調査会社のカウンターポイントは3カ月おきに世界の主要8か国におけるスマートフォンの機種別販売数ランキング5位を発表している。8つの国はアメリカ、イギリス、中国、インド、フランス、韓国、ドイツ、日本である。
それぞれ国ごとにスマートフォンの販売形態は異なっており、SIMフリーモデルが主流のヨーロッパの3か国、イギリス、フランスとドイツでも売れ筋には差が見られる。最新の2022年4月の各国の売れ行きや過去との比較をしながら、各国の特性を見ていこう。
各国スマートフォンの機種別販売数ランキングと特性
アメリカ
1位:Apple iPhone 13(21%)
2位:Apple iPhone 13 Pro Max(15%)
3位:Apple iPhone 13 Pro(6%)
4位:Apple iPhone 12(4%)
5位:Samsung Galaxy A32 5G(3%)
iPhoneの販売数は例年、新製品が発売となる第4四半期(10-12月)にピークとなり、年が明けると一気に下落するのが例年の常である。しかしアメリカでは4月になってもiPhone 13が市場の1/5も売れている。またiPhone 13 Pro Max、iPhone 13 Proも加えると最新のiPhoneだけで42%と市場を寡占している。
一方でサムスン製品も地道に人気があるが、4800万画素カメラを搭載し実売価格が200ドル台前半のGalaxy A32 5Gがランクインした。5G対応スマートフォンとして比較的低価格なことも人気だろうか。アメリカではMVNOキャリアも5Gサービスを開始していることもあってか、5Gスマートフォンに人気が集まっているようだ。

イギリス
1位:Apple iPhone 13(29%)
2位:Apple iPhone 13 Pro(10%)
3位:Apple iPhone 13 Pro Max(9%)
4位:Samsung Galaxy A12(7%)
5位:Apple iPhone 12(4%)
イギリスのiPhone人気もアメリカには負けておらず、iPhone 13だけで全体の約3割、最新モデル3機種を合計すると48%と半数に近い。
一方サムスンのエントリーモデルGalaxy A12がランクインしているのはスマートフォンを生活のツールと考え、必要最低限の機能を求めるユーザーが一定数いるからだろう。通信キャリアによっては格安や無料での販売もあるようだ。

フランス
1位:Apple iPhone 13(18%)
2位:Apple iPhone 13 Pro Max(12%)
3位:Apple iPhone 13 Pro(8%)
4位:Apple iPhone 13 mini(6%)
5位:Samsung Galaxy S20 FE 5G(4%)
上位3機種はアメリカと順位は変わらず好みの傾向も似ているように見える。しかし4位には小型モデルのiPhone 13 miniがランクイン。
サムスンはミドルハイレンジで高性能ながらコストパフォーマンスの高いモデルが入っている。

ドイツ
1位:Apple iPhone 13(23%)
2位:Apple iPhone 13 Pro Max(9%)
3位:Apple iPhone 13 Pro(8%)
4位:Samsung Galaxy S20 FE(6%)
5位:Samsung Galaxy A12 Nacho(6%)
フランスよりもiPhone 13に人気が集まっている。
サムスンはこちらもスペックと性能比のバランスのいいGalaxy S20 FE(4Gモデル)と、エントリーのGalaxy A12 Nachoがはいった。ドイツの「iPhone最新モデル数機種と、サムスンのミドルハイレンジ、エントリー」という順位は、おそらく他のヨーロッパでも同様だろう。

インド
1位:Jio Phone Next(4%)
2位:Xiaomi Redmi 9A Sport(4%)
3位:realme C11 2011(3%)
4位:Samsung Galaxy A03 Core(3%)
5位:Samsung Galaxy A12(3%)

