地元メーカーの「対中国メーカー」生き残りの道は「5Gスマホ」|山根康宏のワールドモバイルレポート

地元メーカーの「対中国メーカー」生き残りの道は「5Gスマホ」|山根康宏のワールドモバイルレポート

世界のスマートフォン市場はサムスン、アップル、そして中国メーカーが出荷量のシェアをほぼ寡占している。日本ではソニーモバイルやシャープなど日系メーカーが存在感を示しているが、シャオミやOPPOもかなり知られる存在になった。これは他の国でも同様で、中国メーカーが目立たないのは米国と韓国くらいだろう。

IDCによると世界のスマートフォンの出荷量は2013年に初めて1億台を突破した。このころはAndroidスマートフォンが「出せば売れる」という時代であり、各国で次々とローカルメーカーが登場した。日本では名前の知られていないメーカーが地元ではメジャーな存在だったのだ。
しかし中国メーカーが数に物を言わせて低価格モデルを次々と投入していた結果、各国の地元メーカーの多くが市場撤退を余儀なくされた。

それでもいくつかのメーカーは生き残りをかけて新製品の投入を進めている。特に新興国では5Gの展開がこれから始まることから、地元メーカーも「5G高コスパスマホ」で中国メーカーへの対抗を図っている。

フィリピンでは圧倒的な製品数と低価格で国内シェア1位にもなったCherry Mobileが2022年4月に5Gスマートフォンを発表した。しかも2機種同時発表という力の入れようだ。
Cherry Mobileは街中のスーパー店内の一角、時にはエスカレーターの下の「壁面」に一坪程度の代理店を出し、食品の買い物ついでに購入できる激安モデルをずらりと並べ、フィリピンでの販売数を伸ばしていったが、中国メーカーが2016年ころから本格参入するとシェアを一気に落としていった。

2021年のフィリピンのスマートフォンのシェアは、サムスン(22.4%)、realme(20.9%)、OPPO(18.5%)、vivo(16.2%)、シャオミ(8.4%)の順。Cherry Mobileはその他13.6%の中でわずかに製品展開しているに過ぎない(数値はカウンターポイント調査)。なおCherry Mobile以外の地元メーカーはほぼすべてが市場から撤退している。

Cherry Mobile初の5Gスマホが2機種登場
Cherry Mobile初の5Gスマホが2機種登場

上位モデルの「Aqua SV」は2つ搭載されたフロントカメラが大きな特徴である。1600万画素の広角カメラと200万画素の深度測定カメラを搭載し、自撮りでもしっかりと深みのあるボケ写真を撮ることができる。この美しいポートレートが撮影できるフロントカメラは他社の上位モデルに十分勝る性能だ。メインカメラは6400万画素広角を含む4カメラ構成で、チップセットにメディアテックのミドルハイレンジ向けであるDimensity 810を搭載したことでAI処理を効かせた写真撮影も自在だ。さらにボディーは合皮で覆われ高級感も持たせている。価格は1万1999フィリピンペソ(約3万円)。

Cherry Mobileの「Aqua SV」。デュアルフロントカメラが特徴だ
Cherry Mobileの「Aqua SV」。デュアルフロントカメラが特徴だ

Cherry Mobileのもう1つの5Gモデルはチップセットにミドルレンジモデル向けのDiemensity 700を搭載した5G入門モデルの「Aqua S10 Pro 5G」である。メインカメラは4800万画素を含む4つ、フロントカメラは1600万画素と必要十分な性能、バッテリーは5000mAhと大容量を搭載。価格は7999フィリピンペソ(約2万円)だ。
やや古い製品だが、スペックが若干劣るシャオミの「Redmi Note 10 5G」の価格は約1万フィリピンペソ(約2万5000円)なので、価格競争力も十分持っている。フィリピンで5Gスマートフォンを求める消費者も大きな期待を寄せそうだ。

