モバイル投薬の注射器

モバイル投薬デバイス「atDose」のパーパス【前編】|上松恵理子のモバイル教育事情

今回は超微量かつ局所に投薬できるモバイル投薬デバイス「atDose」の開発製造販売を行う、アットドウス株式会社代表取締役の中村秀剛さんにインタビューを行った。

中村さんは川崎市にある「かわさき新産業創造センター(KBIC:ケービック)」で「atDose」の開発や製造販売を行っている。KBICは川崎市がベンチャー企業や企業の新分野進出の支援を目的として整備したインキュベーション施設であり、KBIC本館とクリーンルーム棟を備え、IBMの量子コンピュータがあるNANOBIC(ナノビック)、かわさき新産業創造センターの計画の最終施設としての「産学交流・研究開発施設」AIRBIC(エアビック)がオープンしている。

筆者はインタビューの一週間前にNANOBICにて、日本に1台、世界でもアメリカとドイツと日本にしかないという量子コンピュータを見学させていただき、そして今回は中村氏の居るKBICにてお話を伺うことができた。

KBIC

上松:先週、たまたまKBICへ量子コンピュータの見学のために訪問したばかりです。ここは都心からアクセスが良いですね。モバイル投薬デバイスは、本コラムの題であるモバイル教育事情と同じく「モバイル」が共通語で、とても気になっていたのです。今回はお話を伺う機会ができてとても嬉しいです。専門が教育ですのでその観点からもお話を伺うことができたらと思っています。

モバイル投薬の注射器
モバイル投薬の注射器

中村秀剛氏(以下:中村):わざわざお越し頂きましてありがとうございます。おっしゃる通り、ここは都内からも横浜からもアクセスが良い所ですね。
教育という観点では、子ども時代はけっこう父親が厳しくて大変でした。ファミコンなどのゲームなどは絶対にやらせてもらえませんでしたし、高校生の時は門限が6時だったんですよ。

上松:それは厳しいですね。

中村:父は体育系で大変でした。体育会系の弟と違って私は母親の血をひいて楽器演奏に興味があったのでちょっと引いていました。とにかく家から出たくて神奈川の大学に行ったという感じです。

上松:どっちかというと大人しいタイプだったのでしょうか。

中村:そうですね。ただその家庭環境で良いこともありました。ファミコンができなかったのでとにかく自分でプログラミングをしようと思ったことと、大学に行くにはお金を貯めなくてはと思いマクドナルドでアルバイトをしたことです。そこでのコミュニケーションスキルがとても興味深かったんです。
私は職場が家から近かったので夜間シフトに入っていました。知らない人に「スマイルプリーズ」と言われると、笑顔で応えなければなりません。指導していたマネージャーが優しく教えてくれて、自分の殻を取っ払ってもらったように思います。
そしてもっと興味深かったのは、ハンバーガーを作る工程がプログラミングのような流れだったことですね。無駄もないですし。

上松:工程がフローチャートみたいな感じですよね、私も以前からそう思っていました。

アットドウス株式会社 代表取締役 中村秀剛さん
アットドウス株式会社 代表取締役 中村秀剛さん

パソコン雑誌、ポケットコンピュータ

中村:その後、新潟から神奈川に来て一人暮らしになり、初めてパソコンを手に入れました。また、大学のサークル活動として管弦楽団に所属しました。振り返れば一生で一番楽器に触れていたと思います。毎日最低でも3時間は楽器を吹いていました。
就職活動では、将来新潟に帰りたいという意思がありましたので、川崎と新潟に工場を持っている会社に就職しました。ちょうどWindows95が発売されて、製造業でもネットワークやコンピューターを本格的に使う時代だったんです。そのため、社長と一緒に社内のITインフラを構築したり、ちょっとしたプログラムを作って現場に使ってもらったりしていました。そうすると、だんだんと工場の現場でモノづくりをするよりもそれを支えるITで現場の役に立つ方がやりがいがあるし自分のスキルを活かせるってことに気づいたんですよ。それで、システム開発の会社に転職しました。
転職活動をしていたら、海外の音楽ツールを日本で販売するプロジェクトが立ち上がるところで、この仕事だったら音楽とプログラミングの両方を活かして活躍できると期待して転職しました。でも、気楽な気持ちで転職したのですが、趣味でプログラミングをすることと仕事で大きなシステムを開発することは大きな違いがあります。有難いことに、上司が厳しく指導してくださり、システム工学を勉強して情報処理技術者の資格を取得しました。ハードウェア・ソフトウェア・ピープルウェアという考えを理解し始めたのもその頃です。
システムの仕様を決める事も大切ですが、それ以前に、業務を理解してシステムのグランドデザインを決める事が重要であり、ビジネスのこと、人間の振る舞いやデザイン工学にも興味がどんどん広がってきました。自分のスキルを高める事、自分の仕事の幅が広がること、大変でしたが充実した日々を重ねてこれたことに感謝します。

上松:こうしてお話を伺うとお父様の教育方針で、今のプログラミングの世界へ向かったのかもしれないですね。音楽の素養があってそういった世界が広がることも素晴らしいですね。
他にどんなことをされたのですか。

中村:実は2002年くらいから電子投票システムの開発なんかもしていたんですよ。どのような技術を使って、何を作って、どのように販売するかということを考えるようになりました。他にもITを使った業務改善や効率化を考えるということをしました。それらをやっている中で会社の経営というものに目が行き、中小企業診断士の資格を取ったんです。

上松:すごいですね。普通はweb周りを扱うだけですが、会社の業務改善の中までしっかり見ようという気持ちが素晴らしいですね。

後編に続きます。

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