他の国とは全く異なるインド市場。やはり新興国ということもあり、低価格モデルに圧倒的に人気が集まる。
1位のJio Phone Nextは新興キャリアJioとグーグルが協業したインド向けの超コスパモデル。シャオミ、realmeの製品はどちらも8000ルピー(約1万4000円)を切る格安機。サムスンはシャオミにシェア1位を奪われているが、エントリー機2機種が入っている。
しかしインドも1位が4%、5位が3%しか市場を取っておらず、膨大な数の中国メーカーやインドメーカーの製品が乱立、競争を繰り広げている。
中国
1位:Apple iPhone 13(8%)
2位:Apple iPhone 13 Pro Max(3%)
3位:Apple iPhone 13 Pro(3%)
4位:OPPO Reno7 5G(3%)
5位:HONOR 60(3%)

中国もiPhone人気は高いとはいえ、シャオミ、OPPO、vivo、ファーウェイなどメジャーメーカーが多数存在することから他の国ほどのシェアは取っていない。iPhone 13の8%は抜きんでているが、2位以下はどれも横並びであり、6位以下の製品も多くが2-3%のシェアを取っているだろう。OPPOとHonorの両機種はミドルハイレンジながら高性能カメラを搭載したカメラフォンである。
できれば中国は10位くらいまでの順位を見てみたいものだ。
韓国
1位:Samsung Galaxy Z Flip 3 5G(11%)
2位:Apple iPhone 13(11%)
3位:Samsung Galaxy A32(10%)
4位:Samsung Galaxy A52s 5G(8%)
5位:Apple iPhone 13 Pro Max(7%)
おそらく日本人にとって最も想像できないのが韓国での売れ筋モデルだろう。1位はなんと縦折り式のGalaxy Z Flip 3 5G。女性に高い支持を受けており、高価なモデルながら発売以来、ベストヒットを飛ばしている。3位と4位のGalaxyはミドルハイレンジでキャリア契約すると手ごろな価格で購入できることから人気のようだ。
iPhoneは2機種しか入っておらず、これは先進国の中では最も少ない。なお韓国はLGが市場撤退、シャオミが参入しているものの人気は低く、サムスンとアップルの製品が市場のほとんどを占めている。

日本
1位:Apple iPhone 13(14%)
2位:Apple iPhone SE 2020(13%)
3位:Apple iPhone 12 mini(11%)
4位:Apple iPhone 13 Pro(7%)
5位:Apple iPhone 13 mini(7%)
日本人の誰もがこの順位を見て納得するだろう。アップル以外の製品が入らない市場は日本だけだ。しかもSEが2位、さらにminiモデルが2機種入っているのも日本だけのこと。
これはスマートフォンのキャリア販売が主流であることが主因だろう。実は韓国も日本とほぼ同じキャリア販売を行っているが、通信費と端末代金の完全分離、一部のユーザーだけが得をする過剰な端末割引を廃止した。一方日本も同じ方向に進むはずだったが、格安販売が日常化しており、旧モデルであるiPhone SE 2020がよく売れた。また日本人は小型モデルを好むこともあってか、miniモデルもランクインしている(とはいえminiモデルも格安販売されたが)。なおもちろんだがiPhoneの人気はアメリカ同様に絶大である。
調査結果から各国の傾向が見えてくる
さて2022年4月の単月だけを見て各国の市場全体を語ることはできないだろうが、ある程度の傾向は見えてくるのではないだろうか。なおiPhoneが上位に入るのは人気が高いことに加え機種の数が少ないため、1機種に集まる結果でもある。それを考えると韓国のサムスン人気はさすが母国だからと言えるだろうが、縦折り式という新しいトレンドに真っ先に飛びつくという国民性も反映していそうだ。
カウンターポイントの調査は2022年5月上旬時点で、2018年7月のデータまで振り返ってみることができる。また今後も7月、10月、1月とアップデートされる予定だ。興味ある方は定期的に追いかけてみるといいだろう。
参考ページ
Top 5 Smartphone Model Share For 8 Countries
https://www.counterpointresearch.com/top-5-smartphone-model-share-8-countries/