LGスマホ撤退から1年、ユーザーはどのメーカーへ乗り換えたのか|山根康宏のワールドモバイルレポート

LGスマホ撤退から1年、ユーザーはどのメーカーへ乗り換えたのか|山根康宏のワールドモバイルレポート

いまから1年前の2021年4月5日、LGはスマートフォン事業からの撤退を発表した。端末の生産は5月までで、7月31日に事業の完全撤退が完了。LGのスマートフォンと言えば近年は2画面化できるカバーに対応したスマートフォンを次々と出していたが、他社との差別化には至らなかった。

 

2021年で撤退してしまったLGのスマートフォン
2021年で撤退してしまったLGのスマートフォン

一時は携帯電話・スマートフォン市場でシェア上位に位置したLGだが、近年の出荷台数はシェアは数%程度だった。市場での影響力は失っていたとはいえ、1社が抜けた穴は他のメーカーがカバーしている。それではLGのスマートフォンが無くなったことで、どのメーカーのシェアが増えたのだろうか。

近年の例では、アメリカ政府の制裁を受けたファーウェイがシェアを大きく落とし、ハイエンドモデルではアップルが、エントリーモデルではシャオミがそのシェアを奪ったといわれている。ファーウェイは今でも細々とスマートフォンを開発し市場から撤退はしていないものの、2021年のシェアは3%(Omdia調査)と厳しい状況が続いている。

LGのスマートフォン出荷台数はグローバルでは「その他メーカー」としてひとくくりにされてしまっており、細かい動向を見ることはできない。そこでLGが主力メーカーの1つだった韓国市場の状況を見てみよう。

 

グローバルで存在感を下げていたLGだが、韓国キャリアは数多くのLGスマホを扱っていた
グローバルで存在感を下げていたLGだが、韓国キャリアは数多くのLGスマホを扱っていた

韓国市場はサムスン、アップル、LGがシェアを寡占しており、それ以外の海外メーカーの参入が厳しい市場だ。日本では今やすっかり中国メーカーのスマートフォンもおなじみの存在となったが、韓国では過去にファーウェイがキャリアと組んだもののうまくはいかず、シャオミがキャリア向けとSIMフリーに数機種を出すのがやっと、という状況だ。

その韓国の2020年と2021年のスマートフォン出荷台数シェアを比べてみよう。数値は韓国メディアの報道を参照した。

2020年
・サムスン:65%
・アップル:20%
・LG:13%
・その他:2%

2021年
・サムスン:72%
・アップル:21%
・LG:6%
・その他:11%

こうしてみると、LGの減った部分はサムスンとその他が奪い取った格好となった。2021年のLGの最後のラインナップは上位モデルが「VELVET」などミドルハイレンジ機と、価格を抑えた「G」「Q」シリーズだった。ディスプレイが回転し「T字」になる変わりモノ端末「WING」は大きな話題になったが、販売数は思わしくなかった。

ディスプレイが回転しT字型になるWING、話題だけで終わってしまった。
ディスプレイが回転しT字型になるWING、話題だけで終わってしまった。

このようなLGのラインナップからの乗り換え先として、アップルはハイエンド寄りの製品ばかりであったことから、LGを買っていた客がiPhoneに乗り換えることはなかったようだ。

一方サムスンは「Galaxy S21」などのハイエンドフォンや、「Galaxy Z Flip3 5G」など折りたたみスマートフォンを出す一方、価格を抑えた「Galaxy Aシリーズ」も豊富に展開している。そしてシャオミは低価格モデルを定期的に投入していたことで、LGユーザーはこれら低価格モデルに移行していったと考えられるのだ。

ちなみに韓国の2021年のスマートフォン出荷台数の順位は以下の通りだ。

1位:Galax S21 5G
2位:Galaxy Z Flip3 5G
3位:Galaxy A32
4位:Galaxy S21 Ultra 5G
5位:iPhone 12 mini
6位:Galaxy S21+ 5G
7位:Galaxy A42 5G
8位:iPhone 12 Pro
9位:Galaxy A31
10位:Galaxy A12

こうしてみると韓国ではサムスンのハイエンドモデルが売れており、折りたたみのGalaxy Z Flip3 5Gも2位と好調だ。iPhoneばかりが売れる日本市場も世界から見ると特異的な市場だが、韓国も他の国とは消費者の嗜好が大きく異なっている。

 

韓国のサムスンストア。女性たちがGalaxy Z Flipをこぞって触っている
韓国のサムスンストア。女性たちがGalaxy Z Flipをこぞって触っている

なおグローバル市場では、2021年のスマートフォン出荷台数の1位はGalaxy A12で、価格の安さから新興国を中心に売れまくった。しかし2位から4位、6位から9位はすべてiPhoneで、5位シャオミRedmi 9A、10位Galaxy A02と合わせ、iPhone以外のスマートフォンは低価格機だった(Omdia調査)。

話を韓国市場に戻せば、LGの顧客がどのモデルに乗り換えたかは不明ではあるものの、LG製品の価格帯を考えると3位のGalaxy A32や7位のGalaxy A42 5Gあたりを購入した人が多かったと考えられそうだ。LGからの顧客をしっかり吸収したサムスンの韓国市場での強さは今後さらに増していくだろうし、シャオミの躍進にも期待がかかる。
一方では目立ったメーカーがサムスン、アップル、シャオミだけというのは消費者にとって選択肢が少なく、新規メーカーの参入が望まれるところだ。

 

Redmi Note 11 Pro 5G

ここ1~2年のスマートフォン市場を見ると、体力のないメーカーは撤退済みであり、中国メーカーの勢いに加えてモトローラTCLも製品の数を大きく増やしている。モトローラは日本でも発売した「edge 30 pro」など高性能カメラフォンを投入しているし、TCLは低価格5G機でアメリカでのプレゼンスを高めている。
各国で「Withコロナ」政策が広がり人々の消費意欲が戻りつつある中で、勢いに乗れないメーカーは市場からの撤退を余儀なくされるだろう。

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