スマートフォンのカメラの画素数は5000万画素クラスが当たり前という状況であり、出遅れていたアップルもiPhone 14 Proから4800万画素カメラを搭載した。高画質なカメラはいい絵が撮れることはもちろん、複数の画素を1つにまとめる「ピクセルビニング」により暗所撮影性能を高めることができる。
日本で発売されているスマートフォンを見るとサムスンやシャオミが1億800万画素とさらに高画質なカメラを搭載しているが、ここ数年はこれを越える画素数のカメラは登場していなかった。
しかし2022年に入りついに2億画素のカメラを搭載するスマートフォンが次々と出てきている。最初に2億画素カメラを搭載したのはモトローラの「moto X30 Pro」で、同型機として「edge 30 Ultra」も発売になった。メインカメラは2億画素、超広角カメラは5000万画素、2倍望遠カメラは1200万画素、さらにフロントカメラは6000万画素と高性能な組み合わせのカメラを搭載。
モトローラのスマートフォンにカメラが強いというイメージは無いかもしれないが、この2機種の投入で今後モトローラに対する印象は大きく変わるだろう。日本でも発売になれば話題になりそうだ。なお価格はインドで6万9999ルピー(約12万5000円)。

一方意外なメーカーも2億画素カメラを搭載してきた。それはInfinixだ。Infinixの名前は日本では全く無名であり、それは他の先進国でも同様だ。無名メーカーが高画質カメラを搭載してくるとは驚きだが、実は同社は中国企業「Transsion」の傘下メーカー。Transsionは他にも傘下にItel、Tecnoを持っており、アフリカやインドなどで人気のスマートフォンメーカーになっている。
IDCの調査によると、2021年のアフリカのスマートフォンの出荷台数でInfinix、Itel、Tecnoの3社合計は43%とほぼ半数。それを追うサムスンは26.8%、続いてシャオミ6.6%、OPPO 5.4%、ノキアブランドのHMD Global 3.7%と続く。アフリカでは200ドル以下のスマートフォンの86.8%を占めており、iPhoneなど高価な端末はごく一部の富裕層が所有するだけだ。

このような市場にInfinixは2億画素カメラを搭載した「Infinix Zero Ultra」を投入。価格は520ドル(約7万7000円)とかなり高価だ。アフリカの人には手が出ないだろうが、量販店などでInfinixのスマートフォン売り場にこの2億画素カメラモデルが展示されていれば大きく目を惹くだろう。
アフリカ市場もこれからシャオミなどグローバルでメジャーな中国企業が次々と低価格モデルを投入してシェアを奪おうとするだろうが、格安モデルだけではなくハイエンドモデルも出すことでInfinixはアフリカの消費者の求心力を高めることができるだろう。
そして高画質カメラの搭載を積極的に行っているシャオミからも「Xiaomi 12T Pro」が登場した。価格は799.99ユーロ(11万6000円)。シャオミは中国ではライカとコラボした1インチのカメラセンサーを搭載する「Xiaomi 12S Ultra」を発売中だが、グローバル市場にはライカよりも先に2億画素カメラを投入してきた。
2023年にはライカカメラ搭載の新モデルが中国だけではなくグローバルにも出てくるだろうから、シャオミのスマートフォンをカメラで選ぶ消費者がさらに増えるだろう。

さてスマートフォンは様々なパーツから構成されており、カメラのイメージセンサーも開発・製造しているのはスマートフォンメーカーではない。2億画素や1億800万画素カメラのセンサーはサムスンが開発したもので、画素数でいえば業界シェア1位のソニーを上回っている。Statistaによると2021年のスマートフォン向けイメージセンサーのシェアは1位ソニーが45%とほぼ半数を占めた。2位はサムスンの26%、3位は中国のOmniVisionで11%となっている。
多くのスマートフォンはメインカメラにソニー製を使い、超広角などサブカメラにサムスンを組み合わせるというものが多い。サムスンとしてはメインカメラにも自社センサーを使ってもらうことでシェアを高め、ソニーの牙城を崩したいと考えている。そのためにも画素数で業界一位の製品を常に開発しつづけているわけだ。

一方のソニーはイメージセンサーそのものの大きさをデジタルカメラでも採用される大型の1インチのモデルを開発。先にあげたXiaomi 12S Ultraやシャープの「AQUOS R7」などに搭載されている。センサーの大型化はデジタルカメラの開発も行っているソニーのほうが技術的な優位性はありそうだ。
今後スマートフォンのCPUやGPU性能がさらに高まれば、より高画質なカメラも登場するかもしれない。2億画素で撮影した写真はJPEGでも50MB前後とかなり大きくなるが、ストレージの書き込み速度も高速化され、また5Gによりクラウド連携も高速化されれば写真1枚あたりの大きさの肥大化も気にならなくなるだろう。
ソニーとサムスンによるイメージセンサーの開発合戦はスマートフォンのカメラ性能・カメラ体験をより豊かにし、スマートフォンをさらに面白いものにしてくれるだろう。