FE 5G」。側面上部の楕円部分にミリ波アンテナを内蔵

さてTCLは独自のディスプレイ技術を搭載したタブレットも投入している。それが「NXTPAPER 10s」だ。NXTPAPERはCSOTが開発した反射型のディスプレイである。通常の液晶はディスプレイの後ろにバックライトがあり、その光に光の3原色である赤、青、緑(RGB)のフィルターを通して色を表現する。つまり液晶画面を見るということは、バックライトの光を直接見ることなのだ。それに対してNXTPAPERはバックライトはなく、太陽光や蛍光灯などの光がディスプレイに当たると、RGBフィルターが反射して光を表現する。つまり普段自然光を見るようなものであり、目にやさしいのだ。

NXTPAPERを採用したタブレット「TCL NXTPAPER 10s」
NXTPAPERを採用したタブレット「TCL NXTPAPER 10s」

目にやさしいディスプレイとしては電子ペーパーも知られている。紙にペンで文字を書くように、電子ペーパーはディスプレイ内に黒いカプセルを浮かべて文字などを表現する。電子ペーパーも光が当たることで表示を見るため目にやさしいディスプレイだ。ところが電子ペーパーは残像が残りやすいうえに、カラー化にはまだ難点がある。写真や動画を見る用途にも全く向いていないのだ。

NXTPAPERは液晶や有機ELほど高いコントラストの表示はできないものの、電子ペーパーのように目にやさしいことから子供向けの教育タブレット用途に最適だ。もちろん絵本や電子教科書の表示にも十分対応できる。
TCL NXTPAPER 10sはスタイラスペンやキーボード付き保護カバーも利用できるため、子供向けの簡易PCとしても使えるだろう。実際にTCLはこのNXTPAPER搭載タブレットを中国で教育向けに販売している。

ディスプレイの開発力でサムスンのすぐ後を追いかけるだけではなく、5G対応端末も開発できるだけの技術力を持ったTCL。同社のスマートフォンやタブレットはアメリカ市場を足掛かりに、今後グローバルへと展開を広げていくだろう。日本でも折りたたみスマートフォンは少しずつ興味を持つ消費者が増えているし、5Gミリ波も2022年から本格的に広がっていく。さらに教育向けタブレットは学習塾などが興味を示すだろう。TCLのこれらの製品の日本展開も期待できそうだ。

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