年々高性能化するスマートフォンのカメラ。背面に搭載されるカメラもどんどんサイズが大きくなり、左右非対称のデザインもよくよく見てみるとバランスの悪いものになっている。
スマートフォンの背面左側に複数のカメラを集めるデザインはiPhoneをはじめ多くのメーカーが採用しているが、最新の高性能カメラスマートフォンはそのデザインをやめて、背面中央に円形に配置するものが増えている。
2022年11月発売のvivo X90シリーズ、2023年2月発表のHONOR Magic5シリーズ、そして3月発表のOPPO Find X6シリーズはいずれも円形の台座に複数のカメラを配置している。それぞれの最上位機種のカメラ性能は、vivo X90 Pro+が5030万画素(広角)+6400万画素(望遠)+5000万画素(ポートレート)+4800万画素(超広角)、HONOR Magic5 Proが5000万画素 x 3個(広角、望遠、超広角)、OPPO Find X6 Proも同様に5000万画素 x 3個(広角、望遠、超広角)だ。
一般的なスマートフォンはメインカメラは高画質だが、望遠や超広角は画素数が低い。しかしこれらの3モデルはすべてのカメラが高画質であり、風景写真から野鳥の撮影、さらには夜景モードまであらゆるシーンで高画質な写真が撮影できる。

このデザインを「カメラフォンのアイコン」として知らしめたのはシャオミが2022年7月に発表した「Xiaomi 12S Ultra」だろう。ライカとシャオミの初のコラボモデルであり、1インチのセンサーを搭載。シャオミにとっても初となる本格的なカメラフォンであり、そのデザインには大きく気を使ったことだろう。筆者もXiaomi 12S Ultraを使っているが、写真を撮るときの感覚はスマートフォンというよりもカメラに一歩近づいた感を受ける。デザインが異なるだけでスマートフォンで写真を撮るときの体験がより豊かになるのだ。

カメラの円形台座デザインは、スマートフォンの背面をどことなくカメラ風にもしてくれる。OPPO Find X6 Proはビーガンレザーのブラウンとガラスで表面を仕上げたシルバーのツートンカラーだが、どことなくアナログカメラ風の外観に見えないだろうか。本体を握ってみても革調の表面が心地よく、本体をしっかりとホールドもできるので写真も撮りやすい。シャオミやvivoも同様にビーガンレザーを背面に使っている。

HONORのMagic5 Proは逆に従来のスマートフォンと同じ背面仕上げであるものの、カメラの台座部分をゆるやかなカーブで仕上げている。このカーブは奇才とも言えるスペインのサグラダ・ファミリアなどの建築デザインで知られる、あのガウディにインスパイアを受けたものだという。カメラの台座部分が出っ張っているにもかかわらず大きく目立つこともなく、また時たま指先で触れるとその曲面が心地よいようにも感じる。数字やスペックではあらわせない、なんともいえない魅力あるデザインなのだ。

さて円形デザインのカメラはスマートフォンで写真を撮るときも、本体を縦向きにしても横向きにしてもカメラの位置がほぼ中央になるため撮影しやすい。アングルをあれこれと変えて撮影するときに使いやすいデザインと言えるのではないだろうか。高倍率望遠撮影をするときなども、本体を両手でしっかりと保持しても指先が誤って写り込む心配もない。カメラ風のデザインは、実は写真撮影をするときも使いやすいと言える。
またカメラ風のアクセサリを取り付け、さらにカメラっぽい外観に仕上げることもできるだろう。シャオミはXiaomi 12S Ultra購入者向けに限定アクセサリキットを提供し、アナログカメラ風のレンズフードが取り付けられる本体カバーなどをセットにした。実用性はさておき、写真を撮影するときは感性も必要だ。このようなちょっとしたアクセサリを使うことで、スマートフォンの写真撮影は「記録」から「記憶」へと引き上げられるのである。

スマートフォンに搭載するセンサーサイズの大型化や、潜望鏡と同じ構造のペリスコープカメラの搭載が進むことで、スマートフォン内部にカメラモジュールを納める空間はより広いものが求められる。今までのように片隅にカメラを配置するデザインでは今以上のカメラの高性能化は難しいだろう。円形台座デザインカメラを搭載したスマートフォンはこれからもっと増えていくだろう。