新型コロナウイルスの感染状況も落ち着いてきており、多くの国がすでに国境の開放を進めている。長らくゼロコロナ政策を進めていた中国も3月にはビザ解禁となった。
筆者は3月中旬に香港から深センを訪問。深センは入国前に5日間限定のビザをその場で発行可能で、日本人でも自由に入国が可能になった(費用は168元、深セン市内のみ滞在可能)。
これまで海外へ行くとなると、現地のプリペイドSIMを購入したり、あるいはモバイルWi-Fiルーターを出国前に借りていくことが必要だった。しかしコロナで海外に出られない間に、各国のスマートフォン契約も海外で使える便利なものが次々と登場した。
日本であればドコモのahamoが20GBの基本契約を日本だけではなく海外でもそのまま利用可能で、自分のスマートフォンをそのまま使い続けることができる。筆者もahamoを副回線で契約しており、ほぼ海外用に使っている。ahamoのおかげで飛行機が海外の空港に着陸し、機内でスマートフォンの使用がOKになった瞬間からすぐに使い始めることができる。飛行機を降りて空港内のプリペイドSIM販売店を探す必要もないし、販売店がすぐに見つかったものの大行列で待たされる、という苦労も不要だ。

またMVNOのX-mobileが販売するスマートフォン+国内外で使えるSIMセットの「スマートWiFi」も使っている。こちらは専用のスマートフォンとのセット契約だが、そのスマートフォンをモバイルWi-Fiルーターとして使用できる。ahamoは海外滞在が15日以上になるとスピードが落ちてしまうし、仕事によっては20GBを早めに使い切ってしまうこともある。そのためスマートWiFiを予備に契約しているのだ。この2回線だけで毎月6000円くらいかかっているが、現地のプリペイドSIMを買う手間などを考えると筆者にとってはこちらのほうが安上がりなのだ。

筆者は香港在住なので、他にも香港のキャリアで複数回線を契約している。香港という土地の特殊性もあり、どのキャリアも香港+中国で使える基本プランを提供している。
筆者のメインキャリアは香港データ定額+中国2GB、サブ契約のキャリアは香港100GB+中国6GB、さらにもう1回線は香港10GB+20GB。3回線も契約しているのは来客があったときのレンタル用途もあるが(香港ではSIMの貸し借りや、代理契約は問題ない)、日本の契約とあわせてこれだけ持っているとどこの国へ行くにも「現地で回線をどうしよう」といった問題に直面することはない。

さて海外でもそのまま自分のスマートフォンが使えると、現地での情報検索や地図検索などを自在に行えるだけではなく、場合によっては現地の交通機関も自分のスマートフォンでそのまま利用できる。
サンフランシスコを訪れたとき、市内までBART(地下鉄)を使おうと空港駅に行ったところ、切符の販売は無く、ICカードを購入しなくてはならなかったが有人カウンターにはスタッフの姿が無かった。途方に暮れてどうしようかと思った時、カウンターには「スマートフォン内でICカードを購入してそのまま乗車できる」との表示が見えた。Androidスマートフォンのグーグルウォレットからたしかにカードの購入ができ、そのまま市内へ出ることができたのだ。

またスペイン・バルセロナではタクシー利用のアプリを外国人も気軽に使うことができることを現地の人から教えてもらった。スペインはお昼休みを2時間取るシエスタのある文化のため、夕飯の時間が夜の9時から、映画を夜11時から見る、といったことが普通であり、夜の遅い街だ。また逆に空港は朝早くから動いており、6時の飛行機に乗るためにはホテルを朝4時に出る必要があることもある。そんなときにスマートフォンから現地のタクシーアプリが使えれば早朝の移動の心配も不要だ。
「せっかくの海外旅行先でスマートフォンは使いたくない」という考えもあるだろうが、スマートフォンは現地の生の情報を得ることのできる情報収集ツールであり、SNSをやりたくなければ通知をOFFにしておけばいいだけのこと。トラブルがあったときにいつでも日本と連絡を取れるように、自分のスマートフォンはそのまま海外で使えるようにしておくに越したことはない。
スマートフォンを通じて世界中の情報が入手できる今の時代、スマートフォンそのものに国境という概念は無いのだ。自分のスマートフォンが海外で使えれば、不慣れな土地でも不自由なく滞在することができるだろう。
最近は物理的なSIMカードではなく、オンラインで入手できるeSIMに対応したスマートフォンも増えている。eSIMならたとえば日本出発前に現地や海外用のものをスマートフォンから購入し、現地到着後すぐに使うことも可能だ。MVNO契約などで海外で自分のスマートフォンがそのまま使えない場合でも、eSIM対応スマートフォンを持っていれば現地のeSIMを買うこともできる。
さてこのように自分のスマートフォンが海外で自由に使えるサービスが増え、またSIMの入れ替えも不要なeSIMも登場したことで、数年もすればもはやスマートフォンの海外での料金を気にせず、常にお得な料金で使えるようになるだろう。現在はeSIMの購入や入れ替えもユーザーが自ら行わなくてはならない。しかしスマートフォンのeSIM設定にAIが加われば、飛行機が現地に到着し、現地のGPS情報をつかんだ瞬間に、AIが「どのSIMが一番安いか・高速か」といったことを判断し、自動で切替を行ってくれるようになるだろう。「eSIMの自動購入をON」なんて設定があれば、SIMの購入すら自分で行う必要は無くなる。
グローバルで使えるahamoのようなサービスでも、現地料金のほうがお得で安いこともある。最適なネットワークを常に使うことができるようなサービスがスマートフォンに組み込まれる日が来れば、スマートフォンの使い方も大きく変わるだろう。