校長先生と鍋谷先生

伝統のある小学校でもオンライン教育の時代(後編)|上松恵理子のモバイル教育事情

今回は渋谷区立千駄谷小学校に訪問し、お話を伺った。

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教室に生徒がいる様子

後編では鍋谷先生のオンライン授業を見学した。

新しいツールを使って工夫することの大事さ

鍋谷:今日の国語は話し合い活動を中心に行います。まだ自宅からの参加がいるのでTeamsで行いました。今、ブレイクアウトルームでグループ活動しているので、その間、一つ一つのルームを巡回して様子を見ています。

上松:先生、手元のApple Watchに学習者のそれぞれのルーム内でのチャットの通知がブルブルと届きまくっていますね。

Apple Watchに通知が

鍋谷:これ、TeamsがIntuneによってアプリレベルで管理されており、紐づけられてたApple Watchにもそれが届くんです。話し合いで決まったことを順次チャットに残すように指示すると、ルームの巡回とは別に話し合いの進行がわかるので、便利です。そう多用するような感じではないですが役立っています。

オンライン授業の様子教科書

鍋谷:使う時は端末を持ってきて、USB-Cと電源を繋ぐ。それでディスプレイ2台目、キーボード、マウス、Webカメラが一気につながる。これに、HDMI Splitterを加えて2台目ディスプレイをプロジェクターにミラーリングする設定で、これでよくやるパターンの授業形態です。
全てに差し替えなしで対応可能ですし、また1台の端末で子どもに何かを見せながら、手元の画面で作業ができるようになったのが良かったです。

上松:これは便利ですね。

鍋谷:つい最近、一部の教員の間からオンライン学習に対応するときに、画面の切り替えがどうとか、それがめんどくさいという話が出たんですが、どうしてなのかよく聞いてみると、Teamsで画面共有してる時も子どもの様子が見たいってことでした。

上松:2画面へのニーズですね。

鍋谷:着実にオンライン授業の経験が積み重なって、教師のスキルが向上してきているんだなぁと実感しました。先生のスキルを無理に上げようとすると、先生方は忙しいですし大変なので、あくまでサポートするというやり方です。嬉しいことに、教員室に置いていた外部ディスプレイを教室に持っていく先生も現れたんです。もちろんこれがどの教員にも一般化する方法かどうかはわかりませんが。

画面に手を振る鍋谷先生

充電の管理で端末の運用スキルがアップ

上松:電源について教えてください。

鍋谷:本気で使う授業環境には電源は外せないですし、課題が明らかになると思っています。校内での電源は保管庫での充電しか公式の手立てはないんですよね。けれども現実には、「充電切れました」「充電ケーブル外れてました」「充電されてません」「さっきは満タンでしたが一瞬でゼロになりました」などなど様々な訴えがあります。

上松:それは大変ですよね。

鍋谷:うちの渋谷区は公式にタブレット1台あたり2つのアダプタが貸与されていますから、それが基盤となって対応がすぐにできるようになっているんですよ。

上松:それはどのようにされたんですか、ぜひ知りたいです。

鍋谷:一つは保管庫用、一つは自宅用とみんな思っていると思いますが、私はみんなが自宅用と思ってる端末を「ランドセルに入れておくように」と言いました。そして、電源の利用は断る必要なしで、必要な時に自分でやる、という体制にしてみました。

上松:これは良いアイデアですね、素晴らしいです。先生が充電してくれるから学校に来れば当たり前に使えると思ってしまっている子どもたちも多いですものね。この方法は自分が端末に責任を持って充電までやるスタイルになりますよね。

鍋谷:はい、これが功を奏していて、充電の心配が少なくなると思っていたのですが、それだけでなく子どもの運用スキルも自然に上がるのでうちのクラスだけでなく全校展開にしてみました。年度末の予算調整のチャンスに電源タップを学級あたり2~3本手配中なんですよ。

上松:先生、自分の端末という意識は大事ですね。自分で端末をメンテするくらいの気持ちになれば、パソコンに対しての興味も変わってくるように感じます。鍋谷先生はどうされているのですか。

上松:私は、行く先々全てに電源を用意する派で一人派閥です。教室の前と後ろでも、それぞれに用意しておくほどです。アダプタを3個買って、配置は、教室前・教室後・教員室・自宅・保管庫です。自腹でやっています。

上松:それはすごい。それくらい学びを止めずに頑張っているんですね。
次は算数の授業ですね。

鍋谷:3年の算数、次の単元は重さです。昨年、同僚から「はかりをカメラでスクリーンに映したい」と相談された時に、先走って作ったこのコンテンツをまさか自分が使うとは思わなかったのですが使っています。単元からすればほんの少ししか使わないけど、これがあってラッキーでした。
やはり授業でできることはビデオに示すことで精一杯ですし、使い方のトレーニングは無用かなと感じています。
学習指導要領解説を確認した時、Chrome内からPDFを「はかり」で検索したらヒットは5件。でも見てみたら「〜ばかり」が4件で目的の「はかり」は1件でした。気になってAcrobatで検索したらそちらははじめから1件でした。
ということで、もしも是非使ってみたいという方がいたら、こちらのリンクからどうぞ。

上松:ありがとうございます。

新しいことへのチャレンジを楽しむ

上松:校長先生にもお伺いさせてください。いきなりのコロナでこのように校長室から配信する全校朝会に切り替えられたそうですが、これまでなかったこういうスタイルに戸惑いはなかったでしょうか。

校長先生と鍋谷先生

校長先生:戸惑いはありませんでした。オンライン朝会は校庭で学ぶより楽な姿勢で話しを聞くことができるので、話の内容を子どもたちが理解できるようになりました。こちらの話を長く感じることもないようです。逆に長くなって欲しいと願われています。

上松:どのクラスも1人1台の端末を普通に使われていますね。

校長先生:そうですね、日常化を目指して様々なことを学校でしてきました。
大切なのは全員が有用性を感じて同じことをすること、そしてそれを楽しむことです。

上松:素晴らしいですね。

校長先生:教員もオンラインでやっています。それぞれの担任している教室から先生方がオンラインで参加します。今日の午後に私が6年生の社会科の授業をオンラインで行いますので、上松先生もご覧になられませんか。

上松:今日の午後ですか。校長先生がオンラインで授業されるのですね。オンラインの参加、ぜひお願いします。それは楽しみですね。


この後、オンラインで授業を参観した。校長先生は教諭時代に自分で受けたことのないオンライン授業を積極的に行っている。

時代はまさにウィズコロナ。これから収束したとしても災害等、急に何があるかわからない。この予測不能な時代に生きる子どもたちにとって、教師が熱心に授業を工夫して新しいことにチャレンジしている様子を目の当たりにするのはとても良いことである。このような伝統のある日本の公立小学校にもオンライン教育が行われるようになってきたことを視察できたことは、筆者にとっても良い経験となった。

前編はこちらからご覧ください。

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