シャオミの同等モデルよりも安い5Gモデル「Aqua S10 Pro 5G」
シャオミの同等モデルよりも安い5Gモデル「Aqua S10 Pro 5G」

また地元メーカーが多数存在するインドも似たような状況になっている。王者サムスンに対しMicromaxLavaKarbonnといった地元メーカーが10年前は販売シェアの上位を占めていた。しかしシャオミが中国の次の成長市場としてインドにターゲットを絞り、格安モデル「Redmi」を次々に投入、対抗するようにOPPOはインド向けに別ブランド「realme」をひっさげ低価格スマートフォンを次々と送り出した。販売があまりにも好調だったことから、realmeはOPPOから独立し別会社になったほどだ。

その結果、2017年第4四半期にはサムスンをシャオミが追い抜きインドトップシェアメーカーとなり、2021年第4四半期にはrealmeがサムスンを抜いて2位になるなど中国メーカーの勢いは増すばかりだ。インドではこれから5Gが始まる状況だが、中国メーカーはすでに海外で販売している低価格な5Gスマートフォンをすでに次々に投入している。

その対抗としてLavaはインドメーカーとして真っ先に5Gスマートフォン「AGNI 5G」2021年11月に発売した。チップセットはDimensity 810、6400万画素カメラを含むクワッドカメラ、フロント1600万画素カメラを搭載しており、価格は1万7990インドルピー(約3万円)だ。こちらもシャオミやrealmeと比べ十分競争力のある製品となっている。

インドメーカー初の5Gスマホ、Lavaの「AGNI 5G」
インドメーカー初の5Gスマホ、Lavaの「AGNI 5G」

同じインドのMicromaxは激安4Gスマートフォンのラインナップを広げている。しかしrealmeはインドの有名俳優やクリケット選手をアンバサダーに起用するなどして、若者から大きな支持を受けている。価格だけで製品を売り込んでも、メーカーに対するロイヤリティーは上がらない。Micromaxも5G対応の高性能モデルを投入しなければ生き残ることは難しくなるだろう。

日本では知られていないメーカーとしては、InfinixItelTecnoの3メーカーが新興国では有名だ。いずれも中国Transsion Holdingsの傘下メーカーであり、アフリカ各国ではシェアトップの国もあるなど圧倒的な強さを見せている。この3メーカーはシャオミなど中国大手メーカーでも価格競争力では打ち勝てない
カウンターポイントの調査によると、ナイジェリアのスマートフォンシェアは1位Tecno、2位サムスン、3位Itel、4位Infinix。Transsion系の3社を合わせるとシェアは57%にも達する。シャオミは5位につけているもののシェアは7%に過ぎない。

ナイジェリアのスマートフォンシェア(Nigeria Smartphone Sales up 81% YoY in 2021; TECNO Retains Top Position : Counterpoint)
ナイジェリアのスマートフォンシェア(Nigeria Smartphone Sales up 81% YoY in 2021; TECNO Retains Top Position : Counterpoint)

3社のうちInfinixとTecnoはすでに5Gスマートフォンもインドなどに投入。Tecnoの「POVA 5G」はチップセットがミドルハイレンジ向けDimensity 900、5000万画素トリプルカメラ、6000mAhバッテリー搭載で2万1999ルピー、約3万7000円である。既存の4Gのハイエンドモデルより上位機種ということで価格設定はやや強気のようだ。

Tecnoの5Gスマホ「POVA 5G」
Tecnoの5Gスマホ「POVA 5G」

新興国の5Gスマートフォンを見てみたが、中国大手メーカーだけではなくTranssion系も低価格な5Gモデルの投入を進めており、規模の小さいローカルメーカーは生き残りが厳しい時代になっていることがわかる。新興国ではまだまだ4Gスマートフォンの需要は高いものの、それが続くのもあと数年だ。早い時期から5Gスマートフォンの開発を進めていかねば各国に残る地元メーカーの生き残りは厳しくなるだろう。

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