超ハイスペックスマホを約12万円で売るシャオミ

スマホの価格が20万円?一方でシャオミは12万円で超ハイスペック端末を発表|山根康宏のワールドモバイルレポート

日本で6月・7月に発売されたスマートフォンの価格に注目が集まっている。
ソニーモバイルのXperia 1 IVは19万円超え、シャープのAQUOS R7も19万円前後だ。スマートフォンの高性能化が進む中で価格の高騰も仕方ないものと見る向きもある。しかしこれらの価格はスマートフォンメーカーの設定した価格ではない点に注意が必要だ。どちらも日本の通信キャリアの販売価格なのである。

通信キャリアがスマートフォンを自社製品として販売する日本の商習慣では、キャリアが価格を設定することに疑問を持つ人はいないだろう。たとえば日本ではiPhoneの販売価格はアップル、ドコモ、KDDI、ソフトバンクそれぞれで異なる。一方海外ではメーカーの端末をキャリアが「販売店」として取り扱う国がほとんどだ。アップルストアで買えば定価、キャリアで買えばその定価から契約内容によって割引が受けられる、というケースが多い。

19万円のAQUOS R7だが、実際はもっと安く買える
19万円のAQUOS R7だが、実際はもっと安く買える

そのためXperia 1 IV、AQUOS R7の19万円の価格を見ると「スマホの価格が高くなった」と思われる人が多いだろう。しかしこれはメーカーが付けた価格ではない。通信キャリアが販売する価格なのだ。
意味が分からないという人もいるかもしれないが、筆者の居住する香港でのXperiaの価格を見てみよう。香港は前述したようにメーカーがスマートフォンを直接消費者に販売するし、通信キャリアは同じ製品をそのまま販売する。

Xperia 1 IVの香港価格は9699香港ドル、約16万8000円である。日本の価格より2~3万円も安い。しかもこの円安の状況であってもだ。しかも円安が急激に進む前の為替レート(1香港ドル=約14円)で計算すると約14万円となる。Xperiaの価格が高くなったのではなく、日本の販売価格が高くなっただけなのだ。そもそも前モデルと比較してみると、Xperia 1 IIIは9299香港ドル(256GBモデル)、9999香港ドル(512GBモデル)だった。つまりXperia 1 IVはXperia 1 IIIと価格はほとんど変わっていないのだ。

香港のキャリアで売られるXperia最新モデル
香港のキャリアで売られるXperia最新モデル

では日本ではなぜ価格が急に上がったのだろうか?開発費や部材が高騰したのならば、海外でも同様に価格は上がるはずだ。しかもXperiaは日本での販売台数が多いから、海外はより高値で売られてもおかしくない。

そこで実際の日本での価格を見ると、各キャリアは2年で端末を返却するプランを用意し、端末の販売価格を引き下げている。端末を返却することを考えたプランなので本来であれば「販売」ではなく「レンタル」と表現すべきだが、2年後に「返却か、継続使用(購入)か」を選ぶこともできるため、一応販売ということになっているようだ。

ドコモの「いつでもカエドキプログラム」を適用すると、Xperia 1 IVの価格は11万352円となる。11万円ちょっとなら誰もが疑問を持たない価格ではないだろうか?今や多くのユーザーがこの返却プランを選択することを考えると、実質的な価格は11万円台。スマートフォンの価格が高くなったのではなく、キャリアが割安感を出すために、あるいは割引後の価格から逆算して販売価格を設定した、と考えざるを得ない。

一見するとお得に見えるが、一括で19万円台でスマートフォンを買うユーザーは大きな割を食う。また企業などではそのような買い方をせざるを得ないこともある。ソニーモバイルはキャリア販売だけではなく後からSIMフリーモデルを投入するが、その価格がいくらになるのか気になるところだ。もしもソニーモバイルの価格がキャリア価格より大幅に安ければ、まさしくキャリアの価格設定は「2年で返却ありき」で逆算してつけたことになる。

2011年11月に様々な話題を振りまいたBALMUDA Phoneも、BALMUDAの販売価格が10万4800円だったのに対し、ソフトバンクは14万3280円で販売。「新トクするサポート」を使えば7万1640円となる(2年後に端末返却)。たしかに同サポートプランを使えば約半額でレンタルできるが、そもそもメーカーの価格よりはるかに高い値段設定をするというビジネスはいかがなものだろうか?

BALMUDA Phoneの発売時の価格はキャリア売りが約4割も高かった
BALMUDA Phoneの発売時の価格はキャリア売りが約4割も高かった

ところで7月4日にシャオミはライカと初のコラボレーションを行った「Xiaomi 12S」シリーズを発表した。最上位モデルの「Xiaomi 12S Ultra」は1インチセンサーを搭載し、5000万画素+4800万画素+4800万画素トリプルカメラ、フロント3200万画素カメラという強力なカメラフォンだ。チップセットはもちろんクアルコムの最新モデル、Snapdragon 8+ Gen 1を搭載する。
価格は5999元、約12万円だ。グローバル価格は不明だが、2割程度高くなっても14万円程度だろうか。AQUOS R7より高性能にもかかわらず、価格は安い。

超ハイスペックスマホを約12万円で売るシャオミ
超ハイスペックスマホを約12万円で売るシャオミ

結論としてスマートフォンの価格が上がっているのではなく、日本のキャリアのスマートフォン販売方法が変革を迎えており、消費者不在の価格設定を行っているにすぎないということではないだろうか。この販売方法に消費者が納得するのであればそれはそれで問題はない。しかし仮にシャオミがXiaomi 12S Ultraを日本で14万円で販売するようになったとき、キャリアの今の売り方と比べどちらが誠実だと思うだろうか。iPhoneは日本の携帯電話業界の黒船となったが、数年後にはシャオミが新たな黒船になっているかもしれない。

超ハイスペックスマホを約12万円で売るシャオミ
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