シャオミとライカが協業を発表

ライカとコラボでシャオミのスマホは世界1位になれるか|山根康宏のワールドモバイルレポート

2022年5月23日、シャオミはカメラメーカーのライカとの協業を正式に発表した。シャオミによると7月に「ライカカメラ」搭載のスマートフォンが発売されるという。
コストパフォーマンスに優れたRedmiシリーズはもとより、ハイエンドモデルのXiaomiシリーズ、先進的な技術を搭載したMIXシリーズと3つの柱を持つシャオミのスマートフォンラインナップに、これからは高性能なカメラフォンが加わるのだ。

シャオミとライカが協業を発表
シャオミとライカが協業を発表

シャオミのスマートフォン事業は出荷量でサムスン、アップルに次ぐ世界3位と好位置をキープしている。しかしシャオミを取り巻く環境は思わしくない。半導体不足やロシア問題、そして上位2社に及ばぬブランド力など問題は山積みだ。

シャオミがシェア1位のインドでは、4月30日に政府の金融犯罪対策機関が同社のインド法人に対して海外に不正な送金を行ったとし、同法人のインドの銀行の資産から7億2500万ドルを差し押さえた。2021年12月にも同法人は脱税の容疑をかけられるなど、シャオミの動きに対してより厳しい監視の目が向けられている。
もちろんこの動きとは無関係にシャオミの製品はインドの消費者に大きな人気になっており、インド国内のスマートフォン機種別販売順位ではトップ10位内のほとんどをシャオミのRedmiシリーズが占めている。しかし再び問題を起こせばインド国内での販売に対しての制裁などが加えられる恐れもある。
中国に次ぐ成長市場のインドで、シャオミは今まで以上に慎重なビジネス展開を行う必要がある。

好調なシャオミのインド事業、だが思わぬところからケチがついた
好調なシャオミのインド事業、だが思わぬところからケチがついた

一方、ロシアではシャオミの出荷台数はサムスンに次ぐ2位となっているが(GSgroup調査)、サムスンは1110万台、シャオミは1030万台と両者の差はほぼ拮抗している。しかしロシアがウクライナを侵攻したことによりサムスンやアップルはロシアでのスマートフォン事業を凍結。中国メーカーは今のところ事業は継続したままにしており、この隙をついてシャオミが一気に販売数を伸ばす可能性もある。

しかしロシアで売れているスマートフォンは半数がミドルレンジモデルだ。またインドでも同様に売れ筋はミドルレンジ、あるいはエントリーモデルである。このクラスの製品はまだ5Gには対応せず、4Gモデルが多い。ここにシャオミのウィークポイントが隠されている。

折からの半導体不足によりスマートフォンのチップセットは供給が追いついていない。特に4Gスマートフォン向けチップセットのショーテージは深刻であり、シャオミの売れ筋モデルは生産が追いついていないのだ。仮にサムスンの約1000万台の穴をシャオミが埋めようにも、それだけの数のチップセットを確保できないのだ。

シャオミの2022年第1四半期の決算によると、売上高は前年同期比4.6%減少となった。そのうちスマートフォンの売上高は458億元(約8687億円)で、前年同期の515億元(約9777億円)から約1割の減少となった。スマートフォンの平均販売価格(ASP)は14%アップの1189元(約2万3000円)になっていることから、低価格モデルの販売数減少が大きく響いている。

シャオミは中国で実店舗(オフライン)販売も強化し、2021年はコロナ下でも7000ものオフラインチャネルを開設した。これで中国全土の取扱店舗数は1万を突破したとのことだ。実際に製品を手に取ってみることで来訪者の購買意欲を高めることに成功し、高価格モデルの50%が実店舗での販売になったという。
しかし中国政府が進めるゼロコロナ施策により、中国の国民は外出が大幅に制限されている。今の中国ではオフラインストアに逆風が吹いているのだ。

高価格モデルが売れる中国の実店舗。しかし国民が自由に訪問できない状況だ
高価格モデルが売れる中国の実店舗。しかし国民が自由に訪問できない状況だ

シャオミの売り上げ構成を見ると、スマートフォンなどのデバイスが62.4%、シャオミバンドなどIoT製品が26.6%、スマートフォンのストアや広告によるサービスが9.7%、その他1.3%となっている(カウンターポイント調査)。前年同期と比べるとIoT、サービスの比率は上がっており、スマートフォン以外の事業も強化が進んでいる。

シャオミのIoT機器の販売数は年々増えている
シャオミのIoT機器の販売数は年々増えている

しかしこの先も主力事業はスマートフォンであり、スマートフォンの拡販がシャオミの成長をけん引するだろう。ミドルレンジ、エントリーモデルはチップセット不足が解消されればすぐにでも販売増が見込めるが、問題はハイエンド、プレミアムクラスの製品だ。

カウンターポイントの調査を見ると、2021年のプレミアムスマートフォン(400ドル以上の製品)のマーケットシェアは、アップルが60%、サムスンが17%、ファーウェイが6%、シャオミが5%だ。シャオミは折りたたみスマートフォンや高画質カメラフォンを展開しており、製品発表会後は大きな話題になる。しかし実際の販売には結びついていないのが実情だ。

プレミアムスマートフォンのシェア。アップル(黒)、サムスン(青)に比べシャオミ(オレンジ)の割合は極端に少ない
プレミアムスマートフォンのシェア。アップル(黒)、サムスン(青)に比べシャオミ(オレンジ)の割合は極端に少ない

過去を振り返ると、2016年2月、ファーウェイはロンドンの新製品発表会でライカとの提携を発表した。この提携以降ファーウェイの知名度は一気に上がり、また製品に対する信頼度も高まった。ファーウェイのスマートフォンのカメラ性能もさらに引きあがり、スマートフォン市場でトップのカメラ性能を誇る製品が次から次へとファーウェイから生まれるようになった。

シャオミとライカの協業も、このファーウェイと同じ効果を与えてくれるだろう。今はまだシャオミの製品に懐疑的な印象を持っている人も、ライカのロゴの入ったスマートフォンを見れば考えが変わるはずだ。そしてあと数年もすればシャオミがスマートフォンのカメラ市場をけん引する存在になっているかもしれない。

ファーウェイはその後アップルを抜き、わずかな期間だがサムスンを抜いて世界シェア1位になった。その躍進はカメラだけではなく独自設計したチップセット「Kirin」やモデムの開発によるところも大きい。一方でシャオミにはファーウェイが持っていないコスパに優れた低価格機や多数のIoT製品も展開している。
ライカとのコラボによりシャオミの「スマホ世界1位」がおぼろげながら見えてきたかもしれない。

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