Phantom V Fold

15万円で登場、アフリカでも折りたたみスマホが発売される?|山根康宏のワールドモバイルレポート

ここ数年でディスプレイを曲げることができる折りたたみスマートフォンの種類が増えている。日本を含む先進国ではサムスンの製品程度しか見られないが、中国ではファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivo、HONORと大手メーカーのほとんどが折りたたみスマートフォンを販売している。このうちOPPOとHONORは今年から海外市場にも展開予定で、日本に参入しているOPPOから、同社の折りたたみスマートフォン「Find N2 Flip」が登場することにも期待したいものだ。

折りたたみスマートフォンは新世代のディスプレイを搭載していることもあり、価格は高い。そのため先進国市場向けの製品とみられがちだが、2023年2月に発表されたTecnoの「Phantom V Fold」がターゲットとするのはインドやアフリカだ。しかも価格は日本円で約15万円と、折りたたみスマートフォンとしては「格安」だ。価格を武器にこのPhantom V Foldは折りたたみスマートフォン市場の台風の目となるかもしれない。

Phantom V Fold
Phantom V Fold

Phantom V Foldは開くと7.65インチ、閉じると6.42インチとなる横折り式のスマートフォンだ。サムスンのGalaxy Z Fold4が7.6インチ+6.2インチなのでディスプレイサイズはやや大きい。本体を閉じても隙間の無いゼロギャップ構造となっており、その外観は美しい。背面も布地処理のようなざらざらした質感が新鮮だ。チップセットはメディアテックのDimensity 9000+を搭載しており、パフォーマンスも十分だ。

カメラは5000万画素の広角、5000万画素の2倍望遠、1300万画素の超広角の2つを搭載。折りたたみディスプレイ側には1600万画素のフロントカメラ、閉じたときの外側のカバーディスプレイにも3200万画素のフロントカメラを搭載しており、カメラ性能だけを見ても十分高い。最初に投入されるインドでは今でもセルフィー人気が高く、フロントカメラの画質はかなり重要視されるという。

独特な背面仕上げ。カメラの性能は高い
独特な背面仕上げ。カメラの性能は高い

Tecnoは日本では知られていないメーカーだが、新興国での人気は高い。親会社のTranssionは傘下にInfinix、Itel、そしてこのTecnoの3社をもっており、アフリカでは3社合わせてのシェアが47.4%とほぼ半数を握っている(IDC、2022年第3四半期)。なおサムスンは25.9%、シャオミは6.4%とTranssionグループに引き離されている。

アフリカでは200ドル以下の低価格スマートフォンが圧倒的に売れており、100ドル以下のモデルが全体の42%、101-200ドルのモデルが41.6%と、両者合わせると8割となる。
一方、同じように低価格スマートフォン人気が高かったインドでは、近年になりiPhoneなど高価格モデルへの注目も高まっている。5Gサービスが始まったことでより高性能なスマートフォンが求められていることに加え、メーカーや販売店が分割払いを積極的に提供するなどして、より高いモデルへの買い替えがブームとなりつつある。

Tecnoの低価格スマートフォンラインナップ
Tecnoの低価格スマートフォンラインナップ

Tecnoは100ドル前後の低価格モデルを豊富にそろえ、新興国での人気を高めていった。シャオミですら戦えないレベルの低価格スマートフォンを多数展開することで大きな支持を受けている。しかし価格から性能へと消費者の興味が移れば、低価格モデルだけでは勝負にならなくなる。先進国でもアルカテルやWikoといった価格で人気を誇ったメーカーがここ数年で一気に存在感を喪失させている。ちなみにどちらも元はフランスのメーカーだ。

Tecnoは過去にも背面の色が変わるスマートフォンなど特徴的な製品を出すことで、価格以外のプラスアルファの価値を提供してきた。また2023年1月にはカメラを使うときにレンズが伸びるPhantom Pro X2を発表。厳密には世界初ではないものの、同製品と同じ構造を持つ製品は過去に例が無く、大手メーカーを出し抜いて新しい技術を搭載した。価格以外の付加価値を付けた製品の投入をTecnoはすでに進めているのだ。

レンズが伸びるPhantom Pro X2
レンズが伸びるPhantom Pro X2

新興国では家電を含めサムスンの人気は高い。スマートフォンの最上級モデルと言えば同社の折りたたみスマートフォン、Galaxy Z Fold4というイメージも強い。Tecnoはそれと類似の製品を出すことで技術力の高さを一気に知らしめようとしているのだ。実際にPhantom V Foldの発表が行われたスペイン・バルセロナではインドのみならずアフリカ各国からのメディアが熱心に取材を行っており、「今年1番の製品はPhantom V Foldだ」と個人的に話す記者もいたほどだ。

Phantom V Foldを実際に触ってみたが、本体の質感や仕上げは十分高くこのまま先進国に投入してもおかしくないレベルと感じた。細かい部分の使い勝手、たとえばディスプレイを半開きにして使えないことや、防水非対応など気になる点もまだあるが、新興国を得意とするメーカーの製品として考えれば合格点をはるかに超えた製品と言える。もしも15万円台でヨーロッパなどで発売されれば、シェアを独占しているサムスンにとって大きなライバルになる可能性は十分ある。TVやネットでインドやアフリカのニュースを見ているときに、現地の人が折りたたみスマートフォンを持っていたらぜひそれに注目してほしい。